「なお、この素材は自動的に消滅する」任務終了直後に蒸発するスパイ大作戦みたいな新素材が開発される(米研究)

9月5日(木)16時30分 カラパイア

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 「なお、このテープは自動的に消滅する」というのはスパイ大作戦シリーズ(アメリカのテレビドラマ)にありがちなシーンなわけだが、その機能を実装した素材が登場した。

 新開発された「自己消滅ポリマー」で作られたデバイスはミッション終了後直ちに蒸発させることができるらしく、そうなると敵にスパイ活動を悟られることもないだろう。

 開発者である米ジョージア工科大学のポール・コール博士によると、1年かけてゆっくりと分解するようなものとは少々違い、日光にさらすなどすれば一瞬で消えてしまうのだとか。

 アメリカ化学会の秋季学会で発表されたこの「自己消滅ポリマー」は、米国防省の要望で開発されたもの。同省は使用後にわざわざ回収しなくても証拠が残らないセンサーやビークルなどに使用したいようだ。
・一般的なポリマーは天井温度が常温よりも高くしっかり安定


Futuristic Spy Tech Self-Destructs in Sunlight | SciShow News

 ポリマー(重合体)とは、いくつものモノマー(単量体)が結合してできた化合物のこと。

 ポリ袋のポリエチレンやそこかしこのプラスチックに使われるポリスチレンなど、私たちにとってとても身近なものだ。

 ポリマーには「天井温度」というものがある。ポリマーがモノマーに戻る温度のことだ。

 天井温度以下ならば、高分子配列はきちんとしており蒸発してしまうようなことはない。しかし一度それを上回れば、ポリマーはモノマーに分解してしまう。

 とはいっても、ポリスチレンのような一般的なポリマーは、天井温度が常温よりも高い。そのため、普通の気温の範囲ならば、しっかり安定している。

 また天井温度以上に温めても、分解するまで時間がかかる。ポリスチレンの場合、数千もの化学結合がモノマーのすべてを結びつけているために、素材を分解するにはそのすべてを解かねばならない。


・天井温度の低い環状ポリマーを利用することで跡形もなく解重合

 では、「自己消滅ポリマー」があっという間に消滅するのはどうしてだろう?その秘密は、まさにスパイグッズにおあつらえ向きといえる天井温度の設定にあるようだ。

 コール博士は天井温度の低い環状ポリマーを利用しており、たったひとつの結合を解くだけでそれ以外の結合すべてが分解するらしい。

 これで作られたデバイスでミッションを遂行したら、外付けか内蔵された熱源にスイッチを入れたり、感光性の触媒を使ったりしてピッと温度を上げてやる。

 すると、あっという間に解重合(ポリマーがモノマーに分解すること)される。跡形もなく消えてしまうのだ。

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・常温で不安定なことからなかなか実現が困難だった自己消滅素材

 こうした使いやすい自己消滅素材は以前より開発が試みられてきたが、常温で不安定なことからなかなか実現が難しかった。

 しかしコール博士は、合成する際に形成される不純物すべてを入念に取り除くことで、問題を解決したとのこと。

 またフタルアルデヒドのような、すぐに環状ポリマーを形成してくれるアルデヒド類の発見も、新素材の開発につながったそうだ。

 さらに効率的に消滅させる工夫として、感光性添加物もくわえられている。これが光を吸収し、解重合を触媒してくれるのだ。


・部屋の照明で消滅させられて時間も調整できる「自己消滅ポリマー」

 コール博士によると、当初、ポリマーの感光性は紫外線に対するものだけだったそうだ。

 これならば、屋外に出して日光に当ててしまえば蒸発する一方、蛍光灯で照らされた室内では蒸発しないで済むので、それはそれでいい出来だった。

 このポリマーで作られた車に乗って夜間出発し、日の出とともに車を消滅させるといった使い方ができる。

 だが、さらに波長の異なる可視光でも解重合が生じる新しい添加物が開発された。日光に当てなくても、部屋の照明で消滅させられるようになったのだ。

 また消滅までにかかる時間も調整できるとのこと。たとえば昼間の間、2時間だけミッションを行い、タイムリミットが過ぎれば証拠は隠滅されるといった作戦が可能になる。

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・軍事利用だけでなく環境モニタリング用センサーなど平和利用も

 「自己消滅ポリマー」は、他の科学者によってすでに軍のデバイスに組み込まれているところだとコール博士は話す。

 だが軍事利用だけでなく、平和的な目的にだって応用可能だ。たとえば建築現場で仮止めを行える接着剤があれば便利だろう。

 環境のモニタリングを行うセンサーにも都合がいい。必要なデータを収集した後は蒸発させてしまえばいいので、センサーを置き去りにしてもゴミにならなくて済む。

 あるいは回収困難な場所にリモコン操作式のビークルを送り込み、現地で消滅させるといった使い方ができる可能性もあるという。

References:YouTube / Phys.org / Science daily / ACSなど / written by hiroching / edited by usagi

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