本当に100年に一度しか咲かない?“センチュリープラント”について園芸研究家に聞いてみた

10月3日(日)11時30分 ソトコト

100年に一度花を咲かせるという意味から、センチュリープラントという別名を持つリュウゼツランだが、“100年に一度”は大げさだ。「日本では30〜50年くらいで開花する」と園芸研究家の小川恭弘さんは言う。南房総で、空高く伸びたリュウゼツランの花を今年はよく目にした。「どうして今年はこんなに開花しているのだろう?」という疑問と興味から、園芸研究家や園芸店店主、リュウゼツランを育てている人たちに話を聞いて、植物について素人のライターがリュウゼツランについてまとめてみた。これを読めば、あなたもリュウゼツランを育てられるかも?

リュウゼツランてどんな植物?

まずは小川さんに、リュウゼツランについて教えてもらおう。

園芸研究家小川恭弘さん

小川恭弘さん
おがわやすひろ●園芸研究家/1968年、千葉県生まれ。東京農業大学卒業。千葉県館山市の植物園に勤務したあと、フリーランスで熱帯果樹の栽培などに携わる。NHK趣味の園芸でも活躍。https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-81
分類:キジカクシ(以前はリュウゼツラン)科リュウゼツラン(アガベ)属
学名:Agave americana
和名:アオノリュウゼツラン
   (リュウゼツランは斑入りの変種 A.americana var.marginataを指す)
原産:メキシコ、テキサス州
※リュウゼツラン属で300種類ぐらいあるというが、この記事ではリュウゼツラン属を差す場合は“アガベ”と記載し、和名と区別している
アオノリュウゼツラン

アオノリュウゼツラン

右が元気なアオノリュウゼツラン。左は開花後、枯れようとしているアオノリュウゼツラン。
大きなアロエを連想させるこの植物が、アオノリュウゼツランだ。100年は大げさだとしても開花までに数十年を要し、急に空高く茎を伸ばして不思議な花を咲かせ、その後枯れて死んでしまうというその潔い一生に心を奪われた。そんな筆者に対し、「開花後に枯れてしまう植物は多くて、パイナップル科の植物はほとんどそうですし、バナナなんかも実がなってから死んじゃいます」と小川さんは言う。
アオノリュウゼツランが好む場所は、どんな場所だろうか?
小川さん「日当たりと排水のよい場所で、斜面が理想的です。南房総地域の海沿いは砂質土壌で排水がよくて気候も温暖なので、栽培には適しています」

アオノリュウゼツランが3本同時に開花! 当時新聞にも取りあげられた家

2本のアオノリュウゼツランが開花している家を発見。
アオノリュウゼツランの花

アオノリュウゼツランの花

Iさん宅のアオノリュウゼツランの花
家主のIさんに話を聞いてみると、「12年前に、庭のシンボルとしてリュウゼツランを植えました」とのこと。1.2メートルくらいのリュウゼツランを3株と、70センチサイズのものを5株植えたそうだ。
Iさん「最初は、大きな株を植えてから5年後くらいに同時に3本開花して、その後も3年おきくらいに次々と2、3本ずつ数回咲いて、この夏までに合計8本は咲いたと思います。最初に咲いたときは、何十年に一度しか咲かない珍しい花が、しかも同時に3本咲いたということで、房日新聞や読売新聞の取材を受けました」
松の木を連想させる一本の木のようなアオノリュウゼツランの花だが、どんな風に花を咲かせていったのだろうか?
Iさん「急に中心から真っすぐに太い緑色の芯のようなものが出てきたと思ったら、それがどんどんニョキニョキと真っすぐ空に向けて高く伸びていき、そこから木の枝のような形になって、その先端にぼこぼこと丸い突起物が出てきて、岡本太郎の太陽の塔のような雰囲気でした。そしてその突起物から細かい刷毛のような花がたくさん咲きました。でも、言われなければそれが“花”とはわからないほど地味な見た目と色で、花というより木の枝か、小さいほうきのようでした」
アオノリュウゼツランの花

アオノリュウゼツランの花

「開花後ほどなくして中心の幹や周りの葉が枯れていき、太い幹が倒れて倒木のような状態になり、車の通り道を塞いで大変だった」とIさんは言いますが、その後感動のできごとが。
Iさん「枯れた株の周りには小さなベビー株がポコポコといくつも発生していて、開花して朽ち果てていった大きな株は、ちゃんと子孫を残して、その長い一生を終えたことがわかりました。花は地味でしたが、この一連の現象は生命最後の力強いラストスパートを見せてもらった気がして、感動しました」
アオノリュウゼツランの花

