チーズもとろける大熱論! ハンバーガー座談会 第2回 ハンバーガーショップに愛はあるのか? スタバとの比較で考える

10月28日(月)11時30分 マイナビニュース

ハンバーガー界をリードするトップ3人が集結したハンバーガー座談会。前回は、店の経営で大事なことはスタッフの「教育」であり、スタッフを教育する上で大切なのは「スピリッツを伝えること」であるとの話になった。では、「スピリッツ」とは一体、何なのだろうか。その「正体」に迫ってみた。

○フレッシュネスバーガーの「スピリッツ」とは

北浦明雄さん(ブラザーズ社長):栗原さんにお会いしたことがあるんです。フレッシュネス創業者の栗原幹雄さん。あの人って“作る人”じゃないですか? 何かを常に生み出している方だなって思ったんですけど、そういう精神はフレッシュネスの中で受け継がれているんですか?

船曵睦雄さん(フレッシュネスバーガー社長):お店としてはもちろん残しますし、会社として、創業時からの考え方っていうのはフレッシュネスの中に残っているんですけど、明確なカタチではないです。「フレッシュネスはこうあるべき」「こうありたい」みたいなところで残っていて。

北浦:あれでしたっけ? 好きな服を着て働いていいっていう?

船曵:そういう時期もありました。少ない店舗数でやっていた時には、スピリッツを浸透させることができていたので、それでよかったんですけど、100店舗になって同じようにやると、店によってはダサいTシャツを着たりして、「何か違うんだよな」ってことになって、それでユニフォームに戻したんですよ。店舗が拡大する中で、フレッシュネスのスタイルというものは変わってきてますね。
○「スタバ」がお手本? 従業員に愛される店にするために

関俊一郎さん(ファンゴー社長):そこをうまくやってるのは『スタバ』ですよね。スタバは上手です。アルバイトだけでやっていたり、バイト店長がいたり。だけど、彼らの「スタバ愛」ってすごくて、勤続期間もみんな長いんですよ。それとエプロンがね、「黒帯・白帯」じゃないんですけど、若干の格付けがあって。これが細かく分かれてるとみんな疲れちゃうんだけど、大まかな感じで。何かこう、みんな「仲間」なんですよね。上とか下とかじゃない。

関:「シアトル」という「おおもと」が向こうにあって。みんなが憧れを抱いている。一方で、シアトルでは常にいろんな発信をしていて、「リザーブロースタリー」もそうですよね。行かれたことあります? すっごいですよ。もう、要塞のようです。全てにおいて、すごすぎる。ローストもすごいし、カウンターもそうだし、働いている人のエネルギッシュな感じもそうだし、建物も、内装も外装も全部そうなんですけど、僕ら個人じゃとてもできないぐらいの投資をしていて……。そういう「情報」が先に伝わってくると、「ザワザワ」するワケですよ。そういう意味でも、スピリッツがうまく伝わってるなって。

○ハンバーガーが国民食になるには

船曵:本当はね、理想としては、フレッシュネスはハンバーガー業界のスタバみたいな存在になりたいなと思いますね。

コーヒーの世界には、いろんなプレイヤーさんがいて、業界を盛り上げていますよね。1店舗、2店舗でやっている「本当に尖がってる」店もあれば、チェーン店もあって。スタバは、その真ん中くらいです。ブランドは立っているけど、もっとおいしいロースタリーカフェは国内にもいっぱいあります。でも、そこってマニアしか行かない世界なんです。

それが、スタバがあることで、お客様が自分で豆を挽いてみようとか、淹れてみようとか思うわけじゃないですか。スタバをきっかけにロースタリーカフェへ行って、シングルビーンズのコーヒーを飲んで、新しいコーヒーのカタチを知るとか。こんなふうに、それぞれの店の「役割」というものがあって、ファストフード系から中間業態、職人系みたいなものまで、いろいろな店舗があることで、業界が育っていっているのかなと思います。

船曵:ですから僕は、結果的に、ハンバーガー業界は「悪くない」と思っています。マクドナルドがあるおかげで、多くの方が子どもの頃からハンバーガーに慣れ親んでいるというのは、ハンバーガー業界にとって、すばらしいことですし。そこへ今、いろんなプレイヤーが出てきていて、結果、お客様の舌も肥えていっているんだと思います。今後、ハンバーガー店が急増するとは思わないですけど、衰退するとも僕は思わないですね。

関:さっき話があった「そば」(本連載の第1回で蕎麦屋の話題が出た)がいい例ですね。立ち食いそばみたいなすごく安いところもあれば、高級そば屋もあって、我々が食べに行くのは1,000円ちょっとくらいの、街にいっぱいある普通のそば屋なんですよね。その立ち食いそばと高級そば屋の「間」の、層の厚い食べ物が「国民食」じゃないかと僕は思っていて。

立ち食いそばだけだったら、そばの良さって伝わらないし、高級そばだけだと高い。その両極端だと、お爺ちゃんお婆ちゃんから小さな子どもまで、「三世代」が食べられない。つまり、三世代が食べられる「中間層」の店が増えていくことが、国民食になること。ハンバーガーが国民食になるには、グルメからファストフードまである、その「間」の層の店が一番、充実していることが大事なんじゃないかな。
○「聖地」があるということ

——ハンバーガーが国民食になるための条件、それは、「中間層」の店が充実すること。まさにフレッシュネスバーガーは、その「中間層」の店を目指している。というところで、話は再びフレッシュネス1号店がある「富ヶ谷」に……

松原好秀(ハンバーガー探求家):スタバのような、「本部はやっぱり違うなぁ」と思わせる、何かそういう工夫を皆さんなさってますか?

