植物の光合成をモデルにした「人工葉」 太陽の光で二酸化炭素を酸素に変える技術

11月7日(木)18時30分 カラパイア

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image credit:Pixabay

 温室効果ガスの削減が急務とされている世界は今、化石燃料からの脱却が求められている。

 新しいエネルギー源として代表的なものに、風力発電や太陽光発電といった自然の力を利用した再生可能エネルギーが挙げられるだろう。

 あまり馴染みはないかもしれないが、同じ自然の力を利用したものとして植物の光合成を利用するアイデアも研究されている。

 特に注目が集まっているのが、太陽の光で二酸化炭素を酸素に変える植物の力をモデルにした「人工葉」だ。

 これは、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量にするカーボンニュートラルな社会に転換させる切り札になるかもしれないと期待されている。
・電気を使わずに光合成を成功させる人工葉

 たとえばカナダ・ウォータールー大学の研究グループは『Nature Energy』(11月4日付)に掲載された研究で、電気を使わずにCO2(二酸化炭素)をメタノールに転換する技術を考案した。

 電気を使った人工葉は人気を増しつつあるが、一方で光触媒反応を利用するアプローチは、電気を利用するアプローチよりも安価かつ効率的というメリットがありながらも、1978年に提唱されて以来ほとんど成功してこなかったのだという。

 問題だったのは安定性に乏しいことと、これを作るために必要な元素が高コストであることだ。

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実験の様子。1時間が経過するころには化学反応により、二酸化炭素を燃料に変えるための新技術の鍵となる赤い粉末が生成された
image credit:University of waterloo

 そこで研究グループは、光触媒化合物として新しく酸化第一銅を採用し、効率面でもコスト面でも電気式アプローチに対抗しうる光触媒反応式アプローチを考案した。

 新開発の人工葉は、酸化第一銅の粉末を水に入れて光を当てると機能する。

 これによって生じる反応で、まるで植物が光合成を行っているかのように酸素が作られてCO2はメタノールに転換される。

 電気式アプローチでのメタノール生産性は50〜60パーセント程度だが、今回のアプローチでは72パーセントという高生産性を達成。

 さらに転換効率もおよそ10パーセントと、自然の光合成より10倍も高かったとのことだ。

 こうして作られたメタノールは石油に変わる代替エネルギーとして使うことができるし、プラスチック製品の原料としても利用できる。

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ウォータールー大学のYimin Wu教授
image credit:University of waterloo

・光合成を模倣した装置でクリーンかつ持続可能な合成ガスを生産

 また英ケンブリッジ大学の研究グループは、人工葉でクリーンかつ持続可能な合成ガスを作り出すことに成功し、その成果を『Nature Materials』(10月21日付)で発表している。

 合成ガスは今現在でも燃料、薬、プラスチック、あるいは肥料として広く利用されている。

 しかし、それは石炭や石油から作られた素材の残りを利用したもので、二酸化炭素の排出という点で考えればあまり望ましいものではない。

 そこで研究グループは光合成を模倣して、ペロブスカイト(灰チタン石と同じ結晶構造の物質)というコバルト触媒に光と水と二酸化炭素を結びつけることにした。

 ここにさらに水素と一酸化炭素を加えれば合成ガスができあがる。

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光合成を模倣した新デバイスの動作中の様子
image credit:Virgil Andrei

 風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーは年々性能が向上している。しかし、世の中は電気だけで動いているわけではない。

 自動車、船舶、飛行機など、現時点では電気だけは利用できないものもある。ゆえにこうした分野では化石燃料に変わるクリーンな燃料が求められている。

 そこで人工葉の出番というわけだ。

 どこかで二酸化炭素が排出されたとしても、それをなんらかの方法で吸収するなら全体としての二酸化炭素量は変わらない。これをカーボンニュートラルという。

 排出された二酸化炭素を捕らえてそれをクリーンな燃料に転換することができる人工葉が実現するのは、このカーボンニュートラルな社会だ。

 葉っぱと言えば人工葉を思い浮かべる・・・そんな未来も来るのだろうか?

References:University of waterloo/ Nature Energy/ written by hiroching / edited by usagi
追記:(2019/11/7)本文を一部訂正して再送します。

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