【医師監修】帝王切開の傷に関するまとめ! 傷跡の処置方法と注意点

11月7日(木)17時12分 マイナビウーマン子育て

帝王切開によるお産はどんなときに行われ、傷跡がどれくらい残るのか、気になる人も多いでしょう。そこで今回は傷の痛みや治り方、そして忘れてはいけない心の傷も含め、帝王切開による傷跡のケア方法や注意点を解説します。

この記事の監修ドクター 産婦人科医 太田寛先生 アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

帝王切開手術の基本

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帝王切開とは

帝王切開は何らかの理由で経腟分娩ができないときに行う出産方法です。 経腟分娩では赤ちゃんが産道を通って生まれてきますが、帝王切開では妊婦さんの腹部と子宮を切開して、赤ちゃんを取り出します。

帝王切開が選択可能なのは、前提として以下の2つの条件を満たす場合です。●経腟分娩のほうが、リスクが高いと考えられること●母体が手術に耐えられる状態であること

上記の条件を満たした上で、事前に決めて万全の体勢で帝王切開を行う(予定帝王切開)こともあれば、経腟分娩を試みるなかで赤ちゃんの心拍数減少、分娩の停止、大出血などが起こった際に急きょ行う(緊急帝王切開)場合もあります。 近年、帝王切開によるお産は増加傾向にあり、妊婦さんの4人に1人は帝王切開で出産しています[*1] 。

帝王切開するかどうかが決まるポイント

以下のような点にあてはまる場合、予定帝王切開、緊急帝王切開になることがあります(実際、帝王切開になるかどうかは、妊婦さんやお腹の赤ちゃんの状況によって異なります)。

予定帝王切開になる場合

〈母体側の適応〉 ●前回の分娩が帝王切開だった ●筋腫の摘出など子宮の手術をしたことがある ●前置胎盤:胎盤が子宮の下のほうに付いており、子宮口の一部または全部を覆っていること ●心疾患などの合併症がある ●性器ヘルペス、コンジローマなど経腟分娩することで赤ちゃんに感染するおそれがある性感染症にかかっている

〈胎児側の適応〉 ●胎位異常(いわゆる逆子や横位の場合) ●双子、三つ子などの多胎妊娠(双子の場合は経腟分娩をする場合もあります) ●児頭骨盤不均衡(CPD):お母さんの骨盤に比べて赤ちゃんの頭の大きさが大きいこと  ●前置血管 :へその緒の血管の一部が子宮口にかかっていること

緊急帝王切開になる場合

〈母体側の適応〉 ●分娩が途中で停止した、または時間がかかりすぎている(分娩遷延・停止) ●重度の妊娠高血圧症候群 ●常位胎盤早期剥離:赤ちゃんが子宮から出るより前に胎盤が子宮からはがれてしまうこと  ●子宮破裂(破裂しそうな状態を含む) ●母体の心肺停止

〈胎児側の適応〉 ●胎児機能不全:赤ちゃんの状態が悪化していること  ●臍帯脱出:破水後、へその緒だけ子宮口から出てしまっていること

このうち帝王切開を選択する理由として多いのは、前回帝王切開、胎位異常、分娩遷延・停止、胎児機能不全、胎位異常といわれています。

帝王切開の皮膚の傷ってどう処置するの?

帝王切開は腹部と子宮を切る手術ですから、赤ちゃんを取り出した後はその切開した傷を処置しなければいけません。ここでは帝王切開の皮膚の傷はどのように処置されるのかを紹介します。

多くの場合で、皮膚の傷は横または縦になる

帝王切開の皮膚の切り方には、大きく分けて「横切開」と「縦切開」があります。それぞれ利点と欠点があり、何を重視するかによって、皮膚の傷が横になるか、縦になるかが決まります。

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帝王切開「横切開」のイメージ/「縦切開」のイメージ

現在は、ちょうど下着のゴムで隠れるあたりを切るため傷跡が目立ちにくい横切開が選択されることが多いです。しかし、リスクが高い帝王切開の場合には、縦切開を選択することもあります。

縦切開が選択されるのは、子宮筋腫や前置胎盤、妊娠20週台の超早産児でリスクが高い場合などです。縦切開のほうが手術時に視野を確保しやすく、早く赤ちゃんを出せることから、緊急帝王切開の時や大量出血が想定される時などにも縦切開を行うことがあります。

赤ちゃんを取り出したら、子宮とおなかの傷を縫合する

切開後、赤ちゃんを取り出したら子宮とおなかの傷をそれぞれ縫合します。

まずは子宮の切開部を縫合します。溶ける糸(吸収糸)で子宮の切開部を縫い合わせて閉じた後、子宮の縫合した部分を癒着防止材でカバーし、その後の癒着を防ぎます。

子宮の縫合が終わったら、続いておなかの傷を縫い合わせます。筋膜を縫合した後に、皮膚を吸収糸やステープラー(医療用ホチキス)などで合わせてから、おなかの傷をハイドロポリマーなどのシートでカバーしたら帝王切開手術は終了です。 動けるようになったら、傷跡をシートでカバーしたままシャワーも浴びられます。

昔は、退院前に抜糸を行っていましたが、昨今は吸収糸を使うため、抜糸はほとんどありません。ただし、ステープラーの針は退院前に外します。

帝王切開の傷の痛み

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帝王切開に限らず、術後の傷は以下のような過程を経て、治っていきます[*2]。経過とともに傷の痛みも変化します。

