隠れラーメン激戦区・本郷三丁目の大型新店『麺屋鈴春』で至極の「醤油らーめん」を食べてきた!
2020年10月13日(火)10時50分 食楽web
食楽web
2020年9月2日、本郷三丁目駅(東京メトロ丸ノ内線、都営地下鉄大江戸線)から徒歩3分程度という好立地に、1軒の新店が誕生しました。そのお店の屋号は『麺屋鈴春』。
同店を切り盛りする鈴木店主は、東京都内を代表する新小岩の人気店『麺屋一燈』のご出身。『麺屋一燈』といえば、濃厚鶏白湯魚介ベースのラーメンとつけ麺を引っ提げて、2010年6月に創業。食べ手のニーズにピタリと合致した研ぎ澄まされた味わいが評判を呼び、瞬く間に全国クラスの知名度を獲得するに至った名店中の名店です。先般このコラムでご紹介した『麺屋yoshiki』とも同門に当たるお店です。
また、『麺屋一燈』のラーメンは、カップ麺として全国各地のコンビニ等で幅広く販売されています。ラーメンがお好きな方であれば、実店舗のラーメンかカップ麺の少なくともどちらか一方は、お召し上がりになったことがあるのではないでしょうか。
こんな名店で修業を重ね、長年にわたり同店を支えてきた鈴木氏が手掛ける1杯は、きっと、大いに期待できるはずだ! そんな確信に基づき早速、お店へと足を運んできました。
本郷通りと壱岐坂通りの交差点(壱岐坂上)のちょうど「袂」に相当する場所に佇んでいます
ロケーションは、都内の主要道路のひとつ・本郷通りに面しているので、比較的分かりやすいです。特に、丸ノ内線本郷三丁目駅からであれば、よほどのことがない限り迷うことなくアクセスできるのではないでしょうか。
白地に筆書きの行書体のような文字で描かれた『麺屋鈴春』の美しい文字。余計な装飾を排したシンプルな看板からセンスの良さが垣間見えます。『鈴春』の屋号は、店主の名字から「鈴」を、店主のご母堂の名前から「春」を採り繋ぎ合わせたもの。
店前のボードに掲示された営業時間は、平日が11時から15時、18時から20時まで、土曜日が11時から15時まで。平日夜営業の存在が、特に社会人にとっては感涙もののありがたさです。
鶏清湯系の優しい香りと味が染みわたる一杯暖簾をくぐると、進行方向右手に券売機が鎮座。提供されているのは「醤油らーめん」、「塩らーめん」の2種類の麺メニューとそのバリエーション。加えて、毎週金曜には「ブタジマくん」という名の二郎インスパイア系ラーメンを提供しています。
「醤油らーめん」が券売機筆頭メニューですので、まずは、そちらをいただくのがセオリーということでしょう。私も、迷わず「醤油らーめん」のボタンを押しました。
「醤油らーめん」900円
待つこと数分。提供された「醤油らーめん」は、明るい褐色を呈した透明感のあるスープの中を、姿形の良い細ストレート麺が悠々と泳ぐ顔立ち端整な一品。脂が適度に乗った大ぶりの豚ロース肉が、丼の中央で存在を声高に主張しています。
ラーメンのタイプで言えば、着丼した直後から芳しい鶏の香りが宙を舞い鼻腔を優しくくすぐる、鶏出汁ベースの清湯系。言わずと知れた、ここ数年における東京ラーメンシーンで最も熱いジャンルに属する1杯です。
「修業先で様々なタイプのラーメンの作り方を教わりましたが、今、一番盛り上がっている『鶏清湯』に敢えて挑戦し、自分の腕がどの程度通用するのか試してみたかったんです」と笑う鈴木店主。なるほど、提供するラーメンを修業先と同じ「濃厚鶏白湯魚介」にしなかった理由は、そういうことだったのですね。
奥久慈シャモ&大山鶏のガラに名古屋コーチンの丸鶏。各々の鶏の特性を的確に把握した上で、それらを丁寧に炊き上げ持ち味を引き出した出汁は、味蕾に触れた瞬間、アミラーゼの分泌が止まらなくなるほど上質かつ分厚い旨みを誇ります。
出汁と合わせる醤油ダレも、新店とは思えないほどの出来映え。滋味深い節系乾物を溶かし込み、この1杯の主役である鶏の風味をより一層引き立てるギミックを駆使したり、切れ味鋭い『岡直三郎商店』や、甘み豊潤な『ちば醤油』の醤油を採用するなど、同店主がラーメン作りの勘どころを熟知していることが分かります。
こんなフルボディのスープの相棒役を務め上げるのが、修業元でも採用されている名門製麺所『心の味食品』のストレート麺。スープを過不足なく持ち上げ、実直に口元へと運び込む姿に無類の頼もしさを感じます。トッピングのロース肉のクオリティも絶佳。
「オープンから約1ヶ月が経過し、ようやく商品のカタチが定まってきました。なので、これからはスープの構成をあまり変えず、タレに用いる乾物の種類や、醤油の配合を吟味し、磨きを掛けていきたいですね」と意気込む鈴木店主。
開業して日が浅いにもかかわらず、既に2020年における最注目店の一角と目されている同店。今後の動向からも目が離せそうにありません。
店主(鈴木勝明氏)プロフィール・新小岩に本店を構える名店『麺屋一燈』で修業し、幹部へと上り詰めた凄腕。
・『鈴春』の基幹メニューが鶏清湯系であるのは、上記の「最激戦分野において自らの力量を試してみたかった」という理由のほか、「自分自身が毎日食べたいと思えるラーメンが鶏清湯だった」ことによるもの。
・「醤油らーめん」に用いる「鶏油」を出汁とは別に炊いて作り、鶏の素材感の最大化を図ろうとするなど、要所を的確に押さえたラーメン作りは、後進の模範となるだろう。
●SHOP INFO
店名:麺屋鈴春
住:東京都文京区本郷2−26−1 福重ビル 1F
TEL:03−6801−5233
営:11:00〜15:00、18:00〜20:00、土曜11:00〜15:00
休:日曜
●著者プロフィール
田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。