電車の網棚に忍者が!?忍者発祥の地・伊賀を走る伊賀鉄道「忍者列車」、楽しい仕掛けであふれる車内を満喫

2024年9月17日(火)8時0分 JBpress

文・写真=山﨑友也 取材協力=春燈社(小西眞由美)


車両のデザインは松本零士

“伊賀”と聞いてまずみなさんが思い浮かべることといえば、“忍者”ではなかろうか。滋賀県の甲賀とならび、三重県の伊賀は忍者発祥の地として知れ渡っている。その伊賀市にある伊賀上野と伊賀神戸(かんべ)を結んでいるのが伊賀鉄道。全長わずか16.6kmのローカル私鉄なのだが、ここには「忍者列車」なる謎めいた列車が走っている。ネーミングだけでは想像もつかない奇想天外な列車を、今回は紹介してみよう。

「忍者列車」はまず車体のデザインが特徴的だ。前面には忍び頭巾をした忍者の顔をイメージしたラッピングが施され、大きくて鋭い目がインパクト大である。青色のほか、「くノ一」を表現したピンク、そして緑色の3種類の忍者列車が走っている。のんびりとした田園地帯をこのような奇抜な列車が走る光景はとてもユーモラスで、思わず笑みがこぼれてしまう。

「忍者列車」が誕生したのは1997年。当時は伊賀鉄道が近畿日本鉄道の伊賀線だった時代。市内の住宅開発にあわせて忍者をPRする一環で、車両に忍者を描くことになったのだ。ちなみに列車に描かれた目にどことなく見覚えを感じた方もいるだろうが、「忍者列車」のデザインは「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」の作者である漫画家の松本零士氏である。その後車両の老朽化によって2009年から現在の200系にバトンタッチしたが、大まかなデザインは変わっていない。

 全国には変わった外観の列車がたくさん走っているが、車内のユニークさという点では、ボクは「忍者列車」が日本一だと思っている。むしろ外観よりも車内に楽しさがあふれかえっているのである。

 青色やピンクの列車に乗り込んでみると、誰もが驚愕の事実に直面する。なんと網棚に忍者が潜んでいるではないか! 知らずに乗車した人は思わず声をあげてしまうほどで、こんな衝撃を受ける列車はないだろう。もちろんなかに本当に人が入っているわけではなく、マネキン人形なのでご安心を。


忍者のしかけであふれる車内

 楽しいしかけはこれだけで終わらない。ドアを見ると、内側に忍者の姿が描かれている。その理由はというと、列車が駅に到着してドアが開くと忍者が見えなくなり、閉まるとまた忍者が現れるというしくみになっているのである。

 床は石畳の模様になっており、カーテンを下げてみると柄が手裏剣。車椅子スペースの壁は板塀デザインで、車内灯を差し込む器具にも手裏剣が描かれているなど、細部にわたっても忍者に関するしかけであふれており、緑色の車両にいたっては一部の吊り輪が手裏剣型にもなっているのだ。このように大きな資金で機器や設備を導入したのではなく、アイデアや工夫を凝らして楽しめる空間を作り上げたというところに、ボクは愛着を感じずにはいられない。

 その気概や意志は車両だけでなく、PR活動や駅などにも見受けられる。地元の伊賀市は2017年に忍者市として宣言し、忍者を活かした観光誘致やまちづくりを進めてきたが、伊賀鉄道も2019年に路線を忍者線に、本社のある上野市駅を忍者市駅の愛称として、よりいっそう忍者色を深めている。その忍者市駅のホームの屋根やコインロッカー、建物の外壁などにも忍者が潜んでおり、まさに神出鬼没。手裏剣と忍者のご当地駅名標はフォトスポットにもなっている。

 さて忍者線を走る「忍者列車」だが、嬉しいことに普通列車として運行されているので、特別な料金や予約は不要である。どの色の車両がどの列車で運行されるかは、前日の17時以降に忍者市駅(0595-21-3231)に問い合わせれば教えてもらえる。

 忍者市内では忍者の衣装をレンタルしての散策や手裏剣打ちが体験できたり、忍者の博物館まであったりするので、列車のみならず忍者の文化にとことん触れてみるのもオススメだ。

筆者:山﨑 友也

JBpress

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