森口将之のカーデザイン解体新書 第21回 乗れば乗るほど味がする! 「MAZDA3」のセダンにも注目すべき理由

10月8日(火)11時30分 マイナビニュース

大胆なデザインと革新のエンジニアリングで多くのクルマ好きから注目されている「MAZDA3」(マツダ3)。デザインのメッセージが明確なのはファストバックの方だが、セダンも負けずにスタイリッシュでありながら、より万人向けの仕立てになっていることが試乗で確認できた。

○バランスの良いプロポーション

マツダ3 セダンを見て、まず感じるのはバランスの良さだ。以前の記事で報告したように、前作となるアクセラと比べてリアのオーバーハングを長くし、全長をファストバックより200mm長い4,660mmとしたおかげで、セダンらしく落ち着いたプロポーションになっている。

ボディサイドには、適度にキャラクターラインが入る。フロントグリルの枠を見ると、ファストバックでは精悍さをアピールすべく黒塗りとしているのに対し、セダンはほかのマツダ車と同じようにクロームメッキとしている。

斬新なデザインが登場した時、理解するまでに時間を要することがよくあるけれど、セダンはファストバックほど強烈な個性をアピールしていない分、入り込みやすいと思う人が多いのではないだろうか。

室内の広さはファストバックと変わらない。セダンの方がルーフのカーブが明確なのに対し、ファストバックはリアゲートのヒンジ部分が低くなる。それを同等の空間にまとめたわけで、マツダデザインのこだわりを感じる。セダンとしては低めに座る後席にも乗ってみたが、身長170cmの自分の場合、天井に頭が触れることはなかったし、足元の空間はこのクラスの平均レベルを確保しているように感じた。

心理的に、マツダ3 セダンは室内が広く感じるクルマだと思った。サイドやリアのガラスがファストバックより大きく、リアクォーターピラーが細いことが効いている。後席に座った時だけでなく、運転席から後方を振り向いた時の明るさや見晴らしにも、明確な差がある。言い換えれば、ファストバックはクーペ的だ。セダンは全方位が視認しやすいので、いい意味で普通のクルマに乗っている感じがする。

○強烈とは対極にある加速

インテリアは前回の記事で報告したとおり、最初に形ありきではなく、配置の適正化から考えたという。おかげでスイッチ類は乗り込んですぐに使いこなせるし、ドライビングポジションはマツダが以前からこだわってきただけあって、違和感なく受け入れられる。

もうひとつ感じるのは、インパネからドアへと続くシルバーの帯が、水平基調を強調していることだ。エクステリアでも水平のラインを強調したセダンのほうが、インテリアとの整合性が高いような気がした。

シートの座り心地の良さにも感心する。筆者は、この面でレベルの高いフランス車を乗り継いできているので厳しい評価になりがちなのだが、これまでの多くの国産車は座面が薄かったり背もたれの張りが弱かったりして、長距離では疲れやすかった。しかし、マツダ3は腰を下ろすと体に合わせて沈みこみ、着座位置が低いわりには厚み感がある。対照的に背もたれの張りはしっかりしていて、自然と背筋を立てた正しい姿勢になる。

マツダ3は全部で4タイプのエンジンを用意する。その中から、今回は1.8リッターのディーゼルターボに乗った。最高出力こそ85kW(116ps)にとどまるものの、最大トルクはガソリン2.5リッターを超える270Nmを1,600〜2,600rpmという低い回転域で発生する。しかし、6速ATを介しての加速は決して強烈ではない。

これは、意図的なチューニングだと思っている。マツダ3は「自分の足で歩いているかのような」走りを目指している。その考え方が、加速にも反映していると思ったのだ。

中には「元気がない」と感じる人がいるかもしれないが、唐突感がないこのキャラクターは、長距離では疲れにくさにつながるはず。もちろん、ディーゼルエンジンはガソリンより燃費がいいし、軽油の燃料代は安い。いろいろな部分がロングラン向きだ。

それでいて、高速道路の料金所を抜けてアクセルペダルを大きく踏み込むようなシーンでは、レスポンスは穏やかなまま、ディーゼルらしい粘り強いトルクで車体をぐんぐん前に押し出していってくれるので頼もしかった。

○滑らかな動きが心地よい

一方の街中では、取り回しのしやすさも印象深かった。最小回転半径は5.3mと、トヨタ自動車の新型「カローラ」の主要グレードと同じである。魅惑的なスタイリングを持ちながら、全幅を1,795mmに抑えてあることも大きい。加えて、前述のとおりセダンは後方視界にも優れている。

それ以外の部分は、最初は特徴がなく、つかみづらいクルマに思えた。でも、しばらくすると、いいモノであることに気づく。例えば、乗り心地は固めではあるが揺れは少ないし、鋭いショックはシートが巧妙に吸収してくれる。人の動きに近いので、人間にとっては気づきにくいのかもしれない。

ステアリングの反応もパワートレイン同様、クイックすぎない。その後の動きが自然かつ素直で、滑らかな曲線を描くようにコーナーを抜けていく。これもまた、ストレスなく距離を重ねていける要素のひとつだ。

高速道路では運転支援システムを試した。近年、急速に進歩しているこのジャンルの中でも、平均レベルの性能は持っていることが確認できた。そうやってクルージングしている際にも、走りが滑らかであることには感心した。

その走りを味わうボディとして、艶やかさを極めたファストバックもいいけれど、凛とした空気を漂わせるセダンも似合うのではないかと思った。マツダ3に乗るのはこれで5度目だが、個人的には、回を重ねるにつれセダンの評価が上がってきている。

○著者情報:森口将之(モリグチ・マサユキ)
1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『富山から拡がる交通革命』など。

マイナビニュース

「セダン」をもっと詳しく

「セダン」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