関:富ヶ谷のフレッシュネス1号店は、僕からすると「聖地」ですけどね。

船曵:あの店はやっぱり潰せないし、今も話してるのは、一回ちょっと、我々の今の「180店舗」から「外して」考えようかなと。どうしても、180店舗のチェーンオペレーションに落としこんでいくと、当時の良さを出せないんですよね。別に、179店舗が純オペレーションで、1店舗だけハンドメイドでもいいじゃないですか。それを180分の1で考えちゃうと、あの良さが中途半端なカタチになってしまうんではないか、と考えています。

関:一方でね、皆さんも直面してると思うんですけど、最初、僕が店を始めた頃って20代だったから、自分も現場に立ってたし、スタッフ達って「バディ」なんですよね。「仲間」です。でも、今じゃもう、新卒の面接っていうと、自分の子どもみたいな年代ですよ。親の年齢を聞くと、自分よりはるかに年下だったりして。すると、僕らだって、親の世代が「スピリッツ」を語ってもウザいだけじゃないですか? だから、伝え方を変えて行かなきゃいけないなと、すごく思いますよね。

船曵:「1号店がなくなる」っていうのは、まさにそういったことで。やっぱり、規模も変わって環境も変わったら、1号店で成功していたやり方が、もう通用しなくなっていて、それを無理やりチェーンのやり方でやると、もう合わないんですよ。場所も合わない。大きさも合わない。今、フレッシュネスの主軸ってフードコートとかなんですよね。やっぱり商売ですから、チェーンで広げていく必要性もある中で、ビジネスモデルの作り方については、今はそこに軸を置いてます。

船曵:でも、やはり、昔の良さっていうのは通常の店舗や路面店にあって、たどっていったら富ヶ谷の1号店に行き着くんですけど、全てに合うものを作ったら多分、全て死んじゃうと思うんです。

放って置いたら1号店は潰れるかも知れない。いま行っても、創業時の良さはすっごい「ない」と思います。 だって、「全国でこんなプレゼントキャンペーンをやっています」っていうポスターとかが普通に貼ってあって、QRコードがそのポスターに付いていたりするワケですよ。チェーンだから。そんなのは、当初のスピリッツではないじゃないですか? だから、合わないですよね。

北浦:変化し続けますもんね。
○チェーン展開って、実際どうなんですか?

松原:スピリッツを伝えていけるかという話になって、ずっと気になっているのは、結局のところ、「チェーン展開はありかなしか」というところなんですが、いかがでしょう?

船曵:是か非かというと、フレッシュネスはチェーン展開の道を「選んだ」んですよね。創業者の時代、もう20年くらい前に、創業してグイッと伸びたあと、「さらに50店、100店と伸ばそう」と地方に出して、店舗数を増やしながら、Tシャツ問題なんかも起きる中で、その道を進んで行きました。

どっちかだと思いますよ。10店舗、20店舗で止めて創業時のコンセプトを残した業態にするのか、あるいは100店舗、200店舗と増やしてフランチャイズ経営も取り入れていくのか。どちらが正しいというワケでもなく、方向を決めたら、そのやり方でやるということだと思います。

船曵:まさに今、コンプライアンスも含め、これまで以上にそうした管理のレベルを上げていかなきゃいけないし、でも、正しい方向にはきていると思ってます。

200店規模になってきた時のマネジメント、管理の仕方って、全てに目を配ることができないので、いかにルール化して、厳しくやるかという話になってきます。それができないと食中毒も起きやすいし、従業員の不正も起きやすい。チェーンでやっていく道を選んだ以上は、そういう管理面というのも、しっかりやらなきゃいけないと思います。

関:怖いですよね、最近は。アルバイト店員のTwitter投稿とか——

北浦:大きくなればなるほど、やっぱり「守っちゃう」というかね。1店舗だったらけっこう攻められるんだけど、どんどん増えていくことで、いろんなものを守っていかなければならなくなりますね。

「スタバ」のように、楽しくスピリッツを伝えている例もあれば、創業のスピリッツが現状とまるで合わなくなってしまう例もある。1店舗からスタートした小さな店が大きく成長していく中、創業のスピリッツの何を伝え、何を残すのか——。「大きくなることは成功の証。企業の理念や考え方をどれだけ貫けるかが、成功への別れ道になるんだろうと思います」。後日、ブラザーズの北浦社長は語っていた。

次回は、その北浦社長に「ブラザーズのチェーン展開、ありやなしや」を直撃する。どうぞ、お楽しみに!

○著者情報:松原好秀(マツバラ・ヨシヒデ)
ハンバーガー探求家。評論家。2014年に『ザ・バーガーマップ東京』(幹書房)出版。ハンバーガー関連の企画でテレビ&ラジオの出演多数。映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(2017)の公開記念キャンペーンも担当

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