もし直腸がんになったら——まず気になるのは「肛門を残せるか?」

9月20日(木)7時0分 文春オンライン

 直腸がんで手術が必要と言われたら、まず気になるのが「肛門を残せるか」ではないだろうか。


 肛門を残せる基準は一定ではないが、一般的には腫瘍が肛門から5センチ程度離れていれば残せるとされている。また、最近では手技や器具の工夫によって、慣れた施設だと2〜3センチほどの距離でも残せるようになった。現在、専門施設なら直腸がんの8〜9割で肛門を残せるようになった。


「できるなら人工肛門にはなりたくない」と思うのが人情だが……


 しかし、逆に言えば今でも1〜2割の人は人工肛門(ストーマ)にせざるを得ないということだ。腸の一部を腹部の外に出して、専用の袋で排泄物を受ける人工肛門は、定期的にたまった排泄物をトイレに流したり、袋を替えたりする手間がある。匂い漏れなどが気になって、外出しにくいという人もいる。それだけに、「できるなら人工肛門にはなりたくない」と思うのが人情だろう。


 ただし、肛門を残すことにこだわり過ぎるのはよくない。なぜなら、がんを取り残すと、再発してしまうからだ。直腸がんの再発は、初発のときより症状が辛く、手術も難しい。それだけに手術を受ける際には第一に、肛門を残すことよりもがんを取り残さないことを優先するべきだろう。


 もう一つ考慮すべきことがある。それは肛門を残すことによって、かえって生活の質(QOL)を落とす可能性もあるということだ。



©iStock.com


 肛門を締める筋肉には直腸をとりまく内括約筋と、その外側にある外括約筋がある。がんが肛門に近いところにある場合、内括約筋だけでなく、外括約筋まで切除する必要が出てくるが、そうすると肛門を締める力が弱くなるのだ。


 専門医によると、これによって頻便になってしまい、各駅停車でないと不安で電車に乗れない人や、失禁が気になって外食できない人もいるという。また、介護が必要な高齢者では、頻繁におむつを替えるよりも、人工肛門のほうが、ケアがしやすい場合がある。肛門を残す場合には、このようなデメリットもありうることを考えておく必要があるのだ。



整いつつあるサポート体制


 一方、人工肛門のほうは、できるだけ不便がないようにサポートする体制がある。その2つが大腸がん患者の多い病院に開設されている「ストーマ外来」だ。人工肛門や人工膀胱を造設した人(オストメイト)に対して、セルフケアの指導や皮膚かぶれなどのケア、困りごとの相談など、定期的にサポートする窓口のことだ。


 ストーマ外来のある病院は、日本創傷・オストミー・失禁管理学会( http://www.jwocm.org/ )のホームページで検索することができ、2016年7月現在、全国で647施設が登録されている。また、オストメイトをケアする「皮膚・排泄ケア認定看護師」の資格を持った看護師も、全国で2000人以上が活躍している。


 さらに、排泄物の処理がやりやすい「オストメイト対応トイレ」も増えている。全国各地の公共施設やショッピングモール等に設置されているので、気づいたことのある人も多いだろう。人工肛門でも仕事を続け、旅行やスポーツを楽しむ人がたくさんいる。必ずしも肛門を残せたほうが、人工肛門になるよりも幸せとは限らないのだ。



 実際、直腸がんの手術では、縫合不全を防ぐために一時的に人工肛門にして3、4ヵ月後にそれを閉鎖し、本来の肛門に戻す処置がとられることがある。この処置で人工肛門を経験した患者の中には、「本来の肛門でこんなに不便になるなら、人工肛門のままでよかった」と漏らす人もいるそうだ。


 したがって、直腸がんで肛門を残せるかどうかギリギリの選択を迫られた場合は、決断する前に、専門医や認定看護師のアドバイスをよく聞いたほうがいい。


 たとえば肛門を残したとしたら、どれくらい肛門機能が維持できそうか、肛門の締りをよくするために、どんなリハビリが必要なのかなど、事前に聞いたうえで決断したほうがいいだろう。直腸がん手術の経験が豊富な外科医ほど、こうした疑問に適切に答えてくれるはずだ。


出典:文春ムック「 有力医師が推薦する がん手術の名医107人 」(2016年8月18日発売)



(鳥集 徹/文春ムック 文春クリニック がん手術の名医107人)

文春オンライン

「肛門」をもっと詳しく

「肛門」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