口から食べて心身活性化 口腔ケアから姿勢まで食にこだわりを

10月24日(水)16時0分 NEWSポストセブン

医療と平行して“食べる“ことで病気回復も早まる(写真/アフロ)

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 高齢になると、大切な“食べる機能”はどんどん衰えるのだろうか。NPO法人「口から食べる幸せを守る会」理事・小山珠美さんはこういう。


「加齢により、皆一様に衰えるということではありません。ただ、どうしても若いときに比べて筋肉は減り、内臓の働きも弱くなって食べる量も減り、栄養状態も悪くなりがち。関節などの動きも悪くなって動きにくくなりますね。食べる機能も多くの筋肉に支えられていますから、自ずと噛んだりのみ込んだりする力が弱くなることは確か。歯周病や虫歯で歯を失うこともあります」


 よく問題になる“誤嚥”は、のどから食道へ続く経路と、空気が気管から肺へ流れ込む経路をコントロールする弁がうまく作動せずに、食べ物が気管の方へ行ってしまうこと。場合によっては命にもかかわる誤嚥性肺炎の原因にもなる。


 そばやラーメンなど、麺をすすり上げて食べる料理は、空気と食べ物、水分が一気に取り込まれるため、誤嚥しやすい。食べる機能が衰えた高齢者には少々高リスクなのだ。


「また病気が原因で食べる機能がままならなくなることもあります。噛む、のみ込むは脳からの指令による繊細な筋肉の動きに支えられていますから、脳梗塞や認知症など脳の機能に支障があると、体の器官が万全でも口が開かない、噛めない、のみ込めないなどが起こることがあります」


 ここで小山さんは、多くの人が勘違いしている認識を改めてほしいと強く訴える。


「加齢や病気で口から食べることが困難になってきたとき、今までは誤嚥性肺炎のリスクが高まるため胃ろうや点滴がすすめられてきました。上部消化管を使わずにすむように、胃に通した管や血管から、栄養を投与する方法です。もちろん、体に必要な栄養や水分は確保されますし、それが効果的な場合もあります。


 でも口から食べなくなれば、口や腕・手指の筋肉、それらを動かす脳も使わない、唾液も出ない。乾燥した口腔内では雑菌が増え、感染症のリスクもアップ。満足感がないので次への意欲もわきません。口から食べることで得られる重要な効果が、すべてなくなってしまうわけです。


 体は1週間使わなければ、10〜15%筋力が低下するといわれますが、高齢者などは急速に衰弱してしまいます。こういったリスクが明らかになり、“口から食べる”重要性が認識されるようになってきたのです」


 実際に小山さんの携わる病院でも、治療と並行して口から食べるリハビリを積極的に行ったことで、治療効果が高まり、回復が早まる事例が増えているという。


「病気を治すというのは、手術や薬だけの力ではないのです。回復するためには、体全体の総合的な力が必要。好きな食べ物を見て高揚し、噛んで味わってのみ込む一連の機能は、生きる上で欠かせない働きであることを知ってほしい。そしてもし親御さんが入院されたら、ぜひご家族から医療者に、食べるリハビリを積極的にお願いしてください」



◆行儀よりも食べやすさ 両ひじついて堂々と


 病気でなくても、高齢のために食べにくくなるのは仕方がないこと…と、少々なりゆき任せの家族や本人にも、“口から食べる”ことにこだわってほしいと言う小山さん。


「足腰の筋肉と同じように、しっかり使い続けることで鍛えることもできます。まずは口の中をきれいにしましょう。毎日の歯磨きなどはもちろん、定期的に歯科医を受診して虫歯や歯周病の治療、必要があれば義歯を整え、プロの口腔内クリーニングを続けると安心です」


 また食べるときの姿勢もとても重要だ。あごが引けるよう上半身をまっすぐにして、両足が床につくように座り、体がふらつくようならクッションなどを利用して、上半身を立てて安定させることが大切だという。


「両ひじを食卓につくと上半身がより安定するのでおすすめ。一見、行儀悪く見えますが、圧倒的に食べやすく、のみ込みやすくなるので、高齢者はぜひ堂々と(笑い)」


 口から食べることは、まさに生きることそのものだ。小山さんは、終末期についても言及する。


「それでも体が衰え切って、食べ物を受けつけなくなるときが来ます。いわゆる老衰。これは誰にも訪れることです。でもだからこそ、生きている間は“口から食べる”ことにこだわりたい。


 今、終末期医療に関する意思表示の問題が取り沙汰されていますが、私は自分の子供たちに、できるだけ最後まで“口から食べさせてほしい”と託しています。そのくらい大切なことだと、多くの人、家族に知ってほしいですね」


※女性セブン2018年11月1日号

NEWSポストセブン

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