「聴・嗅・触」…五感をフルに使う「フードセラピー」レシピ

9月11日(水)15時50分 女性自身

私たち女性特有のイライラ症状はホルモンバランスの影響と思われがちですが、大もとをたどれば、脳が感じるストレスにあったのです。それを解消するのが「食べること」ーー。



「更年期は閉経前後の約10年間、個人差はありますが、一般的には45〜55歳を指します。まだまだ若くはありますが、加齢によって体内の老化が進むのは確か。女性ホルモンの分泌や排卵を行う卵巣の機能も、当然ながら低下してきます。しかし、ホルモンの司令塔である脳は“サボるな!”と、以前にも増して強い指令を送ろうとするため、オーバーワークしてしまうのです。特に脳の視床下部は、ほかのホルモン分泌のコントロールや体温調節、呼吸、精神活動などをつかさどる、いわば自律神経と免疫系の中枢です。ここがオーバーワークすると、体のさまざまなところに影響が出てきます。たとえば、感情のコントロールができず気分が上下する、風邪をひきやすくなる、じんましんが出るなど……これら“自分が自分でなくなる感覚”がいわゆる更年期障害と呼ばれる症状の一例です」



そう語るのは女性の心と体の悩みに詳しい、産婦人科医の池下育子先生。更年期に入り、自分の意思とは裏腹に起こる“イライラ”症状に人知れず悩んでいる女性は多い。気分が高ぶり冷静な行動がとれない、攻撃的になり周囲の人にきつく当たってしまうなど、日常生活に支障をきたすケースも珍しくはない。それらはホルモン低下に脳が惑いつらい症状を引き起こしているのだという。



更年期特有の女性のイライラはある意味、自然な老化現象ともいえそうだが、症状が強い人、そうでない人との違いはどこからくるのだろう。



「更年期特有の症状は、(1)体の健常性やホルモンの変化の度合い、(2)心理・性格的な要因、そして(3)環境の3つの要素が複雑にからみ合って生まれます。だから、人によって時期や程度はまったく異なるのです」と池下先生。じつは、先生自身も40代直後から4年近く、重い更年期障害の症状に苦しんでいたという。



「離婚調停とも重なり、心身ともに追い詰められていた時期でした。激しいかゆみを伴う湿疹が出て、全身をかきむしって血だらけになったり。生理も止まり、抑えられない感情を持て余し、消えたいと思うこともありました……。お肉もお酒も絶ち、“更年期にいい”といわれることをすべて試してみましたが、状況は悪化するばかりで、日に日に増す絶望感にさいなまれていました。これが更年期障害だと理解したのは、だいぶたってからのことです」



当時は仕事に行くのがやっとの生活で、日にも当たらず、運動もせず、免疫力は落ちていくばかり。大好きだった食べることからも久しく遠ざかり、10キロも体重が減ってしまったという。そんななか、希望の光が差し込んだのは、ある出来事がきっかけだった。



「ある日、“もうどうなってもいい!”と開き直って、封印していた大好物の焼き肉を食べ、ビールもたっぷり飲んだら、急に不思議なくらい体の調子がよくなったんです。“おいしい!”と感じたとたん気持ちも前向きになり、ストレスからパッと解放された気がしました。そして、自分は“生きている!”と実感することができたんです。ほどなく症状は落ち着き、再び自分の人生を取り戻すことができました」



以来、好きなものをおいしく楽しく食べることと、心のケアの深い結びつきに着目するように。それが池下流の「食べて自分を癒す」フードセラピーだ。



「更年期障害からくるイライラの解消というと、どうしてもホルモンバランスの改善ばかりに意識がいきがちですが、もとをたどれば脳のオーバーワークが引き起こすコントロール機能の乱れなわけです。だから、脳にアプローチする食事で脳を癒してあげることは、非常に重要です。具体的には、人間のもつ五感をフルに働かせて脳の動きを活性化させること。脳は五感が刺激されると、本来の働きを取り戻そうとします。その意味でも“食べる”という行為は有効ですし、食べるだけでなく、食べるものを“作る”行為も、弱った心にいつしか生きるパワーを与えてくれます」



池下先生が提案する「食べるセラピー」に、難しい決まりや節制はない。五感を研ぎ澄ませながら“心を動かす”ことを意識して、“作る”から“食べる”までの過程を楽しみ、慈しめばいいのだ。



