WHOが注意を呼びかける「エムポックス」とは?治療薬はあるのか【薬学部教授が解説】

2024年9月24日(火)20時45分 All About

【薬学部教授が解説】WHOが「エムポックス」の感染拡大に対して緊急事態を宣言し、不安に思われている方もいるかもしれません。エムポックスとは、新しい感染症ではなく、以前まで「サル痘」と呼ばれていた病気です。詳しく解説します。

写真を拡大

Q. 「エムポックス」とは何でしょうか? 薬はありますか?

Q. 「WHOが『エムポックス』という病気に対して、緊急事態を宣言したというニュースを見ました。また新しい感染症が流行し始めたのかと心配です。『エムポックス』とはどのような病気でしょうか? もし日本で拡大してしまった場合、治療薬はありますか?」

A. 以前「サル痘」と呼ばれていた感染症のことで、治療薬もあります

新型コロナ感染症がまだ拡大中で「2類感染症」として位置づけられていた2022(令和4)年7月26日に、日本で初の「サル痘」感染者が確認されたと伝えられ、新たな脅威になるのではないかと不安に感じた記憶がある人もいるのではないでしょうか?
その後、あまりニュースで伝えられてこなかったため、サル痘の感染はおさまったものと思っていた方も少なくないでしょうが、実はその後も散発的な患者の発生が続いており、2024年9月現在までに国内で248例もの症例が確認されています。
このサル痘について、感染症法上の名称が令和5年5月26日に「エムポックス」に変更されました。
ですので、最近の世界的流行に対してWHOが緊急事態宣言を出している「エムポックス」とは、サル痘の英名monkeypoxを少し短縮した「mpox」をカタカナ表記したもので、かつてのサル痘と同じものです。
エムポックス(旧:サル痘)は、1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めてヒトへの感染が確認された、オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルスによる感染症です。
典型的な症状としては、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などが0〜5日程度持続し、発熱した1〜3日後に発疹が出現します。2〜4週間症状が続いたのちに自然軽快する場合が多いですが、小児や患者の健康状態、合併症などにより重症化し、致命的になることもあります。
日本では感染症法上の4類感染症に指定されています。
ただし、過度に恐れる必要はありません。
既に開発・確立されている「天然痘のワクチン」が、エムポックスにも有効であることが認められています。危機管理上の理由から具体的な確保量は公表されていませんが、日本国内でも天然痘ワクチンは生産・備蓄されているようです。
また、海外で既に認可・使用されている、テコビリマットなどの「天然痘の治療薬」が、エムポックスにも有効だと報告されています。日本では未承認ですが、例外的に使用できる仕組みを厚生労働省が作ったので、万が一感染したとしても治療薬の投与が可能です。
さらに、私たちが新型コロナ感染症の対策として行ってきた「アルコール消毒」などの基本的な予防策が、エムポックスにも有用です。
時々刻々と変化する感染状況など、詳しい情報を得たい方は、厚生労働省のホームページに掲載されている「エムポックスについて」を参照することをお勧めします。日本より流行している外国の地域に行かれる方は、動物や感染者との接触を避けるように心がけてください。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

All About

「エムポックス」をもっと詳しく

「エムポックス」のニュース

「エムポックス」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