怖すぎる「醜女」伝説がヤバイ! 食べ物に対するどん欲さ、追走のしつこさ…ドラマ「妖怪シェアハウス」の黄泉醜女を民俗学者が深堀り!

2020年9月12日(土)21時0分 tocana

画像は、GettyImagesより引用

写真を拡大

——話題のドラマ「妖怪シェアハウス」に登場する妖怪を気鋭の民俗学者・畑中章宏が解説!



 第七怪では「黄泉醜女(ヨモツシコメ)」の活躍が観られる。


 黄泉醜女は、文字どおり「黄泉(よみ)の国」にいる“醜い女”で、『日本書紀』では「醜女」のほか「泉津醜女」や「泉津日狭女(よもつひさめ)」、『古事記』では「予母都志許売」と記される。


 誰もが知っているように、日本神話で国産みを果たしたイザナギ・イザナミのうち、妻神であるイザナミは、火の神カグツチを産んだとき、陰部にやけどを負って亡くなってしまう。イザナギは亡きイザナミに会うため黄泉の国までやってくるが、妻の体は無残にも腐敗していた。恐怖のあまり逃げ帰ろうとするイザナギに、イザナミは「恥をかかせたな」と叫び、追っ手に遣わしたのがシコメである。


 シコメから逃げながら、イザナギが黒い髪飾り投げつけると山ブドウの実がなった。シコメが山ブドウを拾って食べているうちに、イザナギは逃げて行くが、まだ追いかけてくるので櫛の歯を折って投げ捨てると、タケノコが生えてきた。シコメがタケノコを抜いて食べているうちに、またイザナギは逃げて行った。


 イザナミは、今度は八柱の雷神と黄泉の軍勢に追わせたが、イザナギは十拳剣(とつかのつるぎ)を振りながら逃げて行く。イザナギはなんとか黄泉の国とこの世の境目にある「黄泉比良坂(よもつひらさき)」の麓までたどり着き、そこに生えていた桃の実を3つ投げつけると追っ手たちは逃げていった……。




『和名類聚抄』という古い辞書には「醜女はある説に黄泉の鬼なりという」とあり、『万葉集』でもシコに「鬼」の字があてられている。つまりシコメは「鬼」の一種だと考えられていたようだ。


 ただし「シコ」には「醜い」以外に、「畏怖」や「頑強」、「異質」などの意味もあったという説がある。「醜」の字にシコの読みをあてた例に、オオクニヌシ(大国主)の別名「葦原醜男(シコオ)」がある。この場合の「シコ」は、「畏怖すべきもの」を意味し、「カシコシ(畏、恐)」の「シコ」ともつながりがあるといわれる。


 またシコを、荒々しさや逞しさ、強靱や頑強を褒めたたえる表現だという説もある。シコメがイザナギを追いかけたときにみせた、食べ物に対するどん欲さ、追走のしつこさといった行動力を指すという説だ。いずれにしても、シコメはたんなる“醜い女”ではなく、カシコくてアクティブな女性なのである。


 醜女にゆかりの坂道、黄泉比良坂は“観光名所”として実在する。


 島根県松江市、JR山陰本線の揖屋駅から歩いて20分ほど、国道から緩やかな坂を上がったところがその伝承地だ。木立の中に大きな岩が立ち並んでいて、この岩はシコメらを振り切ったイザナギが黄泉の国への入り口をふさいだ「千引の岩(ちびきのいわ)」なのだそうである。十年ほど前に訪れたとき、個人的には「こんなところが……」という感想を抱いたけれど、神秘的な雰囲気やシコメの気配を感じる人がいるかもしれない。

tocana

「妖怪」をもっと詳しく

「妖怪」のニュース

「妖怪」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