佐藤恒平さんが選ぶ「キャラクター×ローカルデザインのアイデア本5冊」

2022年5月11日(水)11時0分 ソトコト

佐藤恒平さんが選ぶ、キャラクター×ローカルデザインのアイデア本5冊








「桃色ウサヒ」は「無個性な着ぐるみを使って、地域を内的に盛り上げる」という、僕が大学時代に行っていた地域振興研究のためのキャラクターで、2008年に山形県・朝日町に企画を持ち込み、10年から地域おこし協力隊隊員となって本格的に町のPRを行ってきました。ウサヒの"なかの人"になって早12年。おかげさまで今もみなさんにそこそこ可愛がっていただいています。
お薦めする『惑星のさみだれ』は、漫画ソムリエを自称する僕がいちばん好きな作品。大学院でウサヒを考案していたときに連載しており、自分の取り組みにも多大な影響を受 けました。この漫画は、悪の魔法使 いとの戦闘シーンよりも、多くのページが獣の騎士団と「メンター」として騎士団を支える動物の「従者」 たちとのミーティングのシーンに費 やされているのがおもしろい。従者は、カジキマグロ以外は カマキリや猫など小動物で、 騎士たちはまるでペットのような感覚に心を開き、言いにくいことも平然と投げかける「雑さ」を許せる関係ができあがっていきます。地域にもそういう存在が必要なのではと気づかされ、自分の企画にも生かしました。地域おこしに取り組んでいる人たちが騎士団で、従者がウサヒです。「ご当地キャラにこれくらいならさせても許されるだろう」という「雑に扱える安心感」が、地域の人とウサヒを結びつける力にもなるからです。
 
また、この漫画を全巻読めば「U理論」も理解できるでしょう。U理論とは、過去に例のない解決策を見出し、イノベーションを起こすための理論。悪の魔法使いを倒すために、騎士団は自分たちの能力を開発し、未来のために今どんな修行が必要かと対話を重ねながら、進むべき道筋を構築していきます。これは、ご当地キャラクター以外の地域おこしにも役立つ知見になるはずです。
もう一冊も漫画で、『トクサツガガガ』です。キャラクター業を営むとき、アクターと観客の2つの視点を持つことを僕は大切にしています。例えば、「アクターとしては新しい技で演じたいのに、観客は"いつもの"を望んでいる」といった二律背反する困難に対して、その両極の視点を行き来しつつ、いかに折り合いをつけ、おもしろい現場をつくっていくか。それはまさに、特撮現場と着ぐるみの現場に共通するテーマで、強い共感を覚えます。同時に、仕事や人生の困難を乗り越えようと頑張っているすべての人にも、愛と勇気を与えてくれるに違いありません。


『まよひが企画』代表・佐藤恒平さんの選書1〜2
『まよひが企画』代表・佐藤恒平さんの選書3〜



記事は雑誌ソトコト2022年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

ソトコト

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