「自分がどこにいるかもわからず、ケータイの電波も入らない。夜の闇の中、車の後ろに何かを積み込む男たちに『何でもしますから』と懇願すると...」(北海道・30代女性)

2023年9月10日(日)11時0分 Jタウンネット

シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Tさん(北海道・30代女性)

Tさんはある日、授業のあとに自転車で支笏湖に行くことにした。

川に沿って行けば着くだろうと気ままに走っていたが、旅は思いもよらぬ展開を迎えてしまい......。

<Tさんの体験談>

私が大学3年生の時のことです。午後の授業を終え、バイトもなかった私は、ふと「支笏湖まで自転車で行ってみたい!」と思い立ちました。

大きな川に沿って行けば着くだろうときままに走行。支笏湖に行くとは、当時一緒に住んでいた祖母に連絡もしていませんでした。

その後大変なことになるとは思わずに......。

引き返せば何もなかったのに

支笏湖へ向かう道の手前に学校があり、下校の時間で生徒達がたくさんいました。そこで、「この道まっすぐ行けば支笏湖いけるよね??」と聞くと、こう言われました。

「確かに行けるけど、僕たちはいつも車でしか通らないし、アップダウンが激しいから自転車では難しいと思うよ」

思えばその時、素直に聞き入れて祖母が待つ家に引き返せばよかったのですが、なんせ最寄り駅から1〜2時間は走っていたため、「えぇい!!」と無理やり進むことにしてしまいました。

それから30〜40分ほど進んだあたりでは、何台もの車が私の横を通りましたが、その度にものすごく減速していたため「本来自転車は通っちゃだめな道なのかな?やばいことしてる?車の人に迷惑だな、やっちゃった...」とも思ったのですが、やはり引き返すことはできず、さらに1時間ほど走りました。

ふと、「今どの辺なんだろ?」と携帯を確認すると、なんと全く電波がありません!

ついに、自分がどのあたりにいるのかもわからなくなり、誰とも連絡を取ることができなくなってしまったのです。

「何でもしますから...」

その時わかったのは、明らかに暗くなってきていること、今すぐ引き返しても途中で真っ暗になるということだけでした。

すぐにでも全力で戻ればよかったのですが、途中で3回ほどものすごい坂道を下ってきたため、あれをまたのぼるのかと考えて......なぜか更に進む私。多分パニックになっていました。

さらに1時間ほど進み辺りが真っ暗になった頃、工事中の男性たちを見つけた私は、咄嗟に「助けてください。自転車できたけど、帰れる体力がなくなってしまって......」と頼みましたが、断られてしまいました。

少し先に歩くと、今度は車の後ろになにかを積んでいる男性2人を見つけました。

「助けてください......もう......何でもしますから......」

そう声をかけると、私の父親くらいの年代の男性が

「若い女の子が、何でもしますからなんて簡単に言うな!!2時間くらい待たせてしまうかもしれないけど、私も札幌に住んでるから車で送れるよ!それでも大丈夫かい?」

と言ってくださいました。

私はその一言で腰が抜け、涙が止まりませんでした。ああ、私生きて帰れるんだ......と思いました。

「それで俺は報われたなぁって思えるよ」

男性が衛星電話を貸してくださったことで、祖母に連絡することもできました。

お仕事が終わるのを待ちながら反省していると、私の自転車が入る車を、わざわざ少し離れた現場から持ってきてくださりました。自宅の前に着いたとき、「必ずお礼がしたいので、住所とお名前を教えてください!」と伝えると、

「名前は坂本。だけど、お礼はいいよ。俺もあなたくらいの娘がいる。娘も誰かにこれから助けられるかもしれないし、もう助けてもらってるかもしれないし。そのかわり、次あなたの周りで困っているひとがいたら、あなたが出来る範囲でいいから助けてあげて。それで俺は報われたなぁって思えるよ。助け合いの循環。ね?」

坂本さんはそう、微笑みながら返してくれました。

それ以来、私は自分が多少を無茶しても、人を助けるような考え方・生き方に変わりました。

だってあのとき、坂本さんが助けてくれなかったら、事故にあったり、動物に襲われたり、無事に生きて帰れる保証はなかった、死んでいたかもしれないから。

命を救っていただいた坂本さんを忘れずにこれからも生きていきます。

坂本さん、本当にありがとうございました。

「忘れられない旅先での思い出」教えて!

Jタウンネットでは読者の皆さんが経験した「旅先いい話」を募集している。

読者投稿フォームもしくは公式ツイッター(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのかなど、500文字程度〜)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。

(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)

Jタウンネット

「北海道」をもっと詳しく

「北海道」のニュース

「北海道」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