突出する東京と沖縄のウイルス集中度

11月12日(木)6時0分 JBpress

沖縄県は東京都に匹敵する新型コロナウイルス感染症の集積地となっている(写真は石垣島)

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 10月末のことでした。新聞報道で、「日本全国の新型コロナウイルス感染クラスターの数が1761に達した」とのニュースが流れました。

 1761。ちょっと思い当たることがあり、ネットで調べてみたのですが・・・。実は、日本全国の市町村の総数が1741なんですね。

 つまり、いまや10月末時点で、日本のコロナは「1自治体に1つ」を超えた「普及率」に達している。

「一家に一台」ではありませんが、いまや「1自治体に1クラスター」と同じ頻度で、集団感染が日本全国に蔓延している、そういう数値を示しているわけです。


都市に集中する感染者分布

 日本全国の市町村数は、市が792、東京都の特別区が23、町が743、村が183で、その総数が上に挙げた1741ということになります。

 この分布は全国津々浦々、一様に拡がっていますが、新型コロナウイルス感染症の罹患者分布は、当然ながら都市部に偏っています。

 11月10日時点での患者の累計総数は11万642人。

その3割、3万3060人が東京に集中し、ざっくりと、約3割。次いで大阪が1万4120人、約13%。神奈川が7064人、約8.5%。

 以下

埼玉が6360人  6.3%
千葉が5419人  5.7%
福岡が5307人  4.9%
北海道が4387人 4.7%
兵庫が3598人  3.2%
沖縄が3561人  3.2%
京都が2187人  1.9%

 ここまでのワースト11が4桁の発症者。これに次ぐ32県が3桁すなわち数百人の発症者、残りをすべて合わせても1万9704人で約18%に過ぎず、東京単体の3分の2に届きません。

 ちなみに日本全国で感染者が少ないのは

山形 89
秋田 68
鳥取 51
岩手 33

 と2桁感染、長らく発症者ゼロであった岩手も、いまや鳥取に次ぐ33人まで感染者が増えています。

 さて、ここでちょっと考えました。報道は、平均すれば「全国津々浦々」に1つずつクラスターがある勘定とでましたので、その偏りを見るべく、都道府県別の人口と比較して、その偏りを見てみたいと思います。

 これを都道府県の人口分布と比較してみましょう。


分布から炙り出される「GOTO伝染効果」

 2020年時点での日本の総人口は、少子高齢化といいながら、いまだ1億2650万人ほどを保っています。

 その約1割、1350万人ほどが東京に集住し、人口比率は約10%、これに対してコロナ感染者数は約30%ですから、人口比率の自然な荷重平均から考えて、約3倍の「感染者密集エリア」であることが、直ちに分かります。

 同様に計算するうえで、まずコロナワースト10と人口分布を並べてみてみると

  ワースト 人口の多さ

1  東京    東京
2  大阪    神奈川
3  神奈川   大阪
4  愛知    愛知
5  埼玉    埼玉
6  千葉    千葉
7  福岡    兵庫
8  北海道   北海道
9  沖縄    福岡
10  兵庫    静岡

以下

11 京都     茨城

 となって、ワースト10のうち9の都道府県が人口の多い場所に集中という、一見すると妥当な結果が出て来ます。

 しかし、こういうところでは、例外にこそ注目する必要があります。

 コロナが多い第9位沖縄、第11位京都は 京都府の人口こそ全国13位で260万人を数えますが、沖縄県の人口は約143万で、全国25位にすぎません。

 また人口で10位、11位につけている静岡県、茨城県についてコロナ感染を見てみると

静岡県 722 全国第17位
茨城県 843 全国第15位

 となりますが、多くの県の感染者数分布は都市圏を同心円状に取り囲んでゆるやかに減って行き、第何位などというランキングに対して意味があるとは思われません。

 さて、ここで先ほどのワースト11について、私の出自である物理の考え方を参考に、人口分布の割合と、コロナ発症者数の割合を並べて、簡単な比を取ってみましょう。公開のデータから私が計算したものです。

 ワースト 感染者割合 人口 人口割合 ウイルス集中度

1  東京   30%   東京  10%   東京2.79
2  大阪   12%   神奈川 6.9%  大阪1.82
3  神奈川  8.5%  大阪  7.2%  神奈川1.18
4  愛知   6.3%  愛知  5.9%  愛知1.07
5  埼玉   5.7%  埼玉  5.7%  埼玉1.00
6  千葉   4.8%  千葉  4.9%  千葉0.99
7  福岡   4.7%  兵庫  4.0%  福岡1.18
8  北海道  3.9%  北海道 4.2%  北海道0.93
9  沖縄   3.2%  福岡  1.1%  沖縄2.86
10  兵庫   3.2%  静岡  4.3%  兵庫0.73
11  京都   1.9%  茨城  2.0%  京都0.95

残りの全国  14% 全国ウイルス集中度 0.34
                 静岡 0.22
                 茨城 0.33

・・・これは何を言っているのか?

