11年前の通り魔殺人、別件で「出所間際」の受刑者を逮捕 刑期や量刑はどうなる?

10月30日(月)10時9分 弁護士ドットコム

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2006年9月に川崎市宮前区のトンネルで、アルバイトから帰宅中の黒沼由理さん(当時27)が刃物で殺害された通り魔事件で、神奈川県警は10月10日、別の通り魔事件で服役中の男性(37)を殺人の疑いで逮捕した。


報道によると、容疑者の男性は、この事件から半年ほどがたった2007年4月、同じ宮前区内の路上で、会社員女性(当時40)を刺して重傷を負わせる通り魔事件を起こしている。殺人未遂で懲役10年の実刑判決を受けており、来年1月で刑期満了になるところだった。


神奈川県警は、事件当時からこの男性をマーク。男性は昨年1月から、県警の捜査員に対し、犯行を自白しており、県警が裏付けを進めていたという。


服役中の受刑者が、新たに別件で逮捕されたとき、刑期の進み方はどのようになるのだろうか。また、もし新しい事件で起訴され、有罪判決が言い渡された場合、量刑はどのように判断されるのだろうか。清水伸賢弁護士に聞いた。


●取り調べ中、刑期は消化される?

ーー服役中に別件で逮捕されても、服役中の刑期は消化されていくの?


服役中に別件で逮捕勾留された場合、受刑者の地位と、未決拘禁者の地位が併存することになります。


この場合、法律上は、未決の者としての地位を損なわない限度で、かつその拘禁の期間を考慮して可能な範囲で、矯正施設(刑務所など)処遇として作業を行わせる等するとされています(「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」109条1項)。


このため、刑務所内で、弁護人との接見など、防御権の行使を認められながら捜査を受ける一方で、受刑者としても服役が継続するということはあります。


ーーということは、逮捕されても服役期間は減っていく?


ただ、別件が重大事件であるなど、服役中の矯正処遇を継続することが困難な場合などには、服役中の懲役刑の執行が停止されて、警察署の留置施設、あるいは拘置所に場所を移されることもあります。この場合、執行が停止されていますので、その間は服役中の刑期には算入されないことになります。


ーーその場合、もしも新しい事件について無罪になった場合、さかのぼって刑期が消化される?


警察署の留置施設や拘置所に移送され、執行が停止されていた場合でも、服役中の罪に関して矯正処遇に服していた訳ではないため、服役中の刑期に当然に換算されるものではありません。刑事補償(賠償金など)の問題になると思われます。


●「無期懲役」になった場合、仮出所の起算日はどこから?

ーー逆に新しい事件で有罪になった場合、量刑は重くなる?


裁判が確定する前に犯した別の罪がある場合、刑法45条後段で、ある罪(たとえば、今回なら服役する理由になった事件)について禁錮以上の刑に処する確定裁判があった時は、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪(新しい罪)とに限り、併合罪とするとされています(事後的併合罪といいます)。


併合罪とされると、どちらかの罪が死刑の場合は他の罪は科さず、またどちらかの罪が無期懲役であった場合には、罰金、科料、没収以外の他の刑は科さないとされます(刑法46条)。


どちらも有期懲役である場合、2つの罪の法定刑の長期の合計期間と、最も重い罪の長期の1.5倍との間の短い方を長期として、量刑が決められます。


事後的併合罪の場合には、新しい事案について更に判決が出されることになっていますので(刑法50条)、判決がなされます。


ーー今回の事件の場合、仮に有罪になったら量刑はどうなる?


殺人罪の場合の法定刑は、死刑、または無期もしくは5年以上の懲役です。ただし、今回の事件は起訴されれば、事後的併合罪として扱われるものの、証拠関係や動機面などが不明であるため、どの程度の量刑が考えられるかは一概には言えません。


ーー無期懲役の場合、30年ほど服役すれば、仮釈放になる可能性が生じる。もし無期懲役になったら、起算日はどこから?


判決確定前の罪の量刑では、裁判所は併合罪関係にあることについて配慮して量刑を判断することが一般的です。ただ配慮はしますが、さらに別途判決がなされることになるため、その判決で言い渡された刑の起算年は、当該判決が確定して執行が始まった時ということになります。


そのため、無期懲役の判決が出るとすれば、既に服役中という事情も加味した上であえて判決が出されているということになり、起算年自体は、無期懲役での刑の執行が始まってからになります。なお、上記の併合罪の規定から、別件で無期懲役とされた際に有期懲役の刑期が残っていた場合には、検察官の指揮により有期懲役の執行は停止する運用がされています。


ーーなお、報道によると男性は犯行を認めているが、説明性に一貫性がないことなどから、10月27日〜来年1月29日までの3か月間、精神鑑定のため鑑定留置されることになった。


(弁護士ドットコムニュース)


【取材協力弁護士】
清水 伸賢(しみず・のぶかた)弁護士
企業法務から交通事故などの一般民事事件、遺産分割などの家事事件まで幅広く取り扱うとともに、裁判員裁判を中心とした刑事弁護にも精力的に取り組む。日弁連刑事弁護センター委員、大阪弁護士会刑事弁護委員会担当副委員長(裁判員部会)。
事務所名:WILL法律事務所
事務所URL:http://www.will-law.com

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