元気な商店街が未来のためにしていること。<大阪府池田市・石橋商店街>

2023年9月3日(日)7時30分 ソトコト

まちの銭湯で風呂掃除


最初は、創業から60年以上続くまちのお風呂屋さん「平和温泉」での風呂掃除から。
参加者の中には、平和温泉Tシャツを着て参加された大ファンの方や、仕事帰りにわざわざ下車して湯船に浸かりにくるという方もいらっしゃいました。ですが何度通っていても、風呂掃除は初体験。3代目の中野洋介さんに教えていただきながら、1時間ほど汗を流しました。





開店2時間前ほどから、お風呂場を温めるためにお湯を出し始めるそう。銭湯の風呂掃除は、サウナの中で力仕事をしているようなイメージで、汗が止まりません。3日も掃除しないでおくと、水垢が取れなくなってしまうこともあるというので驚きました。
銭湯といえば、大きなお風呂でリラックスしたり、サウナで“ととのう”を感じたり、風呂上がりのコーヒー牛乳に感動したり。それらはすべて、中野さんの毎日の仕事あってこそなんだと痛感しました。





商店街で中国茶文化を体験


商店街から少し抜けたところにある「クロスカルチャーサロン」にて、中国茶文化を体験しました。ここでは、大人から子どもまでさまざまな文化体験をすることができ、海外ゲストによる講座やイベントが定期的に開催されています。
今回は「五感で楽しむ中国茶」というテーマで、中国茶をおいしく飲みながら、中国茶の種類や、およそ5,000年あるという中国茶の歴史などを丁寧に教えていただきました。





講師は、池田市に住んで10年以上の劉先生。中国茶の歴史を伝えていきたいとの思いで活動されているそうです。
ちょうど、7月8日は中国語の七(チ)と日本語の八(や)で「ちゃ」(茶)と読む語呂合わせから「中国茶の日」と定められているそう。参加者は風呂掃除での疲れを癒しつつ、お茶を通じて弾む会話を楽しみました。


まちの写真屋で商店街の歴史を辿る


続いて向かったのが、1934年創業の「藤井写真館」。1945(昭和20)年頃に、神戸から石橋商店街に引っ越してきたそうです。
もともと写真は嫌いだったという3代目の藤井太郎さん。写真屋を継ぐことを意識してカメラについて学んでいくうちに、だんだんと写真のことが好きになっていったそう。毎年必ず家族で撮りにくるお客さまもいるほど、地域で愛される写真屋さんです。





また、商店街を盛り上げる活動も精力的にされており、以前作成した「商店街ポスター」を見せていただきました。各店舗の店主の写真にキャッチコピーをつけ、デザインしたユニークなポスターです。
写真館の地下室には白を貴重としたおしゃれなスタジオがあります。30年ほど前までは隣は池だったそうですが、現在は公園となっており、地下室でありながら、窓から光が入ってきます。不思議な地形に、石橋商店街の昔の名残も感じられました。





そのあと、隣にあるお寿司屋さん「鮨虎」でお寿司をいただきました。笑顔で優しい大将が握るお寿司はとてもおいしかったです。





夜は大人のスパイスカレーとクレープづくり


合宿らしく、夕食にはスパイスカレーづくりを行いました。
「石橋商店街デイサービスセンター」の場所をお借りして、スタッフの皆さんと一緒につくります。代表の西村禎雄さんは、商店街の中にデイサービスセンターをつくろうとしたとき、役所の方から「高齢者=危ない」という理由で、最初は反対を受けたそうです。ですが、商店街で生まれ育ち、地元に元気を届けたいとの思いで、デイサービスを運営されています。





スパイスカレーのレシピは、「アンドタロー」のスタッフから教わります。アンドタローとは、商店街のパン屋「タローパン」で不定期で開かれるスパイスカレー屋さん。参加者は、初めてつくるスパイスカレーに苦戦しながらも、最後には自分好みの辛さに仕上げたカレーをおいしくいただきました。





食後のデザートに、クレープ屋さん「カフェ&クレープ bon*bon」でクレープづくり体験です。店主の高貝知世さんが丁寧に焼き方を教えてくれました。
自家製のカスタードクリームが特に人気で、スイーツ系の甘いクレープからおかず系のクレープまで、いろいろな味を楽しめます。皆においしく食べてほしいとの思いで、かなりお求めやすい価格帯でクレープを提供していらっしゃるそうです。
スイーツ系のクレープは、一般的なクレープ屋さんと比べて生地を薄く焼き、具材を楽しめるようにしているとのこと。参加者は、均一の薄さで丸く伸ばすのに苦労している様子でした。





