土屋太鳳「自然と紙を食べていた」 — 人が人でなくなる瞬間を演じきった演技派女優『人狼ゲーム』インタビュー

8月31日(日)8時0分 tocana

撮影:河西遼

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 2015年前期のNHK連続テレビ小説『まれ』のヒロインに2020人の中から抜てきされた女優・土屋太鳳。現在土屋は『花子とアン』に主演の吉高由里子の妹役で出演中で、過去には、大河ドラマ『龍馬伝』、朝ドラ『おひさま』。ほかにも、『鈴木先生』『るろうに剣心』『リミット』など話題作に多数出演している。

 まさにブレイク中の彼女が、映画『人狼ゲーム ビーストサイド』(8月30日公開)で、殺人鬼・樺山由佳(人狼)役に挑戦している。監督は、ベルリン国際映画祭で最優秀新人作品賞を日本人で初受賞した熊坂出氏だ。

 ストーリーは、突然ある場所に集められた10人の高校生たちが「人狼ゲーム」に強制参加させられるところから始まる。土屋演じる「人狼」カードを与えられた由佳は、ゲームの参加者を1人ずつ殺してくことに興奮を覚えていくのだが...!

 今回は、辺り一面に血が吹き出す血みどろ惨殺シーンも多い『人狼ゲーム ビーストサイド』において、最も狂気をはらんだ役どころに挑んだ土屋太鳳さんに、どのようにして由佳(以下、由佳ちゃん)を演じたのか聞いた。

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——映画では「叫ぶ、泣く、ど突く、すごむ」などして狂気の女を見事に演じられていた土屋さんだったので会うのも緊張しましたが、由佳ちゃんとは全然印象が違いますね。

土屋太鳳さん(以下、土屋) 一緒だったらちょっとつらい...(笑) 由佳ちゃんの「負けたくない」「自分の力で生きたい」という思いは、私も女優業というこの世界にしっかりと足をつけて力強く生きていこうと思っていますので共感できるんです。でも、殺人を繰り返すユカちゃんの気持ちには寄り添えない。これまでは、演じる役の環境や情景、作品のテーマを考えることで役に近づけていたのですが、由佳ちゃんは異質で、自分の「心のものさし」を取り除かないと演じられない役でした。でも、声優の関智一氏に「どんなにリアリティがない映像でも、共感すればリアルになる」と教えていただいたこともあって、「この映画は、自分が苦しまないと伝わらない」と腹をくくり、ぎりぎりの精神状態で撮影に挑みました。


■人が人でなくなる瞬間がわかった

——由佳ちゃんを演じることに苦戦されたとおっしゃっていますが、映画では本当に殺人鬼が憑依したかのような鬼気迫った演技で、妙なリアリティがありました。

土屋 現場が悲惨だったんです(笑)。台本はあるのですが、細かい動きは自分たちのアドリブ。監督に「状況を演じるな」と言われていたので、たとえば、相手をビンタしたり、首を締めたり、なじったりするシーンもアドリブ的な要素が多かったんです。だから「次に何が起きるのか、わからない」という恐怖もありましたし「演じているのに、現実」だったんです。緊迫した撮影が終わると、みんな泣いてしまったり、本気になりすぎて血がのぼりすぎた俳優さんもいました。もちろん、自分が次に何をしでかすのかもわからない。泣いてはいけないシーンで泣いてしまったり(結局そのカットが使用されてますが)、なんとなく紙クズを食べたくなってしまったから、紙を口に入れたり...。

——エッ、由佳ちゃんが、紙クズを口に入れて食べてしまうシーンは土屋さんのアイディアだったのですか?

土屋 はい。なぜか、「食べたい」という感覚が沸き起こったんです。あとから調べると人間が人間でなくなる瞬間、人は硬いものが食べたくなるらしいということがわかって、人狼役を演じていただけにすごく納得しました。また、この映画がクランクインする前、姉に「太陽をバックに私が佇んでいる写真」を撮ってもらったのですが、そのとき「狼男みたいだね」なんて話をしていたんです。それで、私が紙クズを食べるシーンも月がバックで、横を向いていて...なんだかその時撮った写真と似てる絵面なんです。そういうつながりもあって、この映画は「誰が生き残るのか? 誰が死ぬのか?」という猟奇的な部分だけを伝える作品ではなく「人が人でなくなってしまう瞬間=狼になってしまう瞬間」を伝える作品なのかな? と思って改めて腑に落ちました。


■剥き出せよ、吐きだせよ!

