焼酎の新しい世界を切り開く! 独自製法の本格芋焼酎「大隅〈OSUMI〉」の魅力を探りに、鹿児島に行ってきた

2019年10月10日(木)12時0分 食楽web


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鹿児島・大隅半島で蒸溜する、新しいスタイルの芋焼酎が誕生

 グラスに顔を近づけると、ほわんとしたさつまいもの甘い香りがたちのぼりました。サントリーが手掛ける本格芋焼酎「大隅〈OSUMI〉」は、さつまいものフレッシュで甘い香りが特徴。ロックで飲むとさらに香りが広がるが、飲み心地はすっきりとしています。

 この「大隅〈OSUMI〉」を造る大隅酒造があるのは鹿児島県大隅半島。2005年に設立されたまだ若い蒸留所ですが、意欲的な焼酎造りに取り組んでいます。


畑を案内しながら黄金千貫について語る大隅酒造工場長の斯波大幸さん

 焼酎王国・鹿児島は、自社で蒸溜を行う蔵だけで県内に114軒もあるそう。多くは古くから焼酎造りが行われてきた薩摩半島に集中していますが、大隅酒造が位置する大隅半島にも比較的新しい焼酎蔵が増えているとか。この二つの半島で作られる焼酎の個性は、それぞれさつまいもを育てる畑の土の違いに由来するところが大きいといわれています。

「薩摩半島には小規模な仕込みを行う古い蔵元が集まっています。畑の土は赤土で、ここで獲れる芋から作る焼酎は、比較的どっしりとしたタイプが多いと言えます。大隅半島の畑は薩摩半島とは異なる黒土で、ここで採れる芋から造る焼酎は、シャープでキレがあり、少しモダンな印象になります」と話すのは大隅酒造工場長の斯波(しば)大幸さんです。

 今年9月中旬、この大隅酒造への取材ツアーが行われました。到着するとすぐに、斯波さんが黒土が顔を出した畑へと案内してくれます。さつまいもの収穫はお盆明けから始まり、11月中旬にかけて行われるそうで、目の前ではちょうど芋の収穫が行われています。

 芋焼酎に使うのは、クリーム色の表皮が特徴の黄金千貫。でんぷん質を豊富に含むこのさつまいもは、芋焼酎に用いる最適な品種の一つです。

「黄金千貫は日持ちがしないのが欠点です。収穫して時間がたつと風味が落ちてしまうのですぐに蒸溜所へ運び、2〜3日中には仕込みに使います」(斯波さん・以下同)


さつまいもは葉と蔓を刈り取った後で、収穫機で芋を掘り起こしていく

 大隅酒造では生のさつまいもだけを使うため、蒸溜所も収穫期の今がまさに仕込みで大忙し。劣化しやすい黄金千貫は、収穫されるとすぐに日に当たらないように遮光袋に入れて、素早く蒸溜所へと運ばれていきます。その袋を少しだけ開けて中を見せてもらうと、ぷっくりと太った芋がたっぷり入っていました。斯波さんによれば今年は豊作だといいます。


黄金千貫はほくほくした食感が特徴。地元では天ぷらなどで食べられることも

ウイスキーの技術を応用した「大隅〈OSUMI〉」だけの独自製法

 最初に、簡単に焼酎の仕込みについても説明しておきましょう。焼酎には甲類と乙類の2種類があり、芋や麦、米、そばなどを使って造るのが乙類(本格焼酎)です。乙類では最初に米などを使って麹を造り、これを水、酵母と一緒に発酵させたものが一次もろみ。芋焼酎の場合は、蒸した芋をこの一次もろみに加えてさらに発酵させ、単式蒸溜器で蒸溜します。

 大隅酒造の蒸溜所に着くと、さっそく麹造りを見せてもらいました。蒸した米に麹菌を撒いて40時間ほどで麹ができるそうです。その間、人の体感で温度を調節しながらよい麹が育つように管理されています。焼酎に主に使われる黒麹菌は、クエン酸を大量に生成する特徴があり、それが雑菌の繁殖を妨げてくれます。まだ温かい麹米を手に取って食べてみると、ほんのりと酸っぱい味がしました。


