東尋坊パトロールする元警察官 活動の原点となった悲劇とは

10月13日(金)7時0分 NEWSポストセブン

双眼鏡を手に見守る茂幸雄さん(撮影:渡辺壮一)

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 定年退職までは、家族のため、会社のために働いてきたけど、リタイアしてからはどうしよう──そんな、「第2の人生」のスタート地点で、選択肢の一つとして出てくるのが、ボランティアだ。“これからは、社会のために”と一念発起し、「定年後ボランティア」で汗をかく老後を選んだ人に密着した。


 自殺が多発する東尋坊(福井県)で、双眼鏡を片手に歩く男性がいる。週6日、午前11時から日没まで、自殺をしようとしている人に声をかけ、保護する活動を続ける茂幸雄さん(73)だ。


 急峻な地形を昇り降りするが、「気力があるから何ともないよ。体力作りになるし、何よりボケ防止だ」と笑う。


 茂さんは福井県警の元警察官。交番勤務を経て防犯課(現・生活安全部)の刑事に。2003年、福井県警三国署の副署長になり、2004年に退職した。現役時代から東尋坊を見回るのが日課だったという。


 14年前、茂さんは一組の高齢のカップルを保護した。話を聞き、地元の福祉課に引き継いだが、自殺対策基本法成立以前の当時、そのことがかえって悲劇を生んだ。


「役所の窓口をたらい回しにされ、誰にも助けてもらえず、3日後に神社で首を吊り死んでしまったんだ」




 それが活動の原点となった。警察も行政も救えない自殺志願者のため、定年後にNPOを設立。以来、13年5か月間で606人を保護した。保護するだけでなく、立ち直りまで付き添うのが信条だ。


「数年前に保護した20代後半の女性と生後間もない男の子は、今も毎年会いに来てくれる。助かった命が、成長した顔を見せてくれるのは生き甲斐だよ」


【団体DATA】NPO法人「心に響く文集・編集局」:福井県警OBや元教員、看護師などとともに2004年に設立。東尋坊で統計的に自殺の少ない水曜日を除く毎日、2人1組でパトロールを行なう。これまでに保護した人数は606人。


※週刊ポスト2017年10月13・20日号

NEWSポストセブン

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