退職届(退職願)の不備などを理由に従業員を引き留めることはできるか?

11月9日(金)18時49分 シェアしたくなる法律相談所

1、退職届(退職願)の不備?

平成の大横綱だった貴乃花親方が日本相撲協会を退職する際、書類の不備などを理由として、認められるまで一悶着がありました。

一般の企業で雇用されている従業員(ここでは無期契約社員を念頭に置きます)が退職届(退職願)を提出して一定の時期をもって退職したいと申し出てきた場合に、使用者として退職届(退職願)が就業規則に定める事前の申し出期限を過ぎていることや、書類に不備があることなどを理由として従業員を引き留めることはできるのでしょうか。


 


2、退職届(退職願)の持つ法的なイミ

まず、退職届(退職願)が法的な観点からどのような意味をもつ意思表示であるのかによって使用者ができることも異なります。

雇用契約が当事者の意思で終了する場合の中には、①当事者の合意による場合と②一方当事者の解約の意思表示による場合があります。


②については、一般的に、使用者からの解雇がイメージされやすいですが、逆に労働者からの一方的な「辞職の意思表示」によって契約が終了する場合もあります。

労働者からの退職の申し出は、①合意解約の申入れの場合と、②辞職の意思表示の場合のどちらに当たるかで、法的効果が異なります。

一般には、退職願が①にあたり、退職届が②にあたる場合が多いとも言われますが、どちらに当たるのかは、書類の表題だけではなく、他の事情を含めてケースバイケースで判断することになります。


労働者が、使用者側の反応いかんにかかわらず、ある時期をもって契約を終了することを確定する趣旨で退職届を提出しているような場合には、②の辞職の意思表示にあたります。

この場合、労働者が期間の定めのない契約を結んでいる社員であれば、使用者が労働者の退職に承諾をしない場合でも、退職届を受け取ったときから2週間(退職届で指定された退職日が2週間以上先の日であればその日)が経過すれば、退職の効力が発生します。


他方、労働者が使用者と退職日を調整して退職したいと申し入れているような場合は、①合意解約の申入れにあたります。この場合、使用者が退職について承諾をしなければ、合意は成立しませんので、使用者側で労働者に思いとどまるように説得することは可能です。ただし、説得しても退職の意思が固く、特定の日をもって確定的に退職する旨、②辞職の意思が表示されれば、使用者としてはそれ以上、引き留めることはできません。


 


3、所定期限を過ぎた退職申入れの取扱いは?

例えば、就業規則で

「従業員が退職する場合には遅くとも退職日の30日前までに申し出なければならない」

と定められていて、労働者から、2週間後に退職したいと申し出てきたとします。

労働者の申し出が、使用者と調整したうえで退職したいという趣旨であれば、①合意解約の申入れにあたり、使用側で


「そんなに急に辞められては困る。引継ぎもあるのであと2、3ヶ月待ってもらえないか」と話を向けることは可能です。


しかし、


「いえ、2週間後に退職させてもらいます」


と確定的に②辞職の意思を示されてしまえば、就業規則所定の期限を過ぎた申し出であったとしても、退職の効力が発生することになります。


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4、書類の不備は?

では、退職届(②辞職の意思表示、以下同じ)の記載に不備があるとして、退職を認めずに引き留めることはできるのでしょうか。

使用者として、各種手続きの関係や労働者側の意思を明確にする趣旨で退職届の提出を求めているのが通常と思われます。


しかし、法律上は、辞職の意思表示は、必ずしも書面によることは求められておらず、口頭によることも可能で、本人の辞職の意思が表示されていると認められるものであれば、有効な辞職の意思表示となります。


したがって、退職日が不明瞭であるなどといった事情がない限り、労働者から使用者に対して辞職の意思が明確に表示されれば、退職の効力が発生します。

問題は、本人が退職届を持参した場合ではなく、他人が持参したり、郵送されてきた場合などです。


これらの場合には、本当に当該労働者本人が退職の意思を示したと言えるのかが問題となります。

例えば、退職届の文字が氏名を含めて全て印刷されたもので、押されている印鑑も文具店などで多数流通している三文判のような場合には、誰でもそのような書類を作成することが可能で、後日、本人から


「私は退職届を出していない」


と言われると、使用者として対応に苦慮することになります。


こうしたリスクを回避する趣旨で、上記のように本人から直接差し入れられたものではなく、氏名も印字された退職届の取扱いを留保して、退職届には自筆署名するように求めることも使用者として合理的な対応と考えられます。


もっとも、そのような場合でも、本人が当該退職届を作成したと認めれば、使用者としてもそれを有効なものと扱わざるを得ないでしょう。


 


執筆/杜若経営法律事務所平野剛(【使用者側専門40年の圧倒的な実績】【市ヶ谷駅徒歩3分】【弁護士9名在籍】【総合力とチームワーク】杜若経営法律事務所は使用者側労働問題の解決に圧倒的な自信がございます。)

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