オーバーワーク気味の脳が元気を取り戻せるのは、味や見た目がいいのはもちろん、聴・嗅・触覚を刺激する食事にあるそう。そこで、体も喜び、心の活力を呼び起こすレシピを、管理栄養士・料理研究家の金丸絵里加さんが紹介。



■「聴」食感を楽しむメニュー・ミニトマトとから揚げのマリネ



【材料/2人分】


鶏もも肉…1枚(250g)

ミニトマト…10個

玉ねぎ…1/8個

A(酒・砂糖…各小さじ1、塩…小さじ1/3)

B(酢・水…各大さじ3、粒マスタード・はちみつ…各大さじ1、塩…小さじ1/3)

片栗粉…適量

揚げ油…適量

パセリのみじん切り…適宜



【作り方】


(1)鶏肉はひと口大に切り、Aをもみ込む。汁けを切って片栗粉を薄くまぶす。

(2)ボウルにBを入れ、薄切りにしたミニトマトと玉ねぎを加え混ぜる。

(3)フライパンに2cmほど揚げ油を入れ、中温に熱する。1を入れ、上下に返しながら、こんがりと色づくまで約5分揚げる。

(4)油を切って2のボウルに入れ、大きく混ぜる。

(5)汁ごと器に盛り、パセリを散らす。



【栄養のポイント】


トマトに含まれるリコピンの抗酸化作用が、万病のもと「酸化ストレス」から体を守ってくれる。アンチエイジングにも効果的。



■「嗅」香りを楽しむメニュー・香味野菜と豚しゃぶのごまあえ



【材料/2人分】


豚ロース肉(しゃぶしゃぶ用)…140g

きゅうり…1本

みょうが…2個

グリーンリーフ…4〜5枚

しその葉…4枚

A(すり白ごま…大さじ3、おろししょうが…小さじ1、砂糖…小さじ2、しょうゆ…大さじ1と1/2、だし汁…大さじ1〜2)



【作り方】


(1)ボウルにAを入れて混ぜる。きゅうりは麺棒などで3〜4cmの長さにたたき割る。みょうがは薄い小口切りに、グリーンリーフは細切りにする。

(2)鍋にたっぷりの湯を沸かし、火を弱めて豚肉を1枚ずつさっとゆで、ざるに上げる。

(3)1のボウルにきゅうりと豚肉を入れて混ぜ、なじんだらみょうがとグリーンリーフを加え混ぜて器に盛り、しその葉をちぎって散らす。



【栄養のポイント】


豚肉には、エネルギーの代謝を促して疲労回復や倦怠感を緩和させるビタミンB1がたっぷり含まれている。体の重だるさを軽減したいときに。



■「触」手を使い、手ざわりを楽しむメニュー・ひき肉と納豆そぼろのサンチュ添え



【材料/2人分】


鶏ひき肉…100g

納豆…2パック(80g)

長ねぎ…1/2本

赤パプリカ…1/3個

しょうが(みじん切り)…1かけ分

豆板醬…小さじ1

しょうゆ…小さじ4

みりん…小さじ2

ごま油…大さじ1/2

塩・こしょう…各少々

サンチュ…6〜8枚



【作り方】


(1)ねぎは粗みじんに、パプリカは5mm角に切る。

(2)フライパンにごま油を中火で熱し、ねぎとしょうがを入れて炒める。しんなりしてきたら、豆板醤とひき肉を加えてほぐし炒め、肉の色が変わってきたら、しょうゆ、みりんを加え混ぜる。

(3)納豆とパプリカを加えて、手早く汁けがなくなるまで炒め、塩・こしょうで調味して火を止める。

(4)器に盛り、サンチュで包みながら食べる。



【栄養のポイント】


大豆に含まれる大豆イソフラボンは、エストロゲンと構造が似ているため、更年期障害の緩和や骨密度の維持に対する効果が期待できる。



「更年期を迎えたからといって、自分が女性として終わったわけではけっしてありません。むしろ、新たなステージへと進むために、体がサインを送っていると前向きにとらえていきたいもの。食べることで心も人生も豊かにし、イライラともうまくつき合っていけるようになるといいですね」(池下先生)

女性自身

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