濱口竜介新作は恋愛の不可思議さ・過激さを純愛映画的に描く

9月13日(木)7時0分 NEWSポストセブン

 恋愛は魔物。ときに身を滅しかねない。


「ハッピーアワー」で高い評価を得た濱口竜介監督の新作「寝ても覚めても」は、恋愛という魔物の不可思議さ、過激さを、まるで純愛映画のように描いている。原作は芥川賞作家の柴崎友香


 大阪で暮す朝子(新人の唐田えりか)は、写真家、牛腸茂雄の写真展を見に行き、そこで会った麦(東出昌大)という若者と恋におちる。恋愛は一瞬。理屈はない。


 二人は若々しく愛し合う。ところが、ある日、麦が突然、「靴を買いに行く」と言ったきり、姿を消してしまう。恋愛は生まれるのも、終わるのも突然。


 二年後、朝子は東京の喫茶店で働いている。そこで、亮平(東出昌大、二役)という日本酒メーカーで働く若者に出会う。亮平は不思議なことに失踪した麦にそっくり。朝子は戸惑いながらも、自分のことを好きだという亮平を受け入れ、一緒に暮し始める。


 麦が風来坊だったのに対し、亮平は堅実な会社員。麦との関係が非日常だったとすれば亮平との暮しは穏やかな日常。朝子の気持は二人のあいだを揺れ動く。



 十年ほどの時間が流れてゆく。そのあいだに東日本大震災がある。朝子は亮平と、宮城県にボランティアとして地元の朝市の手伝いをする。


 朝子がもう麦のことを忘れたかと思われた時、またしても突然、麦が現われる。世界放浪をしていたという。日本に戻ってきて、モデルとして成功した。麦と再会して朝子の気持が揺れる。非日常の魔物が顔を出す。


 そして、朝子は思いもよらない行動をとる。この先を詳しく書くことは控えるが、朝子の行動は観客には、とりわけ女性の観客には反発を買うかもしれない。自分勝手と思われるかもしれない。


 なぜ、そんな行動を朝子はとるのか。おそらく朝子自身、なぜかは説明出来ないのではないか。恋愛という魔物に取り憑かれたとしかいいようがない。大仰にいえば病気。朝子は病気になると麦に惹かれ、治ると亮平のところへ戻ろうとする。恋愛に振りまわされている。


 一見、純愛映画のように見えながら恋愛の怖さをよくとらえている。


◆文/川本三郎


※SAPIO2018年9・10月号

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