【医師監修】哺乳瓶の消毒は必要なの? いつまでやればいいの?

11月5日(火)17時10分 マイナビウーマン子育て

赤ちゃんに粉ミルクや搾乳した母乳をあげるとき、「哺乳瓶の消毒が面倒くさい……」と思う人は多いのではないでしょうか。 そもそも、赤ちゃんがおもちゃなどをなめるようになってくれば、哺乳瓶だけ消毒することに意味があるのか疑問に感じることも。ここでは、哺乳瓶の消毒は何のためにするのか、いつまでするのかについて考えてみましょう。

この記事の監修ドクター 産婦人科医 太田寛先生 アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

哺乳瓶はなぜ消毒するの?

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粉ミルクや搾乳した母乳を与える方法のなかで、哺乳瓶は消毒するよう産院から指導されることがあるでしょう。なぜそのように指導されるのでしょうか。

洗浄・乾燥しても残った菌がいるかもしれないから

通常、私たちは使い終わったカトラリーや食器は、洗剤で洗ったあとに乾燥させてまた使います。食中毒を起こす病源体は乾燥に弱いものも多いので、食器類を洗浄して一度乾燥させてから使用することで、食器を介して食物に病源体が移ることをほとんど防げます。

しかし、使った後の哺乳瓶をしっかり洗っていなかったりすると、残っていたミルクを栄養として細菌などが増殖し、感染症を引き起こす可能性があります。

赤ちゃんの免疫の力が弱い時期には、これらの細菌が問題になる場合があります。ですから、リスクを下げるために、授乳を終えた哺乳瓶を洗浄・乾燥後に、消毒するように指導されることがあるのです。

食器用洗剤を使った洗浄だけで菌を洗い流せたという報告も

こうした心配があるので、WHOなどが作成した資料をもとに厚生労働省が公表したガイドラインにも、「乳児への哺乳と調乳に使用された全ての器具を次の使用前までに徹底的に洗浄及び滅菌することは非常に重要である」という記載があります[*1]。

しかし、その一方で、大腸菌と枯草菌という細菌を哺乳瓶に付着させた後、各種方法で洗浄・消毒してから菌が残っているかを調べた実験では、「食器洗い用洗剤での洗浄のみ」でも、洗浄後に哺乳瓶から細菌は検出されなかったとする報告もあります。その他、この実験では「98℃または90℃のお湯を哺乳瓶に注ぎ5分間放置する方法」、「3分以上での電子レンジ消毒」でも菌は検出されなかったことから、「煮沸消毒のように、器具を使用し煮沸時間を厳守するような厳重な消毒は必要がない可能性がある」とも言及しています[*2]。

哺乳瓶の上手な洗い方

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このように、哺乳瓶を消毒すべきかどうかについては、実は医療従事者の間でも意見が分かれています。ただ、消毒する/しないの前に、しっかり洗浄して汚れを落とすことがとても重要なことには変わりありません。そもそも消毒するにしても、その前の洗浄が不十分だと十分に病源体を除去できず、食中毒を起こす菌などが哺乳瓶に残ってしまい、時間とともに増殖します。これでは、わざわざ消毒する意味がなくなってしまいますよね。

そこで、ここでは、消毒の話をする前に、まず、なるべく菌を残さない哺乳瓶の上手な洗い方について説明します[*3]。

出典:[*3]アメリカ疾病予防管理センター(CDC)「How to Clean, Sanitize, and Store Infant Feeding Items」(英語サイト)https://www.cdc.gov/healthywater/hygiene/healthychildcare/infantfeeding/cleansanitize.html

食器洗浄機を使う場合

1.分解する哺乳瓶を部品ごと(ボトル、乳首、キャップ、リングなど)に分解します。

2.流水ですすぐ食器洗浄機に入れる前に、哺乳瓶とその部品を流水でしっかりとすすいでおきます。このとき使う水はお湯でも水でも構いません。

3.食器洗浄機で洗う哺乳瓶とその部品を食器洗浄機に入れ、スイッチを入れます※小さな部品は食器洗浄機のフィルターに詰まる恐れがあるので、必ず専用の小物入れに入れてください。※お湯洗いや乾燥機能を使うと、より多くの細菌を殺すことができます。

