「自転車で農道を走っていたら、前方にトラックが停車。荒々しいおっちゃんが降りてきて『おい、にいちゃん...』」(都道府県年齢不明・男性)
2023年10月21日(土)11時0分 Jタウンネット
シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Kさん(都道府県年齢不明・男性)
32年前、高校のテニス部に所属していたKさんは、朝から練習に励んでいた。
夕方、練習を終えて自転車で帰ることにしたKさんだったが......。
<Kさんの体験談>
32年ほど前、高校1年から2年になる春休み中のことです。テニス部に在籍しており、その日は朝から練習しておりました。
昼くらいから天気が悪くなり風も出てきたので、室内のトレーニングに切り替わり練習を終えたのですが、夕方になると春の嵐のような突風が吹き荒れる天候になっていて......。
通り過ぎたはずのトラックが...
当時の田舎の高校生は、たとえ雨が降ろうが風が吹こうが行かなきゃならないものは行くという風潮でしたので、その日も暴風が吹き荒れる中帰宅し始めました。
家までの距離は15キロほどで、自転車はドロップハンドルのサイクリング車。普段はそこそこの速度で走り、40分ほどで帰宅できるのですが、この日は漕いでも漕いでも前に進めません。
それどころか、西風に当たると車体をまっすぐ立てて走行することもままなりませんでした。
田んぼの真ん中の広域農道なのでまともに風をくらってしまい、直線なのに右側に思い切り傾けていないと吹き飛ばされます。
自分の脇を車が通り過ぎると、今度はエアポケットができて車道側に倒れそうになり、何度も自動車に巻き込まれそうになりました。
広域農道を半分ほど走っていると、通り過ぎたトラックが自分の数十メートル先で停車。運転席から荒々しいおっちゃんが出てきました。
てっきり危ないと注意されるのかと思っていると、こう言いました。
「おい、にいちゃん!お前どこまでいくんだ!」
暴風で声が流れていくなかで、自宅のある場所を答えました。すると、おっちゃんから返事が返ってきます。
「ちょっとあるな、危ねえからチャリンコ荷台に乗っけてやっから乗ってけ!お前死ぬぞ!」
車に乗せてくれたおじさんに...
おっちゃんは自転車を軽々と持ち上げると荷台に運び、助手席に乗せてくれました。
その後10分もしないうちに無事に家につきました。
車内で自分のことは話したのですが、疲れ果てていたのと安堵とで、その人がどこのどんな人なのかを聞きそびれていました。
暴風の中、あのままだったら本当に自動車に轢かれていたかもしれません。
車から降りて自転車を下ろしてくれた後に礼を言うと、
「お!テニスがんばれや!自転車の運転気をつけろよ!」
と言って颯爽と去っていきました。
見ず知らずの高校生を自転車ごと家まで送ってくれた、荒っぽいおっちゃん。
「ちょーかっこいいぜぇぇ!」
と思ってしばらく家の前で呆然とみていました。
天気の悪い日に、その道を通るといつも思い出します。
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