世界の男女格差ランキング111位。「女性が輝かない」日本の評価ポイントを読み解く。

11月2日(水)21時0分 messy

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 世界経済フォーラムが『2016年度男女格差報告(The Global Gender Gap Report 2016)』を発表。日本は144ヵ国中111位と、前年度の101位(145カ国中)より10位も順位を落とした。主要先進国7カ国(G7)の中ではぶっちぎりの最下位である。

 「すべての女性が輝く社会」を整地せんとする内閣府男女共同参画社会局は、昨年まで「本調査のランキング(2014年は104位/142カ国中、2013年度は105位/136カ国)にて、じわじわ順位を上げている」状況を女性の活躍促進政策の“成果”としてアピールしてきた。が、結局のところ下位層である事実は変わらず、さらにランクを引き下げる事態を招いたのだから大した“成果”だ。

 この結果を受け、男女共同参画社会の実現を心待ちにしている当方は、率直に「自分が想像している以上に、一筋縄ではいかない」と感じた。街場のご意見を拝聴、拝読してみると、職場の待遇や就学・就業にまつわる男女格差に実際に悩まされている方々は、概ね「苦しい現実が投影された数字」「だからこそ早急な改善を」とのご意見を“当事者”として述べられている。

 また、社会参画上の具体的な問題点を問題足らしめる諸悪の根源として、日本全体に根強く残る男性優位社会、男女不平等の精神性、男尊女卑思想を指摘する声も多く聞く。同時に、「いやいや、男女には格差があって当然」「女性の社会進出自体に無理がある」等、諸悪の根源説を裏付ける発言も散見された。が、ちょっと待て。

 『男女格差報告』は、世界経済フォーラムが、調査対象国の『経済』『教育』『政治』『保健』の4分野について、性別による参加機会の不平等や所得等の格差のあるなしを指数化したランキングである。結果的に、日本の男女格差が世界水準より大幅に劣る事実が明るみに出たわけだが、この調査の査定ポイントや評価の実状ではなく、個々の主観による「男女平等」に対する感情論や主義主張を述べるために、本ランキングを表層的に取り沙汰している意見が多いと、個人的には感じた。

 そこで、本稿では『男女格差報告』の評価ポイントの紹介を含めて、日本のどのような現状が低評価を生み出したのか、内状を紐解いてみたい。

男性優位社会と男女共同参画社会の葛藤

 本年度の4分野における日本の各順位は以下。

●経済活動への参加と機会 118位
●教育 76位
●政治への参加 103位
●健康と生存率 40位

 査定のソースは、国際労働機関や国連開発計画、世界保健機構等の提供するデータである。男女完全不平等を0、完全平等を1とする数値を統合し、指数を概算する。

 ちなみに国連開発計画(UNDP)は、男女不平等による人間開発の可能性の損失を示す『ジェンダー不平等指数』(Gender Inequality Index)を独自に調査。『保健』『エンパワーメント』『労働市場』の3分野が査定対象となり、2014年度のランキング発表で、日本は155カ国中26位と評価された。同年の世界経済フォーラムの『男女格差報告』では142カ国中104位である。この差は何を表しているのか。

 まず、UNDPの『ジェンダー不平等指数』は、長寿大国であり、妊産婦の死亡率が低い日本の医療制度(『保健』)を高く評価している。女性の活躍および自立を応援する政府の姿勢(『エンパワーメント』)も、男女雇用機会均等法等(『労働市場』)についても、「日本政府は制度を“整えて”いる」。

 そもそも内閣府が男女共同参画社会基本法を定めたのは1999年。第1次、第2次男女共同参画基本計画を経て、2010年には第3次計画の取り組みにより「2020年までに指導的地位の女性割合を30%にする」との指針が閣議決定された。その他、雇用機会均等や子育て支援等、女性の活躍促進のための制度やガイドラインが刷新される中、それらを実際に運用する立場である自治体の行政、各企業の上層部は、しかし、政府の指針に迅速に適応できない。

