意識と肉体は分離可能! 臨死体験(NDE)の“共通パターン”が示す「死後の世界」とは?

2022年10月29日(土)7時0分 tocana

 入院中に心肺停止をした患者の10%が報告している臨死体験(NDE)だが、本当に死後の世界はあるのか、それとも科学的に説明ができる生理現象なのだろうか——。


※ こちらの記事は2020年10月4日の記事を再掲しています。


■NDE体験者が語る似通ったストーリー


 心臓発作、鈍的外傷、ショック、窒息などの生命を脅かす経験によって引き起こされる臨死体験(NDE)だが、死後の世界を垣間見る神秘的な体験であるのか、それとも死の瀬戸際で訪れる独特な生理的現象による“幻覚”であるのか、今のところはまだ理解は進んでいない。


 NDEを報告する者の75%は、できればそのまま留まっていたかったというポジティブな体験であったと語り、わずかではあるがネガティブな体験であったと報告する者もいる。そしてポジティブなNDE体験者は似通ったパターンの体験談を語っている。


 体験談で暗いトンネルを通過して出口に明るい光を見たという描写はきわめて一般的である。また身体を離れて天井から自分を見下ろしていたり、意識だけが宇宙へ旅立ったりすることなどもよく語られている。さらに存命、死別にかかわらず愛する人に出会ったり、または天使などの聖なる存在、さらにはイエスやモーセなどの神や聖人にさえ出会うことが頻繁に報告されている。体験者は無条件の愛に包まれ、宇宙と深く結びついていると感じているのだ。


 これまでの人生が走馬灯のようによみがえった後、知恵と愛を醸成して成長するために何をどのように努力したのかを何らかの“存在”から尋ねられたこともよく語られている。体験者は心地よいこの世界にずっと滞在したいと願うものの、自分の体に戻らなければならないと言われて死の淵から生還している。興味深いことに、無神論者も宗教人と同じくらいの割合でNDEを有しているという。そして少なくない人々が、NDEは死後の世界の存在を示すものであると信じている。


 NDEは新しい現象ではなく、レポートは中世にまでさかのぼる。たとえば、アイルランド出身のイギリス海軍少将で水路学の第一人者であったフランシス・ボーフォート氏は、1791年に溺死寸前で体験したNDEを鮮やかな記憶でもって報告している。


 NDEは、人間の意識(マインド)が人間の脳から独立して存在できる可能性を高めている。体験者はたとえば、手術室の中の天井近くで浮いていて、蘇生に必死に取り組んでいる医師や看護師を見下ろしたと報告している。その後、これらの患者は、この時間内に彼らが見聞きしたことを正確に報告しているのだ。ということは意識と肉体は分離できるものであり、臨死体験は体外離脱から始まるということになるのだろうか。



■NDEは科学で説明できるのか


 1977年に米・シアトルの病院で心停止とNDEを体験したマリアさんの興味深いケースがある。


 死の淵からの生還後の翌日、彼女はソーシャルワーカーに昨日の蘇生中に、意識が身体を離れて浮き上がり、病室の窓から外に出たと話したのである。


 その後、意識は再びマリアさんの身体に戻っていったのだが、窓の外を出ている間、建物の3階の窓の桟(さん)にテニスシューズが置かれているのを目撃したと報告した。


 話を聞いたソーシャルワーカーが気になってその3階に行ってみると、確かに窓辺にテニスシューズが置かれていたのである。蘇生を行っていた病室からは当然、3階の窓辺など見えるはずがない。


 NDEにおいてこのような報告は枚挙に暇がないことから、心肺蘇生の専門家であるサム・パーニア教授などの研究チームでは、オペ室にいる者には見えない部屋の高い場所にメッセージカードを配置し、もしこの現場で蘇生に成功し、なおかつNDEを報告する患者がいた場合、肉体を離れた意識がこのカードのメッセージを見たかどうか、もし見たのならば何と書かれていたのかを質問することを定めた。しかし今のところこのメッセージを見たという報告はない。


 しかしこの一方で、NDEが完全に生理学的に説明ができるという科学的な研究も進んでいる。米・カリフォルニア工科大学の神経学者クリストフ・コッホ教授は、この6月に「Scientific American」に寄稿した記事で、NDEが心身のつながりを科学的に研究する格好の機会であるとして、これまでの知見を要約して紹介している。


 この科学的な仮説は、NDEで死の淵をさまよい酸素レベルが低下する一方で、二酸化炭素レベルが上昇すると脳活動に変化か訪れるというものである。前出の「暗いトンネルを抜けて眩い光を見る」というNDEのワンシーンだが、眼球の網膜に供給される酸素レベルが低下することで周辺からゆっくり酸欠が始まり、徐々に中心に向かうことでトンネル的なビジョンを生成すると説明できるという。


 そして意識の体外離脱はたとえほんのわずかであっても、脳の特定の部分を刺激することによってシミュレートできるということだ。飛行中に高レベルのGによって気絶(ブラックアウト)した後、体外離脱体験をした宇宙飛行士の報告もある。また完全に真っ暗の部屋の中で塩分濃度の高い水で満たされたプールに浸かって浮いていると、身体感覚にズレが生じてくるという研究結果もある。


 こうした科学的な研究があるにもかかわらず、意識が肉体から離脱するという見解はまだ明確には除外されてはいない。前出のパーニア教授のテストも該当する患者はまだまだ極少数である。依然として謎の多いNDEについて今後画期的な知見がもたらされることを期待したい。


参考:「The Irish Times」、「Scientific American」、ほか

tocana

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