調査員は見た! 第18回 あの“元通訳”もやらかした…中途採用トラブルTOP3に入る「経歴詐称」はどう暴かれる?
2024年9月25日(水)7時20分 マイナビニュース
「経歴詐称」は、中途採用トラブルの中でもトップ3に入ると言われています。ただ、企業内や企業間で経歴詐称についての話題はあったとしても、「経歴詐称」自体で罪に問われることはほとんどないことから、インパクトがいまひとつ薄いのか、メディアなどでは意外に取り上げられないのもまた事実。
と、あまり日常生活では聞くことがない経歴詐称ですが、つい最近、大きな経歴詐称にまつわるニュースがあったことをご記憶でしょうか? そう、世界的に有名なあの二刀流野球選手の“元通訳”の「経歴詐称」問題です。このときは「学歴詐称」が大きく取り沙汰されていましたが、実は彼は、通訳という「職歴」の一部も詐称していました。
というように、経歴詐称の中でも細かく分けた「職歴詐称」というものは、実は学歴詐称以上に大きな話題の裏に隠れていたりもするのです。私たち調査企業センターでも取り扱うことの多い「職歴詐称」。今回は、過去の調査事例から、「職歴詐称」についてご紹介します。
○職歴詐称とは?
「職歴詐称」とは、実際に経験したことのない職歴をあたかも経験したかのように詐称したり、不利になるような職歴を隠したりすること。どのような理由や形であれ、人として行ってはならないことですが、職歴詐称の中にもさまざまな種類があります。
・非正規雇用を正規雇用と詐称
・役職・業務内容の詐称
・経験年数・転職回数の詐称
・短期間で退職した企業の隠蔽
・過去の懲戒解雇を隠蔽
などさまざまな種類があり、過去の事例の中には、申告されていた企業に入社すらしていなかったパターンもありました。
職歴詐称の多くが「印象の悪い経歴をなかったことにしたい」「目に留めてもらいたい」といった本人の入社への熱意から行われるものですが、企業を騙していることに変わりはなく、社内でも企業間でも信頼に関わることですから、職歴詐称そのものが“印象のよくない”もの。しかし、それを行う人は「バレなきゃ問題ない」といった安直な気持ちで職歴詐称を行うのです。
そもそも企業は「職歴詐称をしている人物がいるかもしれない」という前提で採用希望者を見ませんし、履歴書や面接での対話だけでは、しっかりと履歴書を作成し真剣に取り組む人たちの中に紛れる職歴詐称を見抜くというのは至難の業。
とはいえ、職歴詐称をした社員が企業内に紛れていると、企業の信頼の低下につながるリスクもあります。
○社内のバックグラウンド調査から暴かれる職歴詐称
職歴詐称の多くは、企業内部のバックグラウンド調査によって発覚します。
前職の企業に電話して、申告されている期間に該当の人物が本当に在籍していたかを前職企業の人事部に直接確認する「電話調査」が主に調査の中心となります。また、採用前調査など現在も在籍中の場合、企業によってはSNSや企業のホームページ上にスタッフ紹介として写真を掲載している場合があり、SNS調査から職歴詐称が判明することもあります。
そうした調査から、本人の性格や、仕事への取り組み方などが判明したり、なかには退職の本当の理由が「トラブルを起こしていたことだった」という事実が判明するケースもあります。
○申し分ない職歴から見つかった汚点は、まさかの懲戒免職!?
