サイコパスは生まれか?育ちか?脳科学的にみると通常の脳とは違いがあることが明らかに

9月8日(日)20時30分 カラパイア

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 罪悪感を一切持たず、息を吐くように嘘をつく、他人への共感に著しく欠けるといわれているサイコパス(精神病質)。人類の歴史に記録されているもっとも凶悪な事件のいくつかは、サイコパスによって引き起こされたものだとされている。

 「サイコパス(サイコパシー)」という用語が考案されて以降、まるで闇に魅入られたかのようなその特性は我々の関心を引き付けてきた。

 反社会性パーソナリティー障害といわれるサイコパスだが、全員が犯罪者になるわけではない。その特性が優位に働く職種もある。

 彼らの人格を作り出す原因については、昔から「生まれか? 育ちか?」という視点で論じられてきた。

 これまでの研究から、多くの専門家は、そのふたつが複雑に絡み合った結果がサイコパスなのだと考えていたが、脳科学が発達した今、新たな研究結果も次々と報告されている。

 ここでは、サイコパスを脳科学の観点からみていくことにしよう。
・サイコパス度が高い受刑者の脳を調査。通常の脳との違い

 2011年、凶悪犯罪を犯して収監された犯罪者に、「ヘア・サイコパシー・チェックリスト」というサイコパス度を評価するテストを受けてもらった研究が発表された。

 また2017年の別の研究では、サイコパス度が高いと評価された受刑者の脳をスキャンして、何か普通と違うところがあるのかどうか探ってみた。

 これらの研究から明らかになったのは、サイコパスの脳は、「扁桃体」「前頭前皮質」「傍辺縁構造」「腹側線条体」が通常の人と違うということだ。

 こうした差異は、サイコパス的な行動とどのように関連しているのだろうか?それぞれについて見ていくことにしよう。

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・初期感情を司る扁桃体の活動の低下で恐怖を感じない

 まず、扁桃体は感情の中枢だ。恐怖、怒り、悲しみ、愛情といった初期情動を司り、衝動や攻撃性のコントロール役も果たしている。

 また学習にも重要な領域で、私たちが暮らしている社会について、つまりルールとその境界を教えてくれる。ほかにも危ないものを告げ、脅威と危険を認識する手助けもしてくれる。

 今回の研究では、恐ろしい顔や非道徳的なことなど、サイコパスに一連の不快な画像を見てもらい、そのときの反応を調べた。
 
 すると、あるサイコパスの脳では扁桃体の活動が著しく低下することがわかった。

 これはサイコパスが、社会に定められたルールの範囲内で生きる方法を学んでいないということだ。

 彼らは一般的なエチケットが何で、その境目がどこにあるのか認識していないし、怯えている人を見ても何も感じないのである。

 扁桃体の活動の低下は、恐怖反応を抑える。また他人の恐怖に対する感情反応も鈍くなる。サイコパス度が高いほどに、扁桃体の活動も弱くなるようだ。

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・人格の中枢である前頭前皮質が作動せず衝動にブレーキがきかない

 次に、前頭前皮質は人格の中枢だ。衝動や計画、選択、自制心、長・短期の意思決定といったことを制御する。

 また人を人たらしめ、人間を他の動物とは一線を画す存在にしている高度な機能をも司っている。

 アメリカの鉄道建築技術者であったフィアネス・ゲージ(1823〜1860)という男性の有名な事例は、その機能の大切さをはっきりと教えてくれる。

 ゲージはある事故のせいで、鉄棒が頭蓋骨を貫通してしまい、そのせいで大脳皮質に大きな損傷を負った。

 これ以来、彼は豹変してしまった。本来のゲージは、礼儀正しく、勤勉な良き夫であった。それなのに事故以来、暴力的かつ攻撃的で、下品な俗物になってしまったのだ。


・眼窩前頭皮質の灰白質が少ないことも影響

 今回の研究では、サイコパスは、前頭前皮質の「眼窩前頭皮質」という領域の灰白質がかなり少ないことが明らかになっている。

 眼窩前頭皮質は、衝動の制御や意思決定にかかわると考えられている領域だ。また報酬の連想にも重要だとされている。

 前頭前皮質は、自分の行動を観察しており、必要なときはブレーキとして機能し、衝動を抑える。

 普通の人であっても嫌な上司に殺意を覚えることはあるだろう。だが、それがいけないことであるとわかっているし、殺人をしてもロクなことにならないと予測できるので、想像するだけで実際に行動に移したりはしない。

 だが、もしこのときに殺意のブレーキが作動しなかったとしたらどうだろうか? 前頭前皮質が機能しないということは、その人を後先考えずに行動させてしまうということなのだ。

 それどころか、サイコパスは人が傷つけられたり、罰を受けたりしているところを見ると、ここが活発に発火する。



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・傍辺縁系の体積が少なく体験した記憶を思い出せない

 傍辺縁構造(paralimbic structure)は、想起と記憶を司り、短期記憶エピソード記憶を管理している。

 また感情を制御する扁桃体とも密接に結びついている。つまり、感情と記憶を密接に結び付けている。

 サイコパスの脳では、傍辺縁系の体積が有意に少ないという結果が得られている。この領域が少ないと、エピソード記憶をなかなか思い出せなくなってしまう。

 エピソード記憶とは、個人が経験した出来事に関する記憶のことだ。たとえば、昨日の夜、誰とどこで何を食べたかといった記憶がそれである。

 もし自分の過去に何が起きたのかきちんと思い出せないとすれば、事実とは違うことを思い出すかもしれない。

 過去の経験において、自分が果たした役割を過大評価し、他者の役割を過小評価するという可能性もある。


・腹側線条体が活発で目先の報酬に飛びつく

 最後に、腹側線条体は報酬と動機の処理を司る。期待、意思決定、報酬期待を制御しており、すぐ得られる満足にも関係する。

 研究では、腹側線条体がもっとも活発だった受刑者は、サイコパス度も高かった。このことは、彼らが直ちに得られる満足を過大評価しており、物事を我慢できないということを意味する。

 それだけでなく、研究では、腹側線条体と前頭前皮質との結合が弱いことも明らかになっている。

 この領域には心のタイムマシンのような機能がある。つまりは未来の出来事を推測する手助けをしている。

 普通の人は自分の行動の結果、どうなるのか予測することができるが、サイコパスはそれができないのだ。

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・サイコパスの責任能力

 こうした事実は、ある重要な疑問を提起している。

 もしサイコパスの脳が普通と違うのであれば、彼らを扱う際にはそのことを考慮せねばならないのだろうか?

 たとえば、脳に損傷を負った人間がそのせいで犯罪を犯した場合、責任能力なしとみなされ、おそらく刑務所に送られることはないだろう。

 同じ理屈が、サイコパスにあてはまるのか?

 2017年の研究を行なったジョシュ・バックホルツ氏は、サイコパスに対する認識を改めるべきだと述べている。

 バックホルツ氏によれば、サイコパスは脳の障害のせいで衝動の制御や意思決定に問題を抱えた、助けを必要としている人々だという。

 はたしてサイコパスは憎むべき怪物なのか、それとも手を差し伸べるべき社会的弱者か。あなたはどう思うだろうか?

References:Science daily / NCBI / Learning mindなど / written by hiroching / edited by usagi

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