——劇中で土屋さんが歌う歌がとても切なくて力強い歌詞で印象的だったんですが...

土屋 あれは、私が書いた歌なんです。

——エエエッ!! あれは土屋さんが書いたのですか? てっきり有名な詩人が書いたと思っていました。土屋さんが歌うシーンは、とてもセンチメンタルな雰囲気がありましたね。

土屋 (笑)。「アチアチ—! 熱くなれよ! 剥き出せよ、吐きだせよ!」っていうのですよね。あれは、自分も含めて、現場にいるみんながなかなか剥き出すことができないから、「剥き出していこう」という思いを込めて書いたんです。あと、台本に対する怒りもぶつけました。「殺人映像を撮って何が伝えたいの?」って(笑)。作品のテーマがわからなかったので、そのモヤモヤを詩にぶつけましたね。監督からは『台本をすべて否定している歌詞だね。でも、太鳳の詩を見たとき、大丈夫だっていう直感があった』と言われました。

——「剥き出したらどうなるかわかる? ただ普通のあたしになるだけ あんたがそれを見ていないだけ」

土屋 「あんた」=「自分」なんですよね。

——なるほど! すごい!!

土屋 ちょっと考えました(笑)最初の話に戻りますが、由佳ちゃんはなかなか寄り添えない役でした。でも、「この作品は一体何なんだろう?」「なんで撮影現場でこんなに苦しい思いをしなければならないんだろう?」という自分の中での混乱や葛藤が強くなったことで、今まで理解できなかった由佳ちゃんが少しずつ自分と重なってきた気がするんです。これはもともと監督の構想の内だったのかもしれませんが(笑)


■近くにある「死」と前世の記憶

——ところで、猟奇的なシーンがいくつもあるハードな現場を経験された土屋さんですが、死についてはどう考えていらっしゃるのでしょうか?

土屋 昔からあるんですよね、近くに「死」が。小学校2年生くらいの時から戦争が嫌で嫌でしょうがなかったんです。戦争を思う度にいつも泣いていました。また2歳の時に40度くらいの熱を出したことがあるのですが、その時、母に前世の記憶をバーっと語ったそうなんです。私が語った内容によると、前世で何者かに刺されて亡くなったそうです。その記憶なのかわかりませんが、繰り返し見る怖い夢もあります。ほかにも、家族の幼なじみが急病で亡くなったり、病と戦っていたファンの女の子が亡くなってしまったり...と、いくつか悲しい「死」を体験しました。なので、すごく身近に死がある分、『人狼ゲーム』での演技も、自己満足で猟奇的な表現をして話題を呼ぼうとは思いませんでしたし、作品自体も、刺激物的なエンターテイメントとして捉えていませんでした。だから、観客の皆さんにも観点を少しずらして「本当の自分ってなんだろう」「生きているって何だろう」って問いかけながらこの作品を見てほしいんです。

——特に、どんな人に見て欲しいですか?

土屋 どんな方に見ていただきたいというのは、なんとも言えないんですが、一見極端な設定には見えるんですけど、実は、日常生活が凝縮されたような世界なんじゃないかな? とも思ってるんです。学校でも、会社でも、ある場所に一方的に集められて、やれるかわからないことをいきなり押し付けられて...ってシチュエーションがありますよね? だから、そういった日常的な部分とリンクして映画を鑑賞しても面白いと思います。

——『人狼ゲーム』は土屋さんにとってどんな映画だったのでしょう。

土屋 どんな作品でも大切に演じていますが、この作品は、特に大事に演じるべきだと強く思っていたんです。これは直感なのですが、この演技をすごくすごく頑張れば、何かにつながるかなって思ったんです。

——実際に、NHKのヒロインも決まりました。

土屋 そうですね。こうした苦しい作品を経験できたことで、次につなげられればと思います。


「人狼ゲーム ビーストサイド」
8月30日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開!

tocana

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