蒸した米に黒麹菌をつけて麹を造る。食べてみると甘みと酸味がある

 芋焼酎の仕込みでは、手作業で行われる選別加工も重要です。基準に合わない芋を選別し、蒸した時に中心まで均一に火が入るように、さつまいもをカットする作業です。洗浄されたさつまいもがベルトコンベアーで運ばれてくると、熟練したスタッフが素早くさつまいもをカットしていきます。この手順が、実は焼酎のできあがりに大きく影響するのだそうです。


さつまいもの劣化した部分を取り除いたり、蒸しやすいように切り分ける

 蔵の中はもろみの仕込みが始まっているため、甘酒のようないい匂いがプンと漂っています。タンクをのぞくとプチプチと発酵しているもの、発酵がほぼ終わっているものなど、時間差で仕込みが行われていることが分かります。そして発酵が完了した二次もろみは、いよいよ蒸留にかけられるのです。


蒸留したての焼酎の香りをかいで出来栄えを確認している

 大隅酒造には7tの蒸留器が4基あり、順次蒸溜が行われています。「大隅〈OSUMI〉」の蒸溜で最も特徴的なのは、蒸留した液体のうちの前半部分だけしか使わないこと。

「蒸留すると、最初は華やかな香りでアルコール度数が高い液体ができます。徐々にアルコール度数は下がり、ほくほくした芋の甘みやコクが出るようになりますが、後半は雑味も増えて、焼酎独特の臭みが出てしまいます。『大隅〈OSUMI〉』にはこの前半の風味のよいところだけを使っています」

 後半の雑味のある部分を加えないという贅沢な製法で、香り高い焼酎ができるといいます。残った後半の液体は、次の蒸溜に回されて無駄にはなりません。このサントリー独自の“香り厳選蒸溜”は、蒸留の最初の部分と、最後の部分を取り除いた中溜部分のみを使うというウイスキーの製法を応用したものでした。


蒸留したての焼酎。蒸溜の最初の部分は華やかな香りが特徴的

焼酎の可能性を探るテイスティング・セミナーも開催

 蒸溜所見学の後はテイスティングセミナーが行われました。最初に「大隅〈OSUMI〉」をストレートで味わってみると、香りはまるでふかしたさつまいものような甘さを感じますが、味わいはシャープで口当たりは滑らか。芋らしいふくらみもありつつ、後口は爽やかでした。


「大隅〈OSUMI〉」と、他の芋焼酎のテイスティング。芋焼酎は地元の名物さつま揚げなどとも相性がいい

 次は「大隅〈OSUMI〉」のストレートにほんの少し加水をしてみます。するとさらに香りが広がりました。今までの芋焼酎にありがちな、独特の香りとは一線を画したきれいな香りが「大隅〈OSUMI〉」の特徴です。これならば、芋焼酎はクセがあって苦手という人にも受け入れられるに違いない、という確信めいた印象を受けました。


豚味噌のクリームカナッペ、きびなごのエスカベッッシュ、地鶏のカルパッチョなど、地元の素材を使った料理と焼酎カクテルのペアリング

 また、そのまま味わうだけではなく、バーテンダーによるカクテルと地元食材を使った料理のペアリングも楽しませてくれました。カクテルを手掛けたのは、数々の世界的なカクテルコンペティションで入賞し、2013年「サントリー・ザ・カクテルアワード」では日本一に輝いた『バー万』の吉富万洋さん。

 吉富さんは、「大隅〈OSUMI〉」を「南の風のように爽やかな芋焼酎」といいます。今までの芋焼酎は個性が強く、カクテルにするよりもそのまま飲む方が美味しいとされてきました。しかし「大隅〈OSUMI〉」ならカクテルにも映えると吉富さんは言います。

 今回披露してくれた3種類のカクテルは、カボスやレモンなどの柑橘をアクセントに、それぞれに豚味噌、キビナゴ、地鶏といった鹿児島の地元の名物を合わせました。

 ウォッカやジンと比べると、アルコール度数の低い焼酎は、これまでは海外では受け入れられにくいと考えられていいました。しかし、カクテルのベースとして個性を生かすことができれば、ここから焼酎の新しい可能性が広がっていきそうです。

(取材・文◎岡本ジュン)

●DATA

「大隅〈OSUMI〉」

https://www.suntory.co.jp/sho-chu/osumi/

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