 もし、全国津々浦々に、平等にウイルスが「宅配」されているとしたら、一番右に書いた比「ウイルス集中度」は、1程度になると考えられる比を求めてみました。

 東京は全国平均の約2.8倍、集まっています。

 さて、ここで見ていただきたいのが「沖縄県」のウイルス集中度です。「2.86」端数はおくとして、ほぼ東京都同じことになっている。

 これは「偶然」と言えるのか?

 日本列島も島ですが、沖縄はもっと「島」であって、船か飛行機を使わない限り、人間+ウイルスの出入りはありません。

 国はGOTOと全国のコロナ感染増大の間に「因果関係は見いだせない」という姿勢を取ることにしたようですが、「因果」関係というのはそうやすやすと認められるものではない。

 ただ「相関」は直ちに示すことができます。

 東京のウイルス感染の集中度合いと、沖縄のそれとの間には、極めて強い相関が認められるのは、上のごく粗い計算だけからでも結論することが可能です。


人間の往来がウイルスを「宅配」する

 同様に見てみると、次にひどいのは大阪で、1.8程度の集中。大阪の施策がうまくいっているとはとても言えないことが、こうした人為を離れた数字からよく分かります。

 翻って兵庫県は0.73 かなり善戦していることが、数値からは察せられます。

 まあ山間部などもあり、全面的に都市化されている大阪が、こうした割合計算では不利になるのは差し引いてやる必要があるかとは思いますが。

 それ以外を見てみると、神奈川と福岡が1.18とやや悪いですが、それ以外の大半の大都市は1.0台、つまり「自然なウイルス移動」の範囲で健闘していることが察せられます。

 千葉は0.99、京都が0.95、北海道は0.93と、1を下回っています。

 ただ、広大な北海道の面積と人口分布が、京都や千葉に次ぐ程度であるというのは、考えねばならない高率であることは指摘しておかねばならないでしょう。

 というのも、残りの全国他県のウイルス集中度は0.34、人口の多い所を取り出しても茨城が0.33、静岡は0.22と、実に希薄なウイルス環境であることが、数値で示されているわけですから。北海道が要注意であることは、間違いないでしょう。

 物性物理や物質科学の考え方で、未知の物質を調べてみたとき、本来なら熱的に拡散して一様に分布しているはずの分子や不純物がなぜか局在しているとき、ひとまずその集中、コンセントレーションの度合いを検討してみることがあります。

 上記はそのような、およそ先入観と無縁な単純な計算で、公開データそのままを入力、ソースにミスがあったりしたらお詫びしますが、結果はおよそ意図の入り込むようなものではありません。

 ウイルスは決して、自分で拡散しては行きません。足が生えて、のこのこと歩いたりはしない。必ず人間が運び屋となって、県から県へ、いや 大都市圏から観光地その他へと、「宅配」されて行く。

 このデータを、トランスポートすなわちインバウンドの移動データと重ね合わせて地図上に分布・・・マッピングすれば、もっと様々なことが露骨に示されてしまうのは、まず間違いありません。

 経済の維持、という政策そのものが問題とはあえて書きませんが、まともな対策を欠いたまま「嵐は通り過ぎたかな?」と おっかなびっくりで再開した後は、坂道を転げるに任せておけば、結果は自ずと出てきてしまう。

 我が国に今現在も、本質的に、科学的な感染症への対策、政策的カウンターメジャーが存在していません。

 空の便で結ばれた東京と沖縄が人口に対してほぼ同じウイルス集中度というのは、それが、隠しようもない数値として表れている一例と考えてよいように思います。

 以下、まとめておきましょう。

 2020年11月の時点で、日本全国には、市町村の数と同じ、おびただしい新型コロナウイルスクラスターが存在しています。

 しかし、その分布は偏っており、全国の大半の県では都市部の3割程度(ウイルス集中度0.34)、都市圏の多くが標準程度(同1)で、いくつかの大都市ではそれを上回っているものの(神奈川、大阪など)圧倒的に集中しているのは東京(ウイルス集中度約3)で、全国平均の約10倍近く(0.34に対して2.8程度なので計算すれば8.2倍程度)集中していることを、データは示しています。

「データ駆動科学」というほどのものでは、およそありませんが、普段学生に教えている「度数分布」とか「尤度」といった概念を小中学生レベルまで薄めて、今現在の状況を知る一助としてみました。

 東京と沖縄のインデックスが同じ2.8になったのは、計算結果が出た際、頭痛を感じました。嘘はつけないものです。

「因果関係は認められない」といったポストトゥルースのお経はドナルド・トランプ氏と一緒に退場していただかないと、冷徹なウイルスの蔓延に抗することはできないでしょう。

 私たち伊東研究室の「お茶の時間」の話題として、学生たちのために計算した結果をご紹介しました。

筆者:伊東 乾

JBpress

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