松本理寿輝さんが選ぶ「子育て╳ウェルビーイングを感じるアイデア本5冊」
2022年7月21日(木)11時0分 ソトコト


「まちぐるみの保育」という理念を掲げ、現在都内で計5か所の保育所やこども園を運営しています。まちでの交流によって多様な視点をもてるようにすることが、子どもや親、まちの人たちにとって「人間の豊かさ」、つまりはウェルビーイングにつながるのではないかと考えたからです。
そのモデルとして開園において参考にしたのが、北イタリアにあるレッジョ・エミリア市の幼児教育です。保護者や先生のみならず、まち全体が子どもたちに関わることで、子どもたちの表現が展開されていくところに魅了されてしまいました。
実際に現地へ足を運んだら、まちの至る所で市民の対話が行われる文化が根づいていて、感銘を受けました。ただ、それをそのまま日本に輸入するのではなく、子どもを中心に「子どもが育つ理想の環境」や「理想的な社会や市民のあり方」を対話することで、日本独自の「まちぐるみの保育」をつくっていこうと考えたのです。レッジョ・エミリア市で実践されている幼児教育は、『驚くべき学びの世界』にまとめられています。この本を読むと、子どもの表現力を広げる知性や想像力の大切さを感じることができ、子どもの学ぶ環境に興味がある方におすすめです。
僕は、プライベートでは5歳児の父親でもあります。親や子どもを育てる方に大切にしてもらえると良いかなと思っているのは「普通にとらわれないこと」です。「普通はこうあるべきだ」と考えやすいのかもしれませんが、「普通の子育て」なんて存在しないのではないでしょうか。親も子も苦しくならないよう、「みんなそれぞれ」でいいと思います。
そんな考えからおすすめしたい一冊が『思いどおりになんて育たない』です。著者のアリソン・ゴプニック氏は、カリフォルニア大学の心理学教授・哲学客員教授で、子どもの学習と発達に関する研究の第一人者として知られています。この本は普通でなくていいことを承認し、「あなたが思うようにやったらいいよ」と背中を押してくれます。
また、この本では発達科学的な知見が示されているため、納得できるところがたくさんあります。例えば、人間の子ども時代が長くなったのは人間の進化の結果であり、成長過程で能力を得るプロセスがその人の多様性を生み出すので、子どもが安心して探索できる環境を与えることこそ親の役割だと説いています。
常識にとらわれず多様な視点で、一緒に子育てを楽しみましょう。
『まちの保育園・こども園』代表・松本理寿輝さんの選書1〜2
『まちの保育園・こども園』代表・松本理寿輝さんの選書3〜4

photographs by Yuichi Maruya text by Yoshino Kokubo
記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。