4.食器洗浄機から取り出す石鹸と水で手をよく洗ったあとに、食器洗浄機から哺乳瓶の部品を取り出します。※哺乳瓶や部品が完全に乾いていない場合は、清潔なふきんやペーパータオルの上に置いて、完全に乾かします。その後、ほこりや汚れの付かない場所に保管してください。※このとき、ふきんでぬぐったり、触ったりしないようにしましょう。ふきんについている雑菌を哺乳瓶にうつすことになります。

手洗いの場合

1.手を洗うまずは石鹸と水で20秒間、手をよく洗います。

2.分解する哺乳瓶を部品ごと(ボトル、乳首、キャップ、リングなど)に分解します。

3.流水ですすぐまず哺乳瓶とその部品をしっかりすすぎます。使う水はお湯でも水でも構いません。このとき、哺乳瓶とその部品は、シンクに直接置かないようにしてください。

4.洗剤で洗う哺乳瓶とその部品を「清潔なたらい」(できれば「哺乳瓶洗浄のみに使うたらい」)に入れ、お湯を満たし、洗剤を追加します。そして哺乳瓶専用のブラシを使って洗います。乳首の穴からは水を絞り出し、穴にも汚れが残らないように気を付けましょう。

5.もう一度すすぐ流水で洗い流すか、たらいにきれいな水を入れてすすぎましょう。

6.自然乾燥させる清潔なふきんやペーパータオルの上に置いて、完全に乾かします。その後、ほこりや汚れのない場所に保管してください。※このとき、哺乳瓶やその部品をふきんでぬぐったり、触ったりしないようにしましょう。ふきんについている雑菌をうつすことになります。

7.たらいと哺乳瓶用ブラシも洗う最後にたらいと哺乳瓶用のブラシをよくすすぎ、自然乾燥させます。※これらも、数日ごとに食器洗浄機で洗うか、洗剤と温水で手洗いしてよくすすぎ、自然乾燥させます(赤ちゃんが生後3ヶ月未満の場合や早産だった、病気などにより免疫力が低下している場合は、すすぐだけでなく、毎回、たらいとブラシの洗浄も行ってください)

哺乳瓶の消毒。するならいつまで?

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哺乳瓶の上手な洗い方を紹介しましたが、消毒に話を戻すと、結局したほうが良いのでしょうか? またするならいつまでしたらよいのでしょうか?

温水洗浄・乾燥機能のある食洗機なら消毒は不要

母乳や粉ミルクは雑菌が繁殖しやすいため、哺乳瓶は清潔を心がけることが大切です。ただ、最初に紹介したとおり、食器用洗剤を使った洗浄だけで菌を洗い流せたという報告もありますし、アメリカ小児科学会でも洗浄後の消毒をすすめているのは一部の専門家だけと言います[*4]。

さきほど紹介した「哺乳瓶の上手な洗い方」が掲載されている、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のホームページには、温水洗浄・乾燥機能のある食器洗浄機を使うのであれば消毒は不要だと記載されています[*3]。

目安は生後3ヶ月ごろまで、1日1回消毒する

そうでない場合は、赤ちゃんの免疫機能が低い生後3ヶ月未満までは、1日に1回は哺乳瓶とその部品は消毒したほうが良いとされています[*3]。

消毒方法は、鍋で煮る煮沸消毒や電子レンジ消毒、専用の薬液に漬ける方法などがありますが、使用している哺乳瓶の説明書をよく読み、素材に合った方法を選びましょう。

ただし、生後3ヶ月以降でも、早産、低出生体重児、なんらかの病気で治療中の赤ちゃんは免疫機能が通常より低いことがあります。この場合は、かかりつけ医療機関で確認しておき、その指示に従うようにしましょう。

なぜ3ヶ月ごろまでなの?

