科学で心が先読みできる!? 驚異の科学的読心術

11月7日(金)7時0分 tocana

Andrew Mason from flickr (CC BY 2.0)

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 秘密にしていた考えが悟られてしまっている! ——いわゆる「思考盗聴」体験は、誰にも話していないばかりか独り言ですらつぶやいてはいない"胸中"の中身が、何者かに汲み取られてしまっているという強い思い込みである。いや、決して思い込みなどではなく現実に行なわれているのだ、という主張も一部で根強いのだが、今やその有無について議論をする必要もなさそうだ......。なぜなら科学的"読心術"が実用化されるのも、そう遠い未来のことではないからだ。

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■"心の声"の解読に成功

 米カリフォルニア大学バークレー校の神経学研究チームは、人の脳裏に浮かぶ"心の声"を解読し、言葉に翻訳できるプログラムを開発した。この画期的な技術は、会話能力を奪われた脳性麻痺患者や"閉じ込め症候群"の人々とのコミュニケーションの道を拓くものであると期待されている。

"心の声"の解読方法とはいったいどんなものなのか? 本格的な研究を前に、研究チームはてんかんの治療のために脳に電極棒を埋め込んでいる患者が人の話を聞いているときの脳の活動を記録した。この記録を分析することで、スピーチ中の話者の特定の音声(周波数)が側頭葉の特定のニューロンの反応を引き起こしていることを発見した。そしてこの研究をもとに、言葉を用いて思考を巡らせている時や、文章を読解している時、あるいは他人のスピーチを聞いて理解している時など、言語使用時の脳活動は同じであるという仮説を立てて独自のコンピュータ・アルゴリズムを作成した。このアルゴリズムの目的は話者の音声を識別し、発せられた言葉を特定することである。

 そしてこの仮説は実証されることになる。研究チームが2011年に行なった最初の実験では、てんかん手術を経験している7人の被験者に童謡(ハンプティ・ダンプティ)や第16代大統領・リンカーンのゲティスバーグ演説、第35代大統領・ケネディの就任スピーチの文章を字幕で表示したスクーリンを見せ、その時の脳内の活動を分析した。具体的には、スクリーンに映し出された字幕を前に、

1. 大声を出して読み上げる 
2. 黙読する 
3. 見るだけで何もしない

 という3つの作業を指示し、それぞれの状況下での脳活動の様子を追ったのだ。

 実験中、研究チームはどの音声にどのニューロンが反応したかを次々に突き止めて、被験者それぞれの個別的な"解読機"を即座に作り上げた。この解読機は、スペクトログラム(音の三次元グラフ表示)を作成するためのものである。そして脳活動の情報から作成したスペクトログラムから単語を特定し、音声で復元することに成功したのだ。つまり、話し言葉の音声と脳内の反応を個別的に結びつける"翻訳辞典"を作成したのである。

「この研究はコミュニケーションの術を断たれた"閉じ込め症候群"や脳性麻痺の人々への医学的な能力補完システムになります」と、研究チームのブライアン・パスレイ氏は語る。この技術により、会話の能力がなくても、脳活動の情報だけで考えを理解でき、伝えることが可能になるのだ。


■次に浮かぶ言葉の"先読み"も可能に!? 脳コミュニケーションの時代

 2012年に発表された最初の研究論文で、研究チームはこの研究を「これまでになかった別次元の"読心術"実験である」と記している。これに加えて神経心理学のロバート・ナイト教授は「これは、脳卒中やルー・ゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症)で話せなくなった人々を強力に支援する技術です。最終的には脳活動の情報だけでコミュニケーションを成立させることが可能となり、数え切れない利益をもたらしてくれます」と語っている。

 まだ研究初期段階であるにも関わらず、研究チームは近いうちに脳活動を"翻訳"し、パソコン経由で発言したり、あるいはその場で書面にして表示することが可能になると確信している。なぜなら後に残された作業はひたすら「翻訳辞典」の収録単語数と例文数を増やし、認識できる声質や訛りの幅を広げて精度を高め、必要に応じてプログラムを修正するだけだからだ。要するに実用に耐え得るレベルに達するまで、今後はデータ収集とプログラムの機械学習を続けるだけなのだ。

 さらに研究が一歩進めば、このシステムは人間が次に言おうと考えていることをある程度"先読み"することができると研究者たちは考えているということだ。人間の言語活動の大量の"ビッグデータ"を学習すれば、ある特定の状況や文脈の中で発せられる単語やフレーズの後、どんな言葉が続くかが統計的に予測でき得ることは、現在のグーグルの文字入力システム(予測変換機能)などをみても納得できそうなことだ。

 これはまさに「思考盗聴」とセットになった「行動予測」といえるのかもしれない。社会に多大な貢献をもたらす新技術の登場の一方で、これまでの"プライバシー"の概念は大きな修正を求められているのかも知れない。
(文=仲田しんじ)

※Andrew Mason/inside from flickr CC BY 2.0

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