平和温泉でお風呂に入ったあと、クレープをいただきました。夜は、商店街にある貸しスペースにて、「快眠本舗 ヤマグチ」のふかふかのお布団で就寝です。


地元で長く愛されてきたパン屋さんでパンづくり


2日目の朝は、全員でラジオ体操からスタート。朝ごはんは、創業1929年のパン屋さん「タローパン」でパンづくりを行います。ソーセージやハムを使った総菜パンを2種類、あんことお餅や甘い芋などを使った菓子パンを2種類の合計4種類のパンをつくりました。
3代目の堤洋一さんの軽快なトークでパンの焼き上がりを待ちます。創業100年近いタローパンの工場には年季の入った機械や道具ばかりで、導入当時はとても珍しく、高価だったものもあるそう。参加者は、普段は入れないパン屋の裏側に驚きながら、写真におさめていました。
15分ほどでパンが焼きあがりました。オーブンから出して焼きたてのパンを食べるのも、なかなかない経験。とてもおいしくいただきました。





老舗和菓子屋さんでねりきり体験


次に向かったのが、創業1936年の老舗和菓子屋さん「御菓子司 松家本舗」。池田市の夏の風物詩である「がんがら火祭り」の松明をモチーフにした和菓子があるなど、地元で長く愛されてきた和菓子屋さんです。
3代目の松家光史さんによる、ねりきり体験を行いました。ねりきりは、白あんにぎゅうひや大和芋を混ぜてできているそうで、体温が伝わってしまうと、手にべったりとついてしまい、上手く作業ができません。とても扱いが難しく繊細な作業に、参加者は集中して取り組みました。





夏らしく水紋をイメージしたねりきりと、打ち上げ花火をかたどったねりきりの2種類。一人ひとり表情の違うねりきりができあがりました。





まちのふとん屋さんによるミニ座布団づくり体験


最後に、創業から60年以上続くまちのふとん屋さん「快眠本舗 ヤマグチ」の3代目山口竜司さんによる、ミニ座布団づくり体験です。山口さんは1級寝具製作技能士の資格をもつ職人。 オーダーメイド枕やハンドメイド布団の製造・販売を行っています。
縫製や綿入れなど慣れない作業も、山口さんにサポートいただきながら、1時間半ほどでオリジナルの座布団ができあがりました。




山口さんによるミニ座布団づくり体験。綿入れから丁寧に。


これからも愛される商店街であり続けるために


今回「おとな合宿」を企画した、石橋商業活性化協議会事務局の浅田圭佑さんに最後にお話を伺いました。おとな合宿を企画した背景には、商店街に来る人を増やしたいという思いがあったといいます。
浅田さん「商店街に来る人は減少傾向にあります。その一つの要因として、『個人店には入りにくい』といった心理的なハードルの存在が大きく影響しているんです。
今回のおとな合宿では、商店街での様々な体験を通して、商店街に馴染みのない人たちに、心理的ハードルを下げてもらいたいと考えました。
実際にやってみて、普段の生活ではできない体験や商店主との交流を通じて、また商店街に来てもらえるきっかけづくりにつながったと感じています」





一方で、一泊二日の合宿形式ではなく、日帰りや夜の居酒屋ツアーなど、子育て世代でも参加しやすい形式にすることも今後は視野に入れているそう。最後に、これから商店街が向き合っていかなければならない課題についても話してくれました。
浅田さん「商店街がこれからも元気であり続けるためには、従来の売買だけの関係では難しいと思っています。来てくれたお客さまに、どのような価値を提供できるのか。よりブラッシュアップしていくことが大切です」



「おとな合宿」に参加して、普段買い物を楽しんだり、利用したりするだけでは見えなかった“商店街のおっちゃんおばちゃん”の顔を見ることができました。思いやパッションに触れた、とても刺激的な二日間。これからも商店街がずっと元気であってほしいし、3代目、4代目、というように繫がっていってほしいです。
元気な石橋商店街の人たちのことや、今回感じた体験を、誰かに知ってもらいたいと思い、この記事を執筆するに至りました。石橋商店街を訪れ、好きだと感じてくれる人が一人でも増えるといいな、と願っています。



石橋商店街
HP:https://www.ss-ishibashi.jp/
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文:宮武由佳(@udon_miyatake)

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