炎症期(手術直後)の痛み

一般的に、術後4〜5日目ごろまでは傷が治る段階のなかで「炎症期」と呼ばれる時期です。 このころは、血小板が活性化して皮膚や血管の破れを血栓でふさぎ、止血します。同時に血小板はいろいろな化学物質も放出しており、それがシグナルとなってリンパ球などの白血球の仲間が傷口に集まってきます。これら白血球の仲間は、傷口で要らなくなった組織や外から侵入した病源体を食べるなどして働く必要不可欠な存在ですが、一方で痛みを起こす物質(炎症メディエーター)も放出します。そのため、活発に傷の修復が行われるこの時期は痛みを感じやすい時期ともいえるでしょう。

なお、この時期に傷口を消毒したり、乾燥させたりすると、こうした白血球の仲間などの働きをさまたげるため、この後に説明する「増殖期」がきちんと起こらなくなり、傷の治りが妨げられます。 そのため「毎日ガーゼ交換して消毒する」といった処置は、かえって傷の治りを妨げるとして行われていません。

増殖期の痛み

炎症期が始まってしばらくたつと、傷は増殖期=新しい細胞が増殖して傷になった部分を埋めていく時期に入ります。炎症期ほど強い痛みはありませんが、軽い痛みやかゆみ、皮膚の赤みなどが見られることが多々あります。 この時期はほぼ1〜2週間続き、次の時期に移行します。

成熟期(安定期)の痛み

細胞の増殖が落ち着き、傷の箇所の血管も修復されて、痛みやかゆみも徐々になくなっていく時期です。傷跡も次第に目立たなくなっていきます。ただし傷口になんらかの異常が起こった場合は赤く盛り上がり、目立つように残ってしまうこともあります。そうならないためには炎症期〜増殖期〜成熟期までがスムーズに進むよう、傷口の自然治癒をできるだけ妨げないことが大切です。

帝王切開の傷跡

帝王切開の傷跡は残るの?

帝王切開はおなかを切開するため、傷跡はもちろん残ります。ただし切開の方法や治癒の経過などによって、それが目立つ場合とそうでない場合があります。

傷跡の目立ち方は、横切開のほうが縦切開よりも目立たないことが多いです。したがって帝王切開手術を行う際は、美的観点からも横切開が選択されることが多いのですが、さきほども説明したように、前置胎盤や子宮筋腫の位置や大きさ、妊娠週数、緊急性の高さなどによって、縦切開を選択せざるを得ない場合もあります。

帝王切開の傷口のケア

帝王切開による傷跡をできるだけ目立たなくするには、術後3ヶ月程度の自宅でのケアも重要です。どんなきれいに縫合しても、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん。皮膚を修復する細胞が過剰に産生され、傷が赤く盛り上がった状態)やケロイド(肥厚性瘢痕に似ているが、傷に留まらず正常な皮膚にまで盛り上がりが広がる)のように赤く盛り上がった傷跡になってしまうことがあります。また、1ヶ月健診までの間に、傷の周囲の赤みや腫れが拡がっていったり、痛みがひどくなっていったりする場合には、傷口に感染を起こしていることなどがあるので、早めにかかりつけの病院を受診しましょう。

傷跡をなるべく目立たなくするためには、傷に過度な乾燥や擦過などの刺激を与えないことが必要です。そのため、専用のテープ(サージカルテープ)やシリコンジェルシートなどを購入し、傷跡に貼ってガードしておくとよいでしょう。ただし、ケアをしたからといって必ずきれいに治るわけではありません。また、テープなどを貼ったことで「かゆい」「ひりひりする」などのトラブルが生じることもあります。その場合はただちに使用をやめ、ひどい場合には皮膚科などの専門医を受診してください。

ケロイドや肥厚性瘢痕になっても治療もできます

帝王切開による手術跡は、順調に回復するとだいたい半年〜1年後には目立たなることが多いです。しかし帝王切開で傷のできる下腹部は日常の動作で力を入れることが多く、それによって皮膚や筋肉が引っ張られるため、傷跡が肥厚性瘢痕やケロイドになりやすい傾向があるといわれています。術後1年が過ぎても「傷跡に赤みがある」「傷跡が硬い」「傷跡が盛り上がっている」といった場合には、かかりつけの産婦人科、または形成外科や皮膚科などの専門医に相談してみても良いでしょう。

心の傷のケアも大切

帝王切開での出産は体だけでなく、心に傷ができてしまうこともあります。帝王切開によるお産にはまだまだ偏見があり、人によっては「陣痛がなく、ラクな出産」という誤った情報を信じていることもあるようです。周囲の人から心ない言葉をかけられて、産後、悩んでしまったり、経腟分娩で出産できなかったことをコンプレックスに感じたりしてしまうママも少なくありません。

しかし、帝王切開も経腟分娩も、どちらも立派なお産です。自分の命をかけて新しい命をこの世に送り出したことに違いはありません。帝王切開は、決して楽な方法でも、恥じるべき方法でもないことをどうか知っておいてください。また、家族や身近な人が出産した場合は、出産の方法にかかわらず、まずは「お疲れさま」「頑張ったね」「ありがとう」といったねぎらいの言葉をかけてあげるのが大切です。

まとめ

帝王切開の傷は、術後しっかりとケアしたほうが目立たなくなる可能性が高くなります。大切なことはあまり触らず、シートなどで保護しておくこと。それによって、時間の経過とともに徐々に治っていきます。術後の傷跡が気になる場合には、形成外科や皮膚科で相談してみましょう。

(文:山本尚恵/監修:太田寛先生)

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