欧州からJリーグ復帰、苦戦するのはなぜか?
2024年9月22日(日)6時0分 JBpress
引退会見から早3か月、様々なサッカー関係者や盟友と会い、「新たな戦い」へのヒントを探し続けた激動のオフを経て、岡崎慎司はドイツで監督としてのキャリアをスタートさせた。
8月5日『Dialogue w/ (ダイアローグウィズ)〜世界への挑戦状』のLIVE配信では、そんなオフで得た知見に加えて、改めて自身の引退、そして日本サッカーのこれからや、ドイツでスタートさせた監督としてのキャリアについて、たっぷり100分にわたって語ってもらった。
今回はその中から「清水エスパルスに復帰しなかった理由」と「海外組がJリーグに復帰する難しさ」を特別に紹介する。(全2回の1回)
(本稿は【新章・岡崎慎司】100分語り尽くし「ブラジルW杯」「長友・本田との邂逅」「これからの指導者像」……新たな世界への挑戦 を編集)
清水エスパルスに復帰しなかった理由
—— 2024年2月に現役を引退すると発表されましたが、かつて所属されていた清水エスパルス復帰するという選択肢はなかったのでしょうか?
もちろん、日本でプレイするなら絶対に清水エスパルスだと思っていましたし、かつて所属していたクラブでまた優勝したいという気持ちも当然ありました。
海外では求められて在籍していたというよりも、どこまでできるか試されている感覚が強かったので、最後くらいは歓迎されてプレーしたい気持ちはありました。
でも、その期待に応えられるほど、身体のコンディションがよくなかった。
加えて、海外でプレーを続けるうちに、いつの間にか海外で自分の価値を証明したいという思いが強くなっていったからです。
それが自分の正直な気持ちでした。
海外⇒Jリーグ復帰の難しさ
日本と海外ではメンタルや考え方が違います。
そのため、一度海外のチームに行ってから日本に戻ってきて、国内のクラブでプレーするとなると、これまで積み上げてきたものを日本仕様に変える必要性が出てきます。
でもそれが難しい。
海外に移籍するためにアジャストしたものを、また日本の時のものに戻すのって想像以上に大変なことなんです。
国内で活動している選手たちとの差を見せつけられていない、と言われてしまうとそれまでの部分もあるのですが。
—— 海外と日本のチームでの“マインド”の違いについて、他のサッカー選手たちと話したことはありますか?
何人かの選手たちとは話したことがあります。
たとえば、本田圭佑なんかは他の選手と考え方の枠組みが違う。常に他の選手たちと違う考えを持っているので、独自の視点から彼の意見を聞かせてくれました。
他にも、川島永嗣さんはいつもプレイに集中しているので、サッカーに対してシンプルにものごとを考えてはいるのですが、日本と海外のチームの違いについては、どこか引っかかっている部分もあったみたいです。
でも、それをどこまで表に出すかはまた違う話。自分のなかで日本での活動に違和感を覚える部分があっても、どこかで切り捨てているところがあるのだと思います。
当然のことですが、海外で活躍している選手にオファーを出す日本のクラブは、それなりの意図を持って選手にオファーを出しています。
海外のクラブで活躍してきた選手たちは、自分たちが経験してきたことをメンバーたちに伝えてほしいとか、その選手にしかできないことが求められているはずです。
一方で、熱い期待に応えて海外から日本に戻ってきた選手たちが、すべてを正直に話すのは少し難しいところもあって。
香川真司や、清武弘嗣、酒井高徳、大迫勇也にしたって、海外での経験を伝えてほしいと言われたらどうしても“厳しく”なると思うんですよね。
でもその厳しさが全て受け入れられるかといえばそうではない。
受け入れる側が「海外と日本はやり方が違うんだ」とあっさり遮断してしまうと、日本に還元してほしいと期待されて帰国してきた選手たちからしたら、どうしてもやりづらい。
もちろんどうにかチームに貢献しようと頑張りますが、海外での経験を伝える難しさを理解してあげないと、選手は苦しむだけです。
ファンやサポーターの方々は、海外での経験を活かしてサッカーでチームを勝利に導いてほしいと思うかもしれませんが、日本にアジャストすることの難しさも理解してあげてほしい。
海外でプレーしている選手が日本に帰ってくるという自体も、簡単な決断ではないので。
もちろん、メンバーのひとりとして接するべきではあるのですが、時には特別な選手としての立ち位置を許してあげるとか。選手たちのマインドチェンジの大変さを十分に理解してあげる“度量”も大切なのではないでしょうか。(文・坂本遼佑)
【9/25 無料Live】監督・岡崎慎司「バサラ・マインツの今後、欧州指導者として感じた日本サッカーの論点」
筆者:シンクロナス編集部