互いを貪り尽くすような「W不倫」を経て辿り着いた、もっと深い関係

9月21日(月)22時15分 All About

不倫関係から心の友へ

不倫関係にもいつか終わりが来る。その終え方とその後の選択はいくつかあるだろう。不倫相手と別れる、離婚して不倫相手と結婚する、結婚を解消し不倫相手とも別れて新たな人生を送る、などなど。そして不倫関係は終わらせたものの、「心の友のような存在になっている」というケースもある。

心の奥がざわつくような運命の出会い

「ふたりとも結婚していました。私は子どもがいなかったけど、彼にはふたりいて。でも出会ってしまったんですよね……」

うつむきかげんにそう言うのは、外資系の会社で働くナツミさん(40歳)だ。31歳のときに8歳年上の男性に請われて結婚した。彼女は結婚願望がほとんどなかったのだという。

「自分の生活が乱されるのが嫌だったんです。私の仕事上の相談相手でもあった彼は、とても尊敬できる人。こういう人がそばにいてくれたら心強いなあと思ったんですよ。私のためなら何でもしてくれるのがうれしくてありがたくて」

彼とは穏やかな生活を築いていた。子どもはできなかったが、ふたりそれぞれが仕事に打ち込み、一緒に休みをとって海外旅行をする優雅な生活でもあった。

「ふだんは質素な生活をしていましたが、海外旅行のときだけは食べたいものを食べると決めていました。買い物はほとんどしないのですが、ふたりとも食べることが大好きで。値が張ってもおいしいレストランに行きまくりましたね」

ところが4年前、ナツミさんは「運命の人」に出会ってしまった。年に一度の海外旅行で行ったイタリアのレストランでの出会いだった。

「たまたまランチで隣り合わせのテーブルにいて。一目見たとき、心の奥がざわついたんです。夫が中座したときに私から『こちらにお住まいですか』と聞いたら、仕事で来ているんですって彼が答えて。そのときの笑顔が忘れられませんでした」

とはいえ、たまたま旅先で出会った日本人同士というだけのこと。いくら心の奥がざわついても、それ以上のことは起こりようがない。ところが数日後、帰国の飛行機の中に彼の姿があった。

「あちらも驚いていました。夫は飛行機ではすぐに眠ってしまうので、私は彼とずっと話していました。最後は連絡先を交換しあったんです。こういうことがあっても日常生活に戻ると連絡をとらないものだと思うんですが、三日後、彼から連絡がきました。しかも私の勤務先の会社と彼が代表を務めている事務所とが近くて、またまたびっくり」

運命とは偶然の積み重ねなのかもしれない。

いけないことだとわかっていながら

東京で再会すると、ふたりの関係は一気に進んだ。全身から「激情」がほとばしり出て止まることがなかったとナツミさんは振り返る。彼は5歳年上、中学生になるひとり娘がいた。

「片時も離れていたくない、仕事以外ではずっと一緒にいたい。ふたりともそう思って3ヶ月後にはそれぞれ家を出ていました」

小さいマンションを借りて、ふたりはそこで暮らし始めた。お互いにどんな言い訳をして家を出てきたのかは聞かなかった。ふたりとも相手がつらい思いを振り切って出てきたことをわかっていた。だからこそふたりでの暮らしを大切にしたかったのだという。

「2年くらい濃密な日々を過ごしました。お互いの身も心も貪り尽くしたような日々でした。でもある日、帰宅したら彼がソファでぼんやりしてて。高校生になった娘から連絡が来て、おかあさん、彼にとっては妻が病気になった、と」

妻自身が彼を求めていたかどうかはわからない。彼も帰りたいと思ったかどうか定かではない。だが、ここで家に帰さなければとナツミさんは強く感じていた。

「私たちは人に褒められたことはしていない。自分たちの欲望だけで突っ走ってきて幸せだった。勝手なことをし続けてきたのだから、今こそ彼は家に帰るべき、奥さんを支えるべきだと思いました。もちろん、本当は帰したくなかった。だって好きでたまらない人なんですから」

ナツミさんは彼と話し合い、彼は妻と娘の許可を得て帰った。ナツミさんは彼と一緒に暮らしたその部屋で暮らし続けた。夫は何も言ってこない。謝って帰れば受け入れてくれる可能性は高いが、あえて甘えるのはやめた。

それからのふたりの関係がまた興味深い。

「彼が家に戻って2週間くらいしたころ連絡があって会ったんです。奥さん、かなりの大病みたいで手術が必要だと。それから月に1、2回会うようになりました。不思議なことにそれからは恋愛感情がまったくなくなってしまったんですよ」

妻の治療は現在も続いていて、この2年で4回もの大手術を受けている。そのたびにナツミさんはLINEで彼を励まし、酔いたいという彼につきあい、おいしいものが食べたいといえば店に連れていった。

「彼、高校生の娘のために毎日お弁当を作っているんです。どんなに遅く帰ってもそれだけはやるって。奥さんにも作っておけばお昼ご飯になりますしね。入院中はほぼ毎日、お見舞いに行っています。最初は頑なだった奥さんも、彼に甘えるようになったみたい。もちろん、不倫のことは話題にはならないそうですけど。奥さんとしては許すとも言えないでしょうし」

この先、恋愛感情が蘇ることはおそらくない、とナツミさんは言った。だが、彼への恋愛を超えた情はさらに深くなるような気がする、とも。

「もしかしたら私と彼、男女関係になるために出会ったわけではないのかもしれません。もっと深い人間関係を築くために会ったのかな。最近、そんな気がするんです」

彼は自宅に戻り、彼女はひとりきり。だが今も、彼女は幸せだと実感があるという。
(文:亀山 早苗(恋愛ガイド))

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