実際に、調査企業センターで請け負った調査の中に、退職の本当の理由が判明したことから、「職歴詐称」が見つかったという事例があります。誰もが耳にしたことのある某有名企業からの依頼で、社内のバックグラウンド調査を行うことになりました。
SNSなどから誰もが簡単に情報を得ることができるようになった現代、どんなに消そうとも消えないインターネット上の記録は“デジタルタトゥー”と呼ばれます。否が応でもネットリテラシーを高める必要性を痛感しますが、そんなデジタルタトゥーから、「経歴詐称」が見つかってしまうこともあります。学歴であれ職歴であれ発覚した時点で炎上沙汰にもなりかねず、それこそ「信用問題」につながります。
今回のクライアントは、そんな炎上沙汰や信用問題を気にされ、企業内部のバックグラウンド調査に踏み切ったようでした。調査対象は1名。前職では大きな役職に就いており、様々な功績もあった実力のある人物でした。クライアント企業は本人からは前職の退職理由を「もっと違う角度で自身の実力を発揮したいと思った」と聞いており、その熱意に感銘を受けて採用したのだとか。
調査を始めると、SNSでは「金銭面で困っている」というニュアンスの投稿をしており、借金があるような気配はないものの、いくつか気になる投稿を発見。前職を退職した頃に、大きな買い物をしている旨の投稿が確認されたため、前職企業に電話調査を行うと、驚きの返答がありました。なんと、その人物、前職の会社のお金を持ち逃げして懲戒免職になっていたのです。
電話調査から、大きな役割に就いて様々な功績を残していたのは事実のようでしたし、実際に有能な人物で、先輩後輩関係なく一目置かれる存在だったそうです。とはいえどんなに有能であっても、お金を持ち逃げして懲戒免職された事実を隠すのは、許されることではありません。「隠す」ということは「悪いこと」や「良くないこと」である意識があるからこそ。職歴詐称は採用した企業にとっても、大きなリスクとなり得ます。
○調査をしないリスクはいつも企業側に
履歴書や面接での対話のみで判断して入社させる企業は多くあります。しかし、誰もが手軽にどんな情報も入手できるようになったこのSNS時代、事前調査を怠った企業側がリスクを負うことになります。内部は「バックグラウンド調査」、新規採用や中途採用ついては「採用前調査」で、様々な角度からの徹底的な調査が必要だと感じています。
企業調査センター 10万件以上の調査実績を誇る企業専門の調査会社。「調査のプロ」ならではの視点と聞き込みのテクニックで、学歴・職歴詐称や犯罪歴の有無やSNSでの性格や傾向をみるバックグラウンドチェックや、企業にとってリスクと思われる問題社員の素行調査などを手がけている。公式サイト(https://kigyou-cyousa-center.co.jp/) この著者の記事一覧はこちら
と、あまり日常生活では聞くことがない経歴詐称ですが、つい最近、大きな経歴詐称にまつわるニュースがあったことをご記憶でしょうか? そう、世界的に有名なあの二刀流野球選手の“元通訳”の「経歴詐称」問題です。このときは「学歴詐称」が大きく取り沙汰されていましたが、実は彼は、通訳という「職歴」の一部も詐称していました。
というように、経歴詐称の中でも細かく分けた「職歴詐称」というものは、実は学歴詐称以上に大きな話題の裏に隠れていたりもするのです。私たち調査企業センターでも取り扱うことの多い「職歴詐称」。今回は、過去の調査事例から、「職歴詐称」についてご紹介します。
○職歴詐称とは?
