今の時代に刺さる岡本太郎のメッセージをミスキャンパスと探る

10月18日(木)16時0分 NEWSポストセブン

兼田日向子さん(左)山下裕二さん(中央)黒口那津さん(右)

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「ナマの日本美術を観に行こう」のコンセプトで始まった大人の修学旅行シリーズ。引率を担当する明治学院大学教授で美術史家の山下裕二氏(日本美術応援団長)が今回訪れたのは、48年前に岡本太郎が制作した大阪万博のシンボル「太陽の塔」展。生徒役は、昨年のミスキャンパスに輝いた黒口那津(22)さんと兼田日向子(20)さん。


 稀代の芸術家が圧倒的な感性で作り上げた作品は、半世紀の時を超えて平成の若き世代にどう響いたのか。


山下:1970年に開催された日本万国博覧会(通称・大阪万博)のテーマ館の一部として岡本太郎が制作した異形の作品が、太陽の塔です。今なお大阪・吹田の万博記念公園にそびえ立つ塔が修復工事を経て、今春、約半世紀ぶりに息を吹き返しました。それを機にあべのハルカス美術館で催されているのが「太陽の塔」展です。本展では塔内の展示空間が再現され、追体験ができる。この巨大な太陽は1970年当時に塔のてっぺんにあった初代《黄金の顔》です。


兼田:こんなに大きな太陽が70メートルの高さにあったなんて。


黒口:その頃はもっとピカピカだったのかなぁ。間近で見るとたくさんの鉄板が継ぎ合わされているのがわかりますね。



山下:読者のみなさんは覚えているでしょうが、あの当時、塔によじ登ってこの目玉に立てこもった男がいたんです。


兼田・黒口:目玉男!(笑い)


山下:大阪万博の入場者は6421万人で、日本中が熱狂していたんですよ。1964年の東京五輪と1970年の大阪万博は日本の高度成長期の象徴でした。太陽の塔を通して岡本太郎の存在は日本中に知れ渡り、前衛的な美術に関わっていた人たちは「岡本太郎ともあろう人が国家権力に加担するとは何事か!」と反発したけれど、そうじゃない。彼は太陽の塔を通して、「人類の進歩と調和」という万博のテーマや政治的理念に強烈な“否(ノン)”を突きつけました。それが彼の唱える対極主義です。


黒口:太陽の塔の地下空間に展示されていた《ノン》が両手を前に出して拒否のポーズをしているのは、その意味が込められているんですね。岡本太郎は何を問いかけたのですか。


山下:その想いを最も象徴しているのが、太陽の塔の内部を貫いた《生命の樹》です。この全景模型をみると、アメーバから人類まで33種類の生物の進化が脈々と表現されています。



兼田:単細胞のアメーバがいちばん大きくて、最終形の人間はこんなにちっちゃい……。


山下:人間が偉いのではない、生命の根源へ立ち返れと、岡本太郎は叫んでいる。「人類の進歩と調和と言うけれど、人類はそんな進歩なんかしていない。そのテーマに俺は大反対だ」という強烈な意思表示なんです。


黒口:《生命の樹》からは植物を含めた生命の大切さ、そして人間の存在の小ささがひと目で伝わってきます。


山下:岡本太郎は考えてみたら当たり前の、普遍的なメッセージを言い続けた人なんです。


兼田:その当たり前の中に真理があるんですよね。作品を観ていても風景画などはなく、彼の内なるメッセージを感じます。


山下:岡本太郎が放つメッセージは、今の時代になおさら突き刺さってきます。“人類の進歩と調和”といって機械文明は発達したかもしれないけれど、気が付けば人間が機械の奴隷みたいになってしまっている。


兼田:私はインターネットの奴隷で一日中スマホを見てます。


黒口:それが日常なので、もはや危機感すらない……。



山下:コミュニケーションツールが発達して、現代人は根源的なものを失ってしまった。その大切さは人間を象った《愛》という彫刻を見ればわかります。


兼田:触れてはいないけれど人が向き合い、寄り添っている。


黒口:便利な世の中だけど、スマホで調べて“ふぅん”と思うことと、実際に作品を観て感じることはまったく違う。岡本太郎の思想や芸術に触れて、体験する喜びを実感しました。


●山下裕二(やました・ゆうじ):1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻・小学館刊)の監修を務める。笑いを交えた親しみやすい語り口と鋭い視点で日本美術を応援する。


●黒口那津(くろぐち・なつ):ミスミスター駒澤コンテスト2017グランプリ。1996年生まれ。駒澤大学法学部4年生。ミスオブミス2018グランプリ。『Ray』(主婦の友社)専属読者モデル。特技はウクレレ。


●兼田日向子(かねた・ひなこ):ミスキャンパス2017横浜市立大学グランプリ。1998年生まれ。横浜市立大学国際総合科学部2年生。ミスオブミス2018準グランプリ。特技はアイスの早食い。


■「太陽の塔」展

【会場】あべのハルカス美術館

【住所】大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階

【会期】11月4日まで

【開館時間】火〜金/10〜20時、月土日祝10〜18時 ※入館は閉館30分前まで

【休館日】会期中なし【料金】一般1200円(15名以上の団体1000円)

 太陽の塔の構想から当時の展示、再生事業までを網羅し、「ベラボーでありながら毅然として突っ立っている。そういうものでありたい」と語った芸術家・岡本太郎の魂や感性に迫る。


撮影■太田真三、取材/文■渡部美也


※週刊ポスト2018年10月26日号

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