【医師監修】妊娠中の飛行機って危険?妊婦の飛行機移動のコツと注意点

8月31日(土)21時0分 マイナビウーマン子育て

基本的に、妊娠中の遠出はどの週数であってもあまりお勧めできません。ただ、仕事や帰省などでどうしても飛行機に乗らなければいけない妊婦さんもいるでしょう。妊婦さんはそもそも飛行機に乗れるのでしょうか。また、赤ちゃんに影響はないのでしょうか? ここでは、妊婦さんの飛行機搭乗で起こる可能性のあるリスクや注意点を紹介します。

この記事の監修ドクター 産婦人科医 太田寛先生 アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

そもそも妊娠中にも飛行機に乗れるの?

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そもそも妊婦さんは、他の人と同じように飛行機に乗ることができるのでしょうか。制度上の視点と医学的な視点に分けて考えてみましょう。

診断書が求められることもある

まず、制度上の視点でみると、妊娠35〜36週以降になると航空会社によって何らかの制限が加わるようになります(条件は航空会社ごとに多少異なります)。

具体的には、国内線では妊娠36週以降、国際線では妊娠35週以降、医師の診断書が必要とされることが多いです。その理由は、このころ以降は突然の出産のリスクがあるためとされています。そして39週以降に搭乗する場合は、医師の同伴も求められます[*1, 2, 3]。

また、多胎妊娠(双子以上の赤ちゃんの妊娠)では、妊娠32週以降で医師の診断書を求められることが多くなります。国際線については航空会社によって対応にさらに差があることに注意が必要です。

妊娠中の飛行機搭乗により考えられるリスクと対策

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続いて医学的な視点から、妊婦さんが飛行機に乗ることに問題がないかみてみましょう。

飛行機は急には着陸できない!

最初に飛行機という乗り物の特徴との関係です。当然のことながら、飛行機は機内で何か起こったからといって、すぐに着陸することはできません。そのため、緊急事態になったとき、たとえば大量出血時など、輸血などの必要な処置を迅速に受けることができません。

飛行機内で出産した事例も複数報告されているものの、安全な出産のために、できるだけそのような事態になる可能性は低く抑えるべきでしょう。そのため、妊娠中は、不要不急な要件での飛行機にへの搭乗はできるだけ避ける必要があるのです。

旅行者血栓症(エコノミークラス症候群)のリスクがある

妊婦さんはもともと血液が固まりやすい

妊娠中にはさまざまなからだの変化が起こります。血液が固まりやすくなることも妊娠に伴うからだの変化の一つです。この現象は、出産で胎盤が子宮からはがれる時の出血に備えるためと言われ、つわりによって食事量が減り脱水傾向になることや、妊娠中よくある頻尿を避けるために水分摂取を控えたりすること、膨張した子宮によって静脈が圧迫されることなどもその傾向を強めると考えられています。

実際に、妊婦の「深部静脈血栓症」のリスクは非妊婦の6倍と言われています[*1]。深部静脈血栓症とは、からだの内部の深い部分を流れている静脈に血液の塊「血栓」ができて血流が滞る病気です。その血栓が剥がれて血流に乗って、肺などの他の臓器に流れる動脈を塞いてしまうことがあり、すると今度はその臓器の働きが障害されます。血栓は足の静脈にできることが多いとされています。

飛行機内では血液がより固まりやすくなる

妊婦さんでなくても飛行機に搭乗中は、血液がより固まりやすくなります。なぜなら、機内は湿度が5〜15%程度と乾燥しているため体の水分が失われやすい、狭い座席に長時間座ったままでいるために血流が滞りやすい、トイレ移動への遠慮から水分摂取を控える、といった条件が重なるからです[*4]。

飛行機搭乗中のこのような条件によって生じる深部静脈血栓症は「エコノミークラス症候群」と呼ばれています。ただし、ビジネスやファーストクラスの乗客にも発症することがあり、最近は「ロングフライト血栓症」と呼ぶこともあります。さらに飛行機以外の乗り物、例えば車の長距離ドライバーなどにも発症することが知られるようになり、「旅行者血栓症」と呼ばれるようにもなってきました。

水分を摂取しこまめに立ち歩くことなどで予防する

妊婦さんがどうしても飛行機に搭乗する必要があるときは、この血栓症を防ぐために、こまめに水分を飲み、通路側の席を予約して気兼ねなくトイレに立つ、着席中は足をよく動かすことが大切です。また、ふくらはぎをマッサージしたり、弾性ストッキングを着用すること、ゆったりとした服装で腰回りを締め付けないことも勧められます。加えて、長時間のフライトは避けることです。

シートベルトによるお腹の圧迫に注意

また、飛行機では着席中にシートベルトを着用しますが、そのシートベルトでおなかの中の赤ちゃんを圧迫しないようにしましょう。シートベルトはおなか周りでなく、骨盤の位置(お腹の低い位置、腰骨の辺り)で締めるようにします。子宮の上にベルトが来ないようにしましょう。

また、子宮を圧迫しないように、状況次第で毛布などを挟み調節するとよいでしょう。必要があれば乗務員に延長用のシートベルトを用意してもらいましょう。

低気圧、低酸素の影響は?