 なにしろ現場は、官僚も管理的職業従事者も圧倒的に男性が多い男性優位社会。“制度”に「常態を変えろ」と促されたところで、現場に根付いた体質や各々の“精神性”はそう簡単には順応しない。「理解に基づく対応」がなかなか浸透しない社会で、当の女性就業者や制度利用者が、せっかくの制度を有効利用する機会を逃す。当然ながら、指針の示す目標値にも到達できない。このような日本の大義名分(『ジェンダー不平等指数』の査定ポイント)と内実のギャップを、『男女格差指数』はきっちり査定に反映させ、低評価を下したわけである。

女性がキャリアアップできない国

 さて。詳細を考察していこう。4分野のうち最も順位が高い『保健』は、健康と生存率を差す。寿命が長い日本人(特に女性)だが、自殺率は高く(OECD平均)、メンタルヘルス面においても、超過労働や同調圧力社会のストレス疾患に悩む者が多い現実は世界的に知られるところである。が、健康と生存にまつわる保健制度を利用する機会自体は概ね男女平等である。

 他方、最低評価をくだされた分野が『経済』だ。主に雇用形態(労働力、推定勤労所得、管理職従事者、専門職・技術者)の男女比を調査し、経済活動への参加と機会の格差を指数化。雇用形態の実状については、以下、内閣府男女共同参画社会局の発表しているデータ(2014年度)をご参照いただきたい。

▼雇用者(役員を除く)の雇用形態別構成割合の推移(男女別)

▼年齢階級別非正規雇用者の割合の推移(男女別)

 男性の正規雇用率に対し、女性は低い。かねてより、能力主義的観点や男性社会の構造への適応力、偏見等が女性の正規雇用機会を狭めて来た。昨年、日本総研が行った『東京圏で暮らす高学歴女性の働き方等に関するアンケート調査結果(報告)』によると、大学を卒業した高学歴女性の正規雇用は半数程度。全国の教育別に見た就業形態データは下記。男女比の差が見て取れる。

▼教育(卒業)別に見た就業者の就業形態(従業員の地位および雇用形態)

 また、前出の日本総研アンケートは「新卒で正規雇用の職に就いた女性のうち、結婚・出産した女性の約8割が職を離れ、うち約6割が専業主婦へと移行」、「正規雇用として働くことと子どもを持つことはトレード・オフの関係」と説明する。出産・育児の長期休業や勤務時間の制限等が、女性の昇進や管理職登用をも妨げる一因となる。女性が“結婚・出産”と“仕事・キャリア”、どちらか一方を選択した際、もう一方を捨てざるを得ない状況など昔話だと思っていたが、まだまだ両立ままならない現状は続く。

 しかし、内閣府の提唱する「女性の輝く社会」は、出産も労働も推奨している。ならば、女性の雇用機会増加、子育て支援、出産で一時離職しても復職のリスクにならない制度設計を一刻も早く実現、運用させるべきだ。実際問題として、婚姻関係にある男女の“共働き”世帯数は、現在、“雇用者である夫と専業主婦の妻”で構成される世帯数を大きく上回る。

▼共働き等世帯数の推移

 約30年前、夫と専業主婦のカップルは1000万世帯を越え、共働き世帯はわずか600万世帯と大差が開いていた。2014年時点では、前者720万世帯、後者1077万世帯と、見事なX逆転劇を披露している。その主な原因が、女性の社会進出や自立支援の成功のみを差すようならば、本レポートの残念な結果は招かない。男女ともに低所得であり、労働力として確かに見込まれているはずの女性にとっても、肝心の労働条件が芳しくないと評価されたからこその順位である。

 特に、日本は管理職の男女ギャップが著しい。要職に就く人間は圧倒的に男性であり、諸外国と比較して“女性管理職の少なさ”が突出している。以下データのグラフを見れば、いかに日本の女性管理職の人数が少ないか、一目瞭然のうちに見て取れる。

▼就業者および管理的職業従事者に占める女性割合

 日本の女性たちは働いているのだが、賃金が低い・管理職ポジションにつけない。ゆえにジェンダー・ギャップ解消に至らない。その原因は、「女性に要職を任せられない」とする前時代的な男性社会のエッセンスも多分にあるだろうし、管理職のような責任を伴うポストに就こうと思わない女性もいるからだろう。が、結果的に女性の管理職登用数やキャリアアップの実績が圧倒的に少ない実状に変わりはない。