「職歴詐称」とは、実際に経験したことのない職歴をあたかも経験したかのように詐称したり、不利になるような職歴を隠したりすること。どのような理由や形であれ、人として行ってはならないことですが、職歴詐称の中にもさまざまな種類があります。
・非正規雇用を正規雇用と詐称
・役職・業務内容の詐称
・経験年数・転職回数の詐称
・短期間で退職した企業の隠蔽
・過去の懲戒解雇を隠蔽
などさまざまな種類があり、過去の事例の中には、申告されていた企業に入社すらしていなかったパターンもありました。
職歴詐称の多くが「印象の悪い経歴をなかったことにしたい」「目に留めてもらいたい」といった本人の入社への熱意から行われるものですが、企業を騙していることに変わりはなく、社内でも企業間でも信頼に関わることですから、職歴詐称そのものが“印象のよくない”もの。しかし、それを行う人は「バレなきゃ問題ない」といった安直な気持ちで職歴詐称を行うのです。
そもそも企業は「職歴詐称をしている人物がいるかもしれない」という前提で採用希望者を見ませんし、履歴書や面接での対話だけでは、しっかりと履歴書を作成し真剣に取り組む人たちの中に紛れる職歴詐称を見抜くというのは至難の業。
とはいえ、職歴詐称をした社員が企業内に紛れていると、企業の信頼の低下につながるリスクもあります。
○社内のバックグラウンド調査から暴かれる職歴詐称
職歴詐称の多くは、企業内部のバックグラウンド調査によって発覚します。
前職の企業に電話して、申告されている期間に該当の人物が本当に在籍していたかを前職企業の人事部に直接確認する「電話調査」が主に調査の中心となります。また、採用前調査など現在も在籍中の場合、企業によってはSNSや企業のホームページ上にスタッフ紹介として写真を掲載している場合があり、SNS調査から職歴詐称が判明することもあります。
そうした調査から、本人の性格や、仕事への取り組み方などが判明したり、なかには退職の本当の理由が「トラブルを起こしていたことだった」という事実が判明するケースもあります。
○申し分ない職歴から見つかった汚点は、まさかの懲戒免職!?
実際に、調査企業センターで請け負った調査の中に、退職の本当の理由が判明したことから、「職歴詐称」が見つかったという事例があります。誰もが耳にしたことのある某有名企業からの依頼で、社内のバックグラウンド調査を行うことになりました。
SNSなどから誰もが簡単に情報を得ることができるようになった現代、どんなに消そうとも消えないインターネット上の記録は“デジタルタトゥー”と呼ばれます。否が応でもネットリテラシーを高める必要性を痛感しますが、そんなデジタルタトゥーから、「経歴詐称」が見つかってしまうこともあります。学歴であれ職歴であれ発覚した時点で炎上沙汰にもなりかねず、それこそ「信用問題」につながります。
今回のクライアントは、そんな炎上沙汰や信用問題を気にされ、企業内部のバックグラウンド調査に踏み切ったようでした。調査対象は1名。前職では大きな役職に就いており、様々な功績もあった実力のある人物でした。クライアント企業は本人からは前職の退職理由を「もっと違う角度で自身の実力を発揮したいと思った」と聞いており、その熱意に感銘を受けて採用したのだとか。
調査を始めると、SNSでは「金銭面で困っている」というニュアンスの投稿をしており、借金があるような気配はないものの、いくつか気になる投稿を発見。前職を退職した頃に、大きな買い物をしている旨の投稿が確認されたため、前職企業に電話調査を行うと、驚きの返答がありました。なんと、その人物、前職の会社のお金を持ち逃げして懲戒免職になっていたのです。
電話調査から、大きな役割に就いて様々な功績を残していたのは事実のようでしたし、実際に有能な人物で、先輩後輩関係なく一目置かれる存在だったそうです。とはいえどんなに有能であっても、お金を持ち逃げして懲戒免職された事実を隠すのは、許されることではありません。「隠す」ということは「悪いこと」や「良くないこと」である意識があるからこそ。職歴詐称は採用した企業にとっても、大きなリスクとなり得ます。
○調査をしないリスクはいつも企業側に
履歴書や面接での対話のみで判断して入社させる企業は多くあります。しかし、誰もが手軽にどんな情報も入手できるようになったこのSNS時代、事前調査を怠った企業側がリスクを負うことになります。内部は「バックグラウンド調査」、新規採用や中途採用ついては「採用前調査」で、様々な角度からの徹底的な調査が必要だと感じています。
企業調査センター 10万件以上の調査実績を誇る企業専門の調査会社。「調査のプロ」ならではの視点と聞き込みのテクニックで、学歴・職歴詐称や犯罪歴の有無やSNSでの性格や傾向をみるバックグラウンドチェックや、企業にとってリスクと思われる問題社員の素行調査などを手がけている。公式サイト(https://kigyou-cyousa-center.co.jp/) この著者の記事一覧はこちら