赤ちゃんの体内には、生後6ヶ月ごろまではお母さんの体から移行したIgG(免疫グロブリン)という抗体が体内に存在しますが、それは、誕生から日がたつにつれて急速に減っていきます。その一方で、赤ちゃん自身もIgGを作り始めますが、それは生後3ヶ月ごろなので、出生から生後3ヶ月ごろまでは、赤ちゃんの体内のIgGが最も少ない時期です。

免疫力として働く抗体にはほかにも、IgMやIgAなどがありますが、これらは胎盤を通過する性質がないため、基本的には誕生直後の赤ちゃんの体内には微量しか存在せず、母乳などを介して生後徐々に増えていくものです。

つまり、このような理由で、生後3ヶ月までは赤ちゃんの免疫機能は低い時期なのです。免疫の機能が低いということは病源体に感染しやすいということ。ですから、この時期は哺乳瓶を消毒したほうが無難とされているのです。

実は「70℃以上のお湯でミルクをつくること」がとても大切

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ここまでに説明したように、哺乳瓶の消毒は赤ちゃんに病源体が感染するリスクを下げるためでした。ただ、赤ちゃんが病源体に感染しないために、実は哺乳瓶の消毒よりもまず先に気を付けるべきことがあります。

かならず一度沸騰させた「70℃以上」のお湯でミルクを溶かすこと

哺乳瓶を介した食中毒の原因として注意が必要とされているのが、「サカザキ菌」と「サルモネラ菌」という菌です。おもに、サカザキ菌は育児用ミルクの製造段階で、サルモネラ菌は開封後に混入することがあります。これらの菌はミルク缶の中のように水分のない環境でも長期間死なずにいることができます。

とくに、「サカザキ菌」は乳幼児の髄膜炎や腸炎、敗血症などの発生に関係していると考えられており、乳幼児が感染すると10〜80%という高い割合で死亡するとされています[*5]。ただし、1958年にイギリスでこの菌が発見されて以来、世界各地で乳幼児を中心に感染例が報告されてきたものの、その数は2012年までに世界中で120件に留まっています[*5]。つまり、いったん感染すると高い確率で命に関わる事態を引き起こす菌ですが、この菌に感染することは比較的まれとされています。

実は、サカザキ菌は、粉ミルクを「一度沸騰させた70℃以上のお湯」で溶かすと、死滅するため、感染リスクが劇的に下がります。これよりお湯の温度が低いと、サカザキ菌が死なないばかりか、温かい環境でかえって増殖させてしまう可能性もあります。赤ちゃんに飲ませるものですから、どちらにしてもあとで冷まさないといけないとはいえ、「ぬるい湯冷ましでミルクを溶かすのはNG」なこと、「一度沸騰させた70℃以上のお湯でミルクを溶かし、そのあと冷ます」のが大切なことはよく覚えておきましょう。

調乳したミルクは5℃以下で保存することでこれらの菌の増殖を防ぐことができますが、これより高い温度で保存したり、調乳から長時間経った場合は、急速に菌が増殖する可能性があります[*5]。一度も口につけていないミルクを捨てるのはもったいなく感じるかもしれませんが、2時間以上たったミルクは捨てるようにしましょう。

なお、ボトル入りの水も無菌ではないので、使用前に沸騰させなければなりませんし、電子レンジでの加熱は均一でないので、電子レンジでの加熱は調乳には向きません。

まとめ

哺乳瓶で粉ミルクをあげるときの調乳や消毒は面倒ですよね。哺乳瓶をいつまで消毒すればいいのかについては、明確な決まりはなく、医療従事者の間でも意見がわかれていますが、だいたい生後3ヶ月ごろまでとされることが多いようです。ただ、毎回消毒しなければと神経質になりすぎないでください。そのかわり、粉ミルクは70℃以上のお湯で調乳する、調乳から2時間以上たったものは捨てる、使用後の哺乳瓶は洗剤と流水で毎回汚れをしっかり落とすことは心がけるようにしましょう。

(文:今井明子/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

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