アオノリュウゼツランの花

七世(ななよ)さん宅のアオノリュウゼツラン
アオノリュウゼツランの花を見つけて声をかけた、七世さん宅。七世さんによると、2015年に20年以上と思われる大きな株を数個購入。すると、2019年から今年までの3年間毎年花を咲かせているのだとか。購入した本人は「買ったばかりなのに、もう枯れちゃうか〜」と残念に思ったと言う。
特に手入れはしていないが、アオノリュウゼツランの周りにできる子株をせっせと移植しているそうだ。
次のページでは、園芸研究家や園芸店店主が教えるリュウゼツランの育て方を紹介

園芸研究家に聞く、地植えで育てるアオノリュウゼツランの増やし方とお手入れ方法

アオノリュウゼツランの花

アオノリュウゼツランの花

昆虫が訪れているが、アオノリュウゼツランは夜でないと結実しないらしい
花を咲かせたあとに子株が繁殖して増えていくのかと思いきや、「花が咲かなくても、生きている間に子株が増えて繁殖します」と小川さん。1メートルくらいのサイズになると、温かい時期に繁殖するらしい。日本では株で繁殖しているが、原産国ではコウモリが受粉を媒介して種ができるという。
アオノリュウゼツラン

アオノリュウゼツラン

特に手入れを必要としないが、植物園では見栄えをよくするために枯れた葉を取り除いているそうだ。棘があって刺さると痛いので、革の手袋は必須。「水分を含んだ繊維質で硬いので、ノコギリで切るのが大変だった」と小川さんは話す。

鴨川市でリュウゼツランを育てる愛好家

ネットオークションで小さなリュウゼツランを手に入れて、自宅で育てているリュウゼツラン愛好家のしほさん。
リュウゼツランの子株と現在

リュウゼツランの子株と現在

2013年にオークションで購入したリュウゼツランの子株と、現在の様子。周りには新しい子株が。
こちらは2017年に譲ってもらったという、アオノリュウゼツラン。「だいたい植物は斑入りの方が弱いので、こちらの方が生長速度が速いです」としほさんは言う。
アオノリュウゼツラン

アオノリュウゼツラン

たしかに、南房総でよく見かけるのも開花しているのも、そのほとんどがアオノリュウゼツランだった。

庭がなくても育てられる? 園芸店店主が教える、鉢植えリュウゼツランの育て方

グリーン生産・販売店Binowee(ビノウィー)

グリーン生産・販売店Binowee(ビノウィー)

南房総市千倉町に店を構え、多肉やサボテンなどを生産販売している「Binowee(ビノウィー)」の店主、岡田美穂さんにリュウゼツランの育て方を聞いてみた。
岡田さん「リュウゼツランは寒さに強く、日なたが大好きですごくタフ。関東より南なら、外のベランダに置いた方が室内よりもきれいに作れます。土は水はけがいい土で、多肉植物用がお勧め。間違って野菜や花用でやらないように」
Binowee(ビノウィー)店主

Binowee(ビノウィー)店主

手入れ方法を説明する店主の岡田さん
岡田さん「葉っぱの手入れは、木と一緒で新芽が育つにつれて下の葉が茶色くなってくるんですけど、これは人の好みで全部残す方がかっこいいっていう人と、きれいにはがして掃除した方がいいって人に分かれます。切る場合は小さいものならよく切れる剪定バサミか、ピリってめくれるまで放っておくか。花は、アガベの種類によって鉢植えで咲かせることもできますよ」
ハウスで自ら育てた植物を多く扱い、仕入れるものは必ず自分の目で見て仕入れているという岡田さんは、植物園に勤めていたご主人と2人で店を運営している。鉢植えでアガベを開花させた経験もあるので、興味のある人は直接訪れて相談してみてほしい。
Binowee所在地:千葉県南房総市千倉町白子2616-1
web:http://unknownplants.blogspot.com/
写真・文:鍋田ゆかり
取材協力:小川恭弘さん、岡田美穂さん、七世さん、しほさん、Iさん(順不同)

ソトコト

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