ジビエを家庭料理に。おいしく食べるだけのSDGsアクション

2022年10月1日(土)10時1分 ソトコト

対馬の自然を荒らす害獣を地域の財産へ





大切に育てた畑をイノシシが荒らしたり、森林の下草をシカが食べ尽くして土壌が流出するようになってしまったり。野生動物による被害が深刻な長崎県対馬市で、生態系のバランスを取り戻すために活動しているのが一般社団法人daidai。殺処分されて埋められるだけだったイノシシやシカを衛生的においしく加工して、自社サイトで販売もしています。
「獣害から獣財へ」の転換を図るために尽力している代表の齊藤ももこさんにお話を伺いました。





齊藤さん:島全体の9割を森林が占める対馬ですが、長年にわたりイノシシやシカの食害に悩まされています。現在、シカだけでも4万頭が生息。理想的な頭数は約3500頭とされているので、いかに増えすぎてしまったかわかりますよね。その被害は山に一歩入れば、上の写真のような荒れた状況が撮れるほど深刻。でも、害獣というネガティブな視点だけでは心が動く人は少数です。イノシシやシカも地域の「財」と捉え、肉や革などの資源に変えて「獣害から獣財へ」をコンセプトに活動しています。
獣医師でもある齊藤さん。学生時代、神奈川から環境省のインターンシップで対馬を訪れたことが、現在の事業につながっているといいます。
齊藤さん:当時、対馬の固有種であるツシマヤマネコの保全に興味を持っていました。環境省の方と調査をしていたら、島民の方が「それよりイノシシやシカの被害をどうにかしてほしい」と。
被害の甚大さを知って地域おこし協力隊として移り住み、任期終了後はその業務を引き継ぐ形で社団法人を立ち上げました。イノシシやシカを食肉や革製品にして販売する他、鳥獣被害の現場に出向いて対策の指導をしています。


衛生的で安全なジビエを提供するために


野生動物の肉というと、「汚いのでは?」と不安になる人もいるでしょう。実はdaidaiのジビエは、スーパーに並ぶ牛や豚、鶏などの一般的な食肉同等以上に衛生的。
齊藤さん:販売を始めるにあたり、対馬市独自の解体処理に関するガイドラインを策定。安心して食べられる、衛生的な食肉になっています。





家庭料理に幅広く使える、充実のラインナップ


daidaiのオンラインストアをのぞくと、イノシシやシカのスライスやブロック、さらに挽き肉までそろっています。「脂の乗ったイノシシのロースは焼いて塩とコショウだけでもおいしいし、焼き肉のタレに漬け込んでから焼くのもオススメです」と齊藤さん。
また、ジビエにしては珍しい挽き肉まであるのがdaidaiのこだわり。山で獲れた栄養たっぷりで安全な肉を家族みなで味わってほしいから、子供の好きなメニューに加工しやすい挽き肉での販売もしているのだそうです。





ソーセージやハム、パテなど加工品も充実しています。特にオリジナル調合のスパイスをたっぷり効かせたローストは人気とのことですよ。





豚や牛肉に比べ、低カロリーで鉄分が豊富


野生で育ったからこその引き締まった赤身、濃厚な脂身がおいしいイノシシやシカ肉。もっと身近に利用すべきなのは、SDGsの観点からだけではありません。
齊藤さん:注目してほしいのは、その栄養価。イノシシのもも肉は110kcal/100g、シカもも肉は91kcal/100gと低カロリー。一般的な豚肉の2分の1、牛肉の4分の1しかありません。鉄分もとにかく豊富。成人が1日に必要とされる7mgの鉄分を摂るにはシカなら120gで足りますが、牛肉だと500gも食べないといけません。
さらにイノシシの肉にはビタミンB12もたっぷりなのだとか。美容や健康的なダイエット、アスリートの食事にもジビエは最適といえそうです。


命を無駄にせず、大切にいただく


「今後は解体処理の体験会を開くなど、食育にも取り組んでいきたい」と話す、齊藤さん。自身も初めて野生動物をさばくのを目にしたとき、湯気が立ち上っていくのに衝撃を受けたといいます。
家庭と生産現場が遠くなり、スーパーの冷たいパック肉から命を感じることが難しくなっています。害獣として殺処分され、廃棄されるだけだった野生動物の肉を食卓に出せば、命をいただくということについて、家族で話をするきっかけにもなりますよね。





daidai以外にも捕獲した野生鳥獣を家庭用に提供する取り組みは増えています。ぜひ、いつもの食卓に取り入れてみてはいかがでしょう。
▼daidaiのオンラインストア
https://daidai.base.ec/
文/時津 木春

ソトコト

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