 ちなみに、アジア勢の中ではフィリピンがダントツの勢い(『男女格差報告』では7位)。女性の社会進出を推進するフィリピンは、女性大統領輩出の実績もあれば、義務教育期間を12年に変更する(2013年)取り組み等にも定評がある。参考までに、関連記事のリンクをここにご紹介したい。

▼週刊ABROADERS 「アジアで最も男女平等」なフィリピンで、女性がのびのびと働ける理由。

▼日本企業グローバルビジネスサポートLAPITA(JTB)「【フィリピンコラム】フィリピンの女性の社会進出について。

実社会にコンタクトするための教育

 『経済』の評価の中には、専門・技術者の男女比も含まれる。その点、『教育』と合わせて考えたい。

 『教育』の査定基準は、主に識字率や就学率。日本人は義務教育を通じて識字や読解力、計算能力には定評がある。経済協力開発機構(OECD)が世界の15歳を対象に、3年毎に行う学習到達度調査(PISA)では、『読解力』『数学的リテラシー』『科学的リテラシー』の3分野を考慮。前回の2012年度は、65カ国中、『読解力』が4位、『数学的リテラシー』が7位、『科学的リテラシー』は4位。

 学力水準は比較的高く、就学率も上昇している。また、学校教育は「教育の機会を男女平等に与える」との原則のうえに成り立つので、表立っての男女不平等は存在しないわけだが、学校や学科の選択や教員の指導等にジェンダー・ギャップが反映されることは事実である。

▼女子の大学進学率は上昇傾向

 世界経済フォーラムは本年度の日本の結果について「教育参加などで改善が見られた」と評価する。が「専門的・技術的労働者の男女比率が著しく拡大している」と続ける。専門的・技術的労働者は圧倒的に男性が多く、女性が少ないということは、女性の就業の選択肢および間口が狭められている。学校で平等に学んだ専門知識や技術も、社会で活かす際には歴然とした男女格差が生じ、就業分野、所得、将来の可能性ともども圧縮されてしまう。つまり、学力はさておき、社会にコンタクトするための教育が現場で機能していないのだ。

 この点、本サイトで女子教育についてのコラムを書かれているスペシャリスト、畠山勝太氏(NPO法人サルタック理事・国連児童基金(ユニセフ)マラウイ事務所Education Specialist)の記事をご参考願いたい。文部科学省は「女性の就学率は上昇している」と発表しているが、畠山氏は「日本の大学・大学院における女性の進学率は、先進国で最低水準」とご指摘。以下、詳細なデータと共に、日本の女子教育の遅れや所得低下について、当方の素人考えよりも実質的に役に立つ情報が盛りだくさんなので、是非、ご一読いただきたい。

 最後に、『経済活動への参加と機会』と同じく評価の低い『政治への参加』だが、歴代の内閣総理大臣が全員男性、女性議員の人数や内閣入閣率等、男女に与えられた機会が極端に平等でないことは火を見るより明らかだ。国会の女性議員比率の国際比較統計によると、2016年7月の日本の順位は151である。

 世界に映る日本は、男性社会国家である。しかし、小池百合子氏が東京都知事に就任し、野党の民進党代表として蓮舫氏が選出された今秋の政治展開は、来年のランキングアップに貢献するのではないかと個人的には期待する。が、議員数そのものの大幅な増加が見込めないかぎり、評価はあがらないとも考える。

男女共同参画社会は「男女平等」ではない

 以上、『男女格差報告』の評価ポイントをざっくり紐解いてみた。『経済』以下、主に社会参画について調査する本レポートに対し、その取り組みを行う内閣府男女共同参画社会局を都度、引き合いに出して来たが、世界基準にはるかに遅れを取っている事実はご覧の通りだ。

 本レポートは、政治の舞台に男女を平等に配し、男女で職業を分けず、教育も健康も性別による格差も設けることなく、機会を均一に与える指針を根幹とする。今の日本は、残念ながらその実現には至らない。世界に評価されずとも、国民が幸福に暮らしているならば「たかがデータ」と一蹴するのも一興だ。が、日本の制度の在り方や体質に、実際に苦しめられている女性たちは多勢いるのだ。

