札幌を「奥地」と呼ぶ函館市民 強烈な対抗心とプライド持つ

11月1日(火)7時0分 NEWSポストセブン

道内では熱い戦いが繰り広げられている(札幌市時計台)

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『週刊ポスト』の名物企画「○○ぎらい」シリーズでは、各都市の嫌われる理由を紹介し、読者から多くの反響をいただいた。これまでに横浜や神戸など様々な土地にまつわる話題を紹介してきたが、その中で浮かび上がってきたのは、近隣の人ほど敏感に反応する“近親憎悪”の激しさだ。たとえば北海道の札幌市と函館市。人口195万人の日本第5の都市で、北海道庁が置かれ、冬季五輪も開催された札幌。「函館で相手になるの?」と思う人も多いだろうが、函館市民には札幌への強烈な対抗心とプライドがある。


「祖父の病状が悪化して『札幌の病院に移ったらどうか』と医師に勧められたが、『札幌はイヤ! 東京の病院を紹介してくれ』と怒鳴っていた。祖父は『函館は札幌より東京に近い』が口癖だった」(函館市民・女性45歳)


「地元の高校で優秀な生徒は札幌にある北海道大学には行かず、東京の大学に進学する」(函館市民・男性35歳)


 こうした函館人の自負は、その歴史に由来するようだ。


「函館の歴史は550年以上。札幌はたかだか100年。函館の古い人は札幌を・奥地・と呼んでいます」


 そう語るのは、函館出身の文筆家で『函館人』(言視舎刊)の著者・中村嘉人氏である。


「室町時代に津軽の豪族・河野政通がウスケシ(函館の古名)に館を建て、その形が箱に似ていることから『箱館』と呼ばれるようになった。江戸時代に幕府の直轄地となり、箱館に奉行所が置かれ、その後、札幌の開拓も進んだんです」


 歴史的な観光スポットでいえば、函館の五稜郭に対して、札幌は赤煉瓦の北海道庁と時計台。たしかにやや函館に分がありそうにも思えるが……。


 さらに函館は全国1000市区町村の「地域ブランド調査」で3年連続で「最も魅力的な都市」に輝いている。札幌に対してライバル心を持つどころか、どこか「上から目線」なのも頷けなくはない。


 しかしこの調査では、札幌も堂々3位にランクイン。さらに昨年には、函館市民を驚愕させる事件が起きた。


 これまで日本の「三大夜景都市」といえば神戸、長崎、函館だったが、夜景観光コンベンション・ビューローなどが主催する2015年の「夜景サミット」で、函館ではなく札幌が「新三大夜景都市」に選ばれたのだ。


「函館山からの夜景は独特の地形と海とのコントラストがキレイ。でも、札幌の藻岩山から見る夜景は、光量が多いため函館より輝いて見えます」(旅行会社スタッフ)


 いったん逆襲に転じると、物量にモノをいわせる札幌側の攻勢は手厳しい。


「札幌にはススキノがあるけど、函館の繁華街ってどこ?」(札幌市民・男性52歳)


「函館は人口も面積も旭川より下だし相手にならない」(札幌市民・女性53歳)


 さらにはこんな声も。


「函館の人は『くじら汁(※)がないと正月を迎えた気がしない』というが、札幌では聞いたことがない。東北文化が色濃いんでしょう。方言も津軽弁に近いと思う」(札幌市民・男性60歳)


【※味噌などで味付けされたくじらの塩漬けが入った汁。主に東北地方で食べられている】


 その地域性からか、函館にはユニークな食文化が根付いている。


 ローカルコンビニストア『ハセガワストア』の人気メニュー『やきとり弁当』は、鶏肉ではなく豚肉がご飯の上に乗る。道南地区で焼き鳥といえば豚肉なんだとか。ハンバーガーチェーン『ラッキーピエロ』のメニューも鶏のから揚げを挟んだ『チャイニーズチキンバーガー』や『くじら味噌かつばーがー』など独特だ。


 民俗学者で札幌国際大学教授の大月隆寛氏が言う。


「北海道でほぼ唯一、人口が増え続けているのが札幌圏で、とくに若い女性の流入人口が多いのが特徴です。一方、若い人たちによると、函館は『ヤンキー密度が高い』街。漁業関連で栄えてきた港町という風土的な背景もあるので、よくも悪くも、札幌に比べて荒っぽい印象がありますね」


 北海道新幹線が札幌まで延伸すれば、「2つの都市の“距離”が一気に縮まる」と大月氏は言うが、この溝は埋まるのか。


※週刊ポスト2016年11月11日号

NEWSポストセブン

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