【嵐山光三郎氏書評】信念でJR九州をやる気にさせた経営者

11月4日(土)16時0分 NEWSポストセブン

唐池恒二・著『新鉄客商売 本気になって何が悪い』

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【書評】『新鉄客商売 本気になって何が悪い』/唐池恒二・著/PHP研究所/1700円+税


【評者】嵐山光三郎(作家)


 国鉄分割民営化がなされてから30年がたった。そのうちJR東日本、JR東海、JR西日本の業績は好調で本州三社と呼ばれたが、そのほかに「JR三島」という会社があった。「JR北海道」「JR四国」「JR九州」の三社のことをまとめてこう呼んだ。これは業界内での名称で、新幹線が走る「本州三社」は発足するとひたすら黒字を計上して優良企業への道をひた走るが「JR三島」は厳しい赤字経営状況にあった。


 国鉄に入社して、十年後「JR九州」へ行ったカライケ青年は「今にみておれ! 本州三社を見返してやる」という心意気で逆境から這いあがり、二〇一六年に「JR九州」を一部上場して完全民営化をはたした。


 これはその奮戦記で格闘史だ。並の会社立志伝とは違ってユーモアや自慢話のディテイルが痛快。57歳で社長となったカライケ親分は、麻生太郎元総理のしわがれ声をまねして、ドスをきかせつつよく通るバリトンより低い声で交渉の場に臨み、渾身の力をふりしぼって、九州新幹線全線開通をはたした。


 大評判になった「走るホテル」の「ななつ星」を提案したときは社内には「やりたくない」という空気もあった。そこでカライケ親分は、はっぱをかけた。


一、夢みる力

二、「気」をみち溢れさせる力

三、伝える力


 企画を成功に導くために、手間をおしまず、低くドスのきいた声で人をその気にさせる。迫力あるなあ。カライケ青年は→社長→会長→怪人となっていく。七転八倒しつつ根気よくつみ重ねて、市場を分析して、信念を持って、会社全体に「気」をみちあふれさせた。


 かくして怪人カライケは「駅から三百歩横丁」を博多に開き、カリスマ力を四方八方に発光する。千人にひとり、万人にひとりの経営者の誕生。「夢や気を伝える戦略」が赤字会社を生き返らせた。逆境と屈辱は、人と組織を活性化させる発火点であることが実感として伝わる。


※週刊ポスト2017年11月10日号

NEWSポストセブン

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