完璧なのに物足りない!? 「銚子電鉄×夢グループ」コラボ動画、プロトタイプに潜む課題【エピソード4:疑念の熟練刑事編】

2023年10月19日(木)21時0分 Jタウンネット

前回までのエピソード:
【エピソード1:極寒の網走編】
【エピソード2:夢のレール編】
【エピソード3:灼熱の護国寺編】

通販会社・夢グループとのコラボ動画を作りたい——銚子電鉄・食品事業部の担当課長のA氏はそんな夢を胸に、夢グループ本社の門を叩いた。

「何か面白いことをしたいと思い来ました」
「銚子電鉄の略称は『CDK』(Choshi Denkitetsudo Kabushikikaisya)、"シーデーケー"といいます。
もし社長に銚子電鉄の紹介動画を作ってもらい、『シーデーケー』と発していただけたなら、世間の方々に喜んでもらえるのではないでしょうか?」

彼のそんなアピールが響いたのか、夢グループは提案を快諾。石田重廣社長&歌手・保科有里さんのコンビが出演する動画の制作が決定した。

話はとんとん拍子に進んでいく。というのも、A氏の中ではすでにアイデアがあったからだ。

それは、「でーぶいでー」でおなじみ「夢ポータブル多機能プレーヤー」のCMを忠実にトレースするというもの。A氏はJタウンネット記者に寄せた手記で、そう述べていた。

A氏の頭の中の石田社長と保科さん

しかし、問題があった。

「夢ポータブル多機能プレーヤー」風に銚子電鉄を紹介するとして、どんな要素をピックアップしたらいいのかが分からないのだ。そう、このA氏、「とにかく夢グループと動画を作りたい」という一心で突き進んできたため、細部までは決まり切っていなかったのである。

何か商品を一つに絞り、その商品の魅力を伝えてもらうような内容が一番である。
「ひらめけー。ひらめけー、カキーン。ひらめいた!!」
銚子電鉄1日乗車券、正式名称「銚子電鉄弧廻手形」
ためしに石田社長のモノマネで発音してみる。
「チョーシデンテツ↑コマワリタガタア↑!!」うん、悪くない、むしろ良い。(A氏の手記より抜粋)

こうしてA氏は自身で夢グループの石田重廣社長&歌手・保科有里さん用の台本を作成し、夢グループにメールで送付。手記には、その台本もそのまま入っていた。

ちょうしでんてつコマワリテガタア(夢ポータブル多機能プレーヤー)
石田社長:これ一枚で
・銚子電鉄略称シーデーケーの銚子駅から外川駅まで一日何回でも乗ることができ、
1.銚子ポートタワー展望台の入場が1割引き
2.地球の丸く見える丘展望館入場も1割引き
3.飯沼観音円福寺の吉祥縁起お守りももらえて
さーらーに、犬吠駅売店でぬれ煎餅等のお土産が1割引きで買えちゃいまーす!!(1000円以上ご利用の場合)
保科さん:一日乗車券ということは、朝の始発列車から夜の最終列車まで、銚子電鉄の電車に丸一日乗っていても構わないということですか?
石田社長:そうです! これ一枚でほんとほんと丸一日銚子電鉄シーデーケーの電車の旅が楽しめまーす!! そしてさーらーにこれ一枚で銚子市内25以上の施設でサービスがうけられちゃうんです!!
保科さん:すごい!! すごいい!!
でも社長、一日電車の乗れていろいろサービスの特典があるということは、5000円くらいですか?
石田社長:いやいや高くは売れません。税込み大人700円でのご紹介でーす。
保科さん:安い、安い!!
石田社長:おひとり様1日1枚までのご利用です。次の日になったらまたおひとり様1枚ご利用できます。つーまーり、おひとり様1年で365回利用できちゃうんです。
保科さん:毎日1枚利用できちゃうのはスゴイ!! 1年で365回利用できちゃうのもスゴイ!!
石田社長:お子さんは半額の350円デース
保科さん:お子様半額はすごーい!!
石田社長:ただし学校がお休みの時にご利用くださーい!!

感無量の映像化だった、けれど...

A氏が台本を送ると、その数日後、完成した動画が返ってきた。動きが速い。

しかも、9月20日に発表されたものと、ほぼ同じ内容だったという。

それは、台本を書いた張本人であるA氏ですら笑ってしまう出来栄えだった。

ちょうし→でんてつ→こまわり↓テガタア↑さすが本家の発音は違う。起承転結がきれいに決まっている。
さーらーにー、シナリオにはないぬれ煎餅をほおばる石田社長の特典映像付きである。そして、「いえいえ高くはありません。」の時の高速で動く右手に添えられた左手。完璧である。思わず、「私の脳内シュミレーションが実写化され感無量です」と御礼のメールを打った。

しかし、これでめでたし——とはいかなかった。

感無量だったはずのA氏だが、あまりにも事が上手く運びすぎていて、何か重大なことを忘れている気がしてならない。何かが物足りない。一体、何が足りないというのか。

この時A氏は「犯人が意外に早く見つかっちゃってみんな喜んでるケド、どうもしっくりこないと独り疑念をぬぐえない熟練刑事」の感情になっていた。刑事ドラマでよく見るやつである。

刑事が現場に戻るように、A氏も原点に立ち返る。「夢ポータブル多機能プレーヤー」のCMを数十回見直し、銚子電鉄バージョンと比べ......原因を突き止めた。

足りないのは、「あの人」だった。

【エピソード5へ続く】

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