多頭崩壊で猫35匹保護も、引き取り手募集で難航 「成猫だと新しい飼い主が見つかりにくい」
2019年10月24日(木)15時0分 キャリコネニュース
近年、犬や猫の"多頭飼育崩壊"が度々話題になっている。動物愛護団体などが衰弱した犬猫を保護する様子がメディアで紹介されることも多いが、その後、新しい飼い主をどうやって見つけるかというのも大きな課題だ。
北海道旭川市が運営する動物愛護センター「あにまある」は10月中旬、多頭飼育が崩壊した市内の家庭から35匹の猫を保護した。現在、サイト上で引き取り手を募集しており、ネット上でも話題になっている。
同センターでは、毎年約200〜300匹の猫を保護している。同職員は「近年、全国的に多頭崩壊が目立ってきているように思います。今年だけでもうちで猫2件、犬1件に対応し、保護しました」と語る。
24日現在、引取先が決まったのは6匹。同センター職員は「今回保護したのはすべて成猫。子猫だとサイト掲載後に即日で飼い主が見つかったりするのですが、成猫は難しいです」と明かす。センターでは最大、猫42匹、犬28匹収容できるが、このままだとパンク状態となる恐れがある。
「経済的にパンクしてしまい、どうしたらいいか分からない状態である人が多い」今回保護された猫は、写真とともに性別や避妊・去勢手術の有無などの情報が添えられて掲載されている。雄雌は半々で、すべて雑種。すべて避妊・去勢済となっているが、保護後に同センターで手術を行った。
写真はケージの奥の方で少し疲れている表情をしている猫ばかりだ。ツイッターでは「みんな虚無な表情してる……」といった声があがった。
そもそも猫の多頭崩壊はどのように起こるのか。同職員によると、大きく分類して2パターンある。一つは去勢・避妊手術をしていない雄猫と雌猫を一緒に飼ってしまっているパターンだ。猫は年2回出産をするため、「2〜3年経てば数十匹になってしまう」という。
二つめは野良猫を「可哀想だから」と拾い続けてしまい、気がついたら物凄い数になっていた、というパターン。通常、多頭崩壊は、近隣住民からの猫の糞尿被害や、鳴き声がうるさいなどの苦情から発覚する。通報を受けて飼い主の家に訪問すると、異臭や栄養失調の猫が見当たる悲惨なケースが多いという。
「"費用対効果"でいうなら殺処分の方がいいです。でも生き物ですから」「猫が増えすぎて経済的にパンクしてしまい、どうしたらいいか分からない状態である人が多いです。ただ今回はあまり異臭・騒音がなく、ガリガリに痩せ細った猫も見当たりませんでした」(同職員)
環境省の調査によると、犬猫の殺処分数は年々減少傾向にある。しかし、2015年度の殺処分数は犬が8362匹なのに対し、猫は3万4854匹にのぼる。同職員は「全国的に犬より猫に関する苦情が多いです」と話す。
「犬は飼い犬の登録が義務付けられていますが、猫にはありません。猫を野放しで飼っても罰されることもなく、繁殖する前に積極的に捕まえて殺処分することもできません。犬より猫の方が多頭崩壊しやすい傾向にあります」(同職員)
また、札幌市には犬猫を10頭以上飼育する場合に届け出が必要となる条例があり、「このような動きは全国的に出てきていますが『何頭以上飼ってはダメ』という規制はありません。猫の苦情、多頭崩壊への対策は今の法制度が変わらない限り難しいのではないでしょうか」という。
同センターでは原則、犬猫の収容期間を最低14日以上としている。同職員は、「殺処分をしたくないのでなるべく収容しています」といい、同職員は、
「費用対効果を考えると殺処分の方がコストは低いですが、生き物なので簡単に"費用対効果"という言葉に当てはめられません。子猫・子犬から飼うと15〜20年の付き合いになります。動物を飼う際は、一度ご自分の経済状態などを考えてから迎え入れてください」
とコメントした。今回の保護猫について旭川市役所や市民ボランティアなどがFacebookやツイッターでも里親募集を呼びかけている。