知ってる? 低用量ピルは、保険適用になるんです〈医師監修〉

2022年9月28日(水)16時45分 ソトコト

保険適用になる低用量ピルとは?





そもそもピルとは、月経や排卵の周期をコントロールしている女性ホルモン(※)が含まれたホルモン剤のことで、毎日1回服用し続けることで、高い避妊効果を得られます。副作用を抑えるために含まれるホルモン剤の量をできるだけ抑えたものを低用量ピルや超低用量ピルと呼びます。
低用量ピルは、目的に応じて大きく二つのタイプに分かれます。「一つは避妊目的のOC(Oral Contraceptives)。正しく服用すれば、ほぼ100%に近い避妊効果がありますが、保険適用ではなく、全額自己負担の自費になります。もう一つは、LEP(Low dose Estrogen Progestin)という低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬です。基本的にはOCと同じ成分の薬剤ですが、月経困難症の治療薬として使用され、保険適用となります」(柴田綾子先生・以下同)。
低用量ピルの使用が認められる月経困難症とは、生理中に起こる下腹部痛や腰の痛み、頭痛、抑うつなどの症状のこと。痛みの程度や感じ方はもちろん、不安、抑うつ、いらいらなど精神的な症状には個人差がありますので、つらいと思ったら産婦人科で相談してみるといいでしょう。「生理がこない」「生理周期がバラバラ」といった月経不順や「生理前にイライラが強い」などの月経前症候群も、低用量ピルで症状が改善しますが、厳密には保険適用にはなりません。
ちなみに、避妊を目的とする経口避妊薬(OC)は自費診療となり、1カ月分は2,000円〜3,000円程度で施設やサービスによって異なります。月経困難症の人に処方される低用量プロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は保険適用のため、1カ月分1,000〜2,500円程度となります(低用量ピルの種類によってちがいます)。


日本のピル内服率はわずか2.9%。普及しない原因は?


国連の発行している『避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)』によると、日本のピル内服率は2.9%。一方、他国におけるピルの内服率は、フランス33.1%、カナダ28.5%、英国26.1%など、比べるまでもなく日本のピル内服率はまだまだ低いのが現状です。





日本で普及しないのはなぜなのか、柴田綾子先生に尋ねてみると、「まず、値段が高く毎日服用し続けるにはハードルが高いこと、医師による処方が必要なため病院を受診しなければならないことなどが考えられます。また、学校教育で生理の症状に対する対応を学ぶ機会が少ないことも原因の一つだと考えられます」


避妊だけじゃない、低用量ピルの効果





低用量ピルは、女性自身がとることのできる避妊方法の一つです。排卵を抑えることで得られる避妊効果は、正しく服用すれば約99.7%と報告されています。では、月経困難症に対する効果はどの程度あるのでしょう?
「低用量ピルには、排卵を抑えるために女性ホルモンの変動を抑える作用があります。正しく服用することで、月経痛の緩和や月経前の不快症状である月経前症候群(PMS)の改善、生理日のコントロールなどができます。
薬と相性が合うと、生理痛が軽くなるのはもちろん経血量も減って快適に過ごせるようになります。旅行や大事な試験、スポーツの大会など、ここぞというときに生理が当たらないように調整することも難しくありません。また、にきびや肌荒れが改善したと喜ぶ人もいらっしゃいます。生理痛が重いと悩んでいる人は、我慢せずに一度産婦人科で相談してみるといいでしょう」


低用量ピルを始めるには、医師の診察と処方が必須





低用量ピルは、現在の体の状態や改善したい症状などにより、使用する種類が異なります。また、副作用や服用方法に注意点があるため、必ず医師の診察が必要です。ドラッグストアのような市販薬を販売しているお店では購入できません。また、薬剤師のいる薬局であっても、医師の処方箋がない限りピルを購入することはできません。
最近では、個人輸入などによるネット通販で海外製のピルも販売されていますが、日本の医薬品医療機器等法に基づく安全性や有効性が確認されていません。また、偽造品である可能性や、有効成分がきちんと含まれていない可能性も。そうしたピルを服用すると、思わぬ健康被害や副作用を招く恐れがあり、厚生労働省からも注意喚起されているのが現状です。国内の病院で購入するよりも安いからといって、安易に個人輸入された海外製のピルを飲むことは避けて下さい。
ところで、実際、病院での低用量ピルの処方はどのように行われるのでしょう?
「ピルの処方には、まずは医師の診察が必須です。診察では、いまのご自分の体の状況や改善したい症状、悩みなどをしっかりと相談するのが大切。ささいなことでも気になる症状があれば、診察時に伝えて下さい。
診察の他、血圧と身長、体重を測定します。万が一、血圧が140mmHg以上の場合、処方は慎重に行う必要があります。を超える場合はピルの処方を延期することがあります。高血圧の人が低用量ピルを服用すると、血栓症などの血管系の障害や病気のリスクが高まるためです。また、BMIが30以上の方も注意が必要です」
さらに、生理痛がひどい人は、診察の他に、血液検査やエコー検査が必要な場合もあるそう。
「産婦人科を受診したことがない場合、病気があってもご本人が気づいていないケースも少なくありません。生理痛がつらい、重いという方は、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が隠れている可能性があるので、現在の体の状況をしっかり把握するためにも、詳しい検査を受けるのがおすすめです。ただし、血液検査や内診やエコーは必ずしなければいけない検査ではありません。検査をしたくないときは問診票などにあらかじめ記載しておき、産婦人科医にも伝えてください。」
低用量ピルを飲んではいけない人もいます。
「50歳以上の方、または閉経している方には処方はできません。また、40歳以上の方は血栓症のリスクが高くなるため、服用には注意が必要です。低用量ピルを飲み始めて最初の4カ月は、特に血栓症のリスクが高いので、医師と相談しながら様子を見て服用するようにしてください」
避妊や生理痛、PMSなどの改善など、ピルを服用する目的は人によって異なります。また、重い生理痛には病気が潜んでいることもあり、ピルだけでは改善しないことも。ピルを服用しても症状が改善しないときは、血液検査や内診、エコー検査がおすすめです。自分に合ったピルが見つかると、毎月の生理が軽くなり過ごしやすくなります。ぜひ一度、ピルについて産婦人科医にご相談ください。
※ 卵胞ホルモン・黄体ホルモン





柴田綾子先生(しばた・あやこ)●淀川キリスト教病院産婦人科所属。産婦人科専門医、周産期母体・胎児専門医。世界遺産を見るため、15カ国ほどをバックパッカーで旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医をめざす。2011年医学部を卒業後に沖縄で初期研修し、2013年より現職。女性の健康に関する情報発信やセミナー講演を中心に活動中。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)、『明日からできるウィメンズヘルスケア』(診断と治療社)。


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寳田真由美(たからだ・まゆみ)●編集者、ライター。大学卒業後、出版社や編集プロダクションに勤務。情報誌や女性誌、旅行誌などの編集を経て、2000年よりフリーランスで活動。現在は、主に女性のライフスタイルや健康、医療記事の編集・執筆などを行う。いま一番はまっているのは、愛犬と旅するためにはじめたキャンプ。

ソトコト

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