隣家の小学生が、包丁を一丁持って訪ねて来た。その理由は…家具職人の父を持つ私の技術にあった
2024年9月9日(月)12時30分 婦人公論.jp
たかが一丁でも、研ぎあがると気分のよいものである…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは宮城県の60代の方からのお便り。隣の家の子どもが、包丁を持って訪ねてくる理由は——。
* * * * * * *
ビール1本で承ります
隣家の小学生S君が、菜切り包丁を一丁持って訪ねてきた。といっても、押し込み強盗にやってきたのではない。切れ味が落ちたので、「これ研いで」というわけだ。母親に頼まれたのだろう。
研ぐのを見たがるS君のために、さっそく荒砥石を用意し、片面ずつ順に当て、仕上げ砥石で丁寧に整えていく。古雑誌で切れ味を試すと、われながら見事な仕上がりぶりだ。S君もうっとり見とれている。後ほど謝礼のビールが1本、届けられるはずだ。
私が包丁研ぎを苦にしないのは、家具職人だった父の影響だと思う。結婚後、夫は台所用品に触れることはなく、研ぐのはもっぱら私の役目。日々研いでいるうちに腕を上げていった。たかが一丁でも、研ぎあがると気分のよいものである。
そのうち私の腕前(!?)は近所で知られるところとなり、いつしかこうして頼まれるようになった。引き受ける条件は、完全に切れなくなる前に持ってくることだ。そして、頼まれるコツは、謝礼のビールを遠慮しないこと。無償では気を使わせるし、なにより一仕事の後のビールは格別なのだ。
※婦人公論では「読者のひろば」への投稿を随時募集しています。
投稿はこちら
※WEBオリジナル投稿欄「せきららカフェ」がスタート!各テーマで投稿募集中です。
投稿はこちら
関連記事(外部サイト)
- 【父は仕事人間】日曜参観に来ない父、母はいつも家にいてくれると思っていた…老々介護の父と娘、50年前のお話 【第1話まんが】
- 道端で立ち話中、通りすがりの人に怒鳴られた。強気な知人が反論を始めて…【2024年上半期BEST】
- 結婚を機に、縁もゆかりもない大阪へ来て30年。はじめはきつく感じていた関西弁も、いつの間にか心地よく。今では立派な《大阪のおばちゃん》に
- 還暦を過ぎて琴を習い始めた。孫娘のため「うれしいひなまつり」を練習するも上手くいかない。それでも私が続ける理由は…
- 10代の頃好きだった漫画家にファンレターを送ったら、ハガキが届いた。すでに漫画家をリタイアしていた先生の直筆イラストが添えられて