飛行機内の気圧は地上よりも低く、0.8気圧ほどです。これは富士山の5合目あたりに相当します。これに伴って酸素濃度も地上の80%ほどに低下しています[*4]。この環境が、妊婦さんと赤ちゃんに影響する可能性についてお話しします。

まず妊婦さんへの影響ですが、気圧が低くなると腸が膨張し子宮が圧迫されたり、吐き気、腹痛を催すことがあります。上空での低気圧、低酸素により引き起こされたと考えられる事例として、離陸後に妊婦が腹痛を訴え飛行機が元の空港に引き返した例や、つわりが誘発されたと考えられる例が報告されています。できるだけ腸の内容物の膨張を避けるためには、搭乗前や機内では炭酸飲料は避け、ミネラルウォーターなどで水分補給するとよいでしょう。

続いて赤ちゃんへの影響ですが、かつて低気圧や低酸素による先天異常や神経系への影響が懸念されていたこともありましたが、現在では、これはあまり心配ないと考えられています。

放射線被ばくの影響は?

次に、放射線の影響です。というのも、上空は放射線量が地上よりも高いからです。飛行機でニューヨークと日本を往復すると0.15mSv(ミリシーベルト)、7往復では1mSvをやや超える程度の放射線を浴びる計算になります[*5]。

妊娠中は、100〜200mSv以上の被ばくで流産が増えると考えられていて、先天異常、とくに放射能により影響を受けることが多いとされる脳神経系への影響を抑えるためにも、被ばく量は100mSvを超えないことが目安とされています[*5]。この数値をみると、飛行機に乗って起きる程度の被ばく量であれば心配はないと考えられます。

なお、普通に生活していて太陽光線など自然界からの浴びることになる環境被ばく量は平均で年間2.4mSvとされており、国際放射線防護委員会は環境被ばく以外の被ばく量を年1mSv以内に抑えるように勧告しています。これを踏まえ、米国産科婦人科学会では妊娠中の環境被ばく以外の被ばく量を1mSv以下に抑えることを推奨しています[*5]。

時差ぼけへの対応

時差ぼけに対しては、妊婦さんでなければ薬を飲んで対処することもできますが、妊娠中の安易な薬物服用は禁物です。フライト後に十分な休養をとって対応するようにしましょう。

妊婦さんが飛行機搭乗する前に知っておきたいこと

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流産は全妊娠の10〜15%[*6]で起こると言われていますが、そのおよそ9割が妊娠12週未満に起こっていたとする報告があります[*7]。早期に起こる流産の原因は「胎児の染色体異常」が最多とされていますが、この場合、妊婦さんが生活面で細心の注意を払っても、日本の高い産科の医療技術をもってしても、流産を止めることはできません。実際、流産してしまったとしたら、「あの時、こうしていれば」と自分自身を責めてしまう女性は多いと思われますが、飛行機が原因で流産することはありません。もし流産したとしても、自分を責める必要はありません。

妊娠中期はつわりも治まり、妊娠状態に慣れてきたママも多いかもしれません。しかし、妊娠中期(安定期)=マタ旅と安易に考えるのは禁物です。無事に生まれた場合はあの時マタ旅しておけばよかったと思うかもしれませんが、何かあった場合はとても後悔するはずです。マタ旅をしたいなら、本当に今行くべきかをよく考え、旅行の代わりになる気分転換などはないか、まず考えてみましょう。

妊娠後期の場合は、国内線では妊娠36週以降、国際線では32週以降、搭乗に何かしらの制限が生じます。また、臨月が近くなると、移動中に突然、陣痛が始まるリスクもあります。里帰り出産は32〜34週での受診を指示されることがほとんどなので、この週数になることはないはずです。航空機で帰省するときは、余裕を持って少し早めの帰郷を計画しましょう。

なお、妊娠中、どうしても飛行機に搭乗する必要がある場合は、妊娠中のどの期間であってもできるだけ長時間の移動は避け、時間に余裕をもって行動するようにしましょう。

妊婦さんの飛行機旅行 搭乗前のチェックポイント

最後に、妊娠中の飛行機搭乗にあたってチェックすべきポイントを挙げます。飛行機を使うか使わないかに関わらず、以下の点を確認して、余裕をもった旅行計画を立てましょう。

□ 遠出は避ける。特に妊娠22〜34週頃はかかりつけの病院の近くにいた方が有利□ 旅行の2〜3ヶ月前から医師に相談しておく□ 旅行先の産婦人科医療機関を確認(※受け入れてくれるとは限らない)□ 時間に余裕をもって移動する□ 母子手帳はいつも携帯

まとめ

妊娠中の余裕ある時間を生かした飛行機を使う旅行。確認事項を事前にチェックして、楽しみたいものですね。出産前のひとときの大切な思い出作りをしてください。

(文:久保秀実/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

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