 政府の提唱する『男女共同参画社会』は、男女格差を解消する国際水準の人道的ガイドラインであると同時に、日本の経済や生活水準を安定的に引き上げるための重要策である。現実問題として「そうしなければ立ち行かない」以上、女性の活躍促進は現代社会にとって必要不可欠だ。

 しかし、男女不平等のうえに成り立つ男性優位社会を前に、「そもそも男女は別の生き物。男には男の役割があり、女には女の役割がある」と、性別役割分担論を唱える者は少なくない。ゆえに葛藤が生じているわけだが、この性別役割分担意識が浸透しきったままでは、社会の男女格差は決して解消されない。男女共同参画社会反対派の中には、本レポート結果を「女性の社会参画が、結果的に無理だった証拠。やはり女性は社会に進出させるべきではない」と論じる方もいるが、「女性が社会に参画しなければ立ち行かない」、それが日本の現状である以上、「現実を見ろ」としか言いようがない。

 個々の主義主張や主観の女性像の都合に、全女性を付き合わせようとする観点そのものが“女性蔑視”。「そういう人がいるからこその世界男女格差111位」である事実を前に、「男VS女の小競り合い」を展開する論調にも、私は賛同しない。本件の世界基準より見れば「日本人の男女は諸共、(本レポートの指標では)111位」。身内で喧嘩している場合ではないだろう。

 今、必要なものは、時代や情報に“刷り込まれた”主観と、社会参画活動を冷静に切り離し、社会の焦点に向かって協力し合う視点だ。

 もとより『男女“共同”参画社会』は、『男女“平等”参画社会』ではない。「男女平等」を目指す指針であるならば、「2020年までに指導的地位の女性割合を30%にする」などとわざわざ世界水準に満たない30%の低数値を掲げたりはしない。50%ではない以上、どう考えても男女不平等だが、私自身はこの数字を「現実的で妥当」と読む。なぜなら、現状の『男女“共同”参画社会』の実現も遅々としているくらいなのだから、一足飛びに『男女“平等”参画社会』を提唱したところで、肝心の現場や国民が対応できないからだ。つまり、日本国民の意識を“不平等”より“平等”に向かわせるためには、まず“共同”のステップを用意する必要がある。ゆえに『男女“共同”参画社会』というわけだ。

 現在は“共同”の過渡期として、実生活や精神性等、様々な葛藤およびせめぎ合いが起こる。政府や企業、学校教育等の現場には、迅速な改善を要請するとして。我々国民は、このレポートが具に露呈してくれた結果を冷静に受け止め、「これからどうすれば日本の男女格差を解消できるのか」、「解消するために、自分は何をすればいいのか」「政府には、具体的にどんなポイントを要請するべきか」を、老若男女ともども、完全協力体制で議論することが肝要であると、私は考える。

 「それが出来れば、こんな結果は出ない」と仰る方には、「こんな結果を二度と出さないためにも、やるしかない」とお伝え申し上げたい。卵が先か、ひよこが先かの議論好きの議論にかまける暇もないので、「私は、男女格差を解消したい当事者として、やる」と断言しておく。また、往往にして感情論や個々の主義主張は、目的の実現の妨げとなる。冷静かつ現実的な視点で『男女“共同”社会』に参画したいところだ。

 「そう冷静でいられるか」と怒る女性もいるかもしれない。仰る通りだ。私は、今、本件の結果および現在の日本の男女格差社会の在り方に、めちゃくちゃ怒っている。女性として悔しいし、この期に及んで男性の優位性を滔々と述べる男性には、彼の精神が崩壊するまで口汚く罵倒してやりたい気持ちでいっぱいだ。しかし、私はこれを堪える。今後の社会を改善するために必要なことは、個々の感情の垂れ流しや自尊心からの脊髄反射ではなく、冷静な現状把握。そして、改善を実現するための現実的な解決に対し、大局的かつ理性的に頭を使うことに他ならないと考えるからだ。今日日、怒るにも知恵がいる。

 最後にいつもの台詞で締めたい。女性たちよ、かけがえのない自分の人生、男性優位社会に“輝かさせられる”隙を与える間もなく、勝手に輝こう。

messy

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