東京で死ぬまでに一度は食べたい一皿! とんかつやオムライス発祥の元祖洋食店『煉瓦亭』で絶対頼むべき至極の料理とは?

2022年11月12日(土)10時47分 食楽web


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●明治時代に生まれた元祖ポークカツレツとオムライスはどういう経緯で生まれたのか? そして今も美味しいのか調査してみた

 海外からの観光客の姿が徐々に戻ってきた銀座。洋食の老舗『煉瓦亭』のランチの列にも観光客らしき人々がちらほら。「日本に来てなぜ洋食?」と思うかもしれませんが、洋食はれっきとした日本の文化。日本で生まれ育ってきた料理なのです。


1964(昭和39)年、東京オリンピックに合わせて建て直した店舗

 なかでも『煉瓦亭』は、1895(明治28)年創業。オムライス、カキフライ、エビフライなどなど、「これぞ洋食」ともいうべきメニューの発祥の店です。特に有名なのが、明治32年頃に生まれたとされる「元祖ポークカツレツ」(2300円)。何を隠そう、これが日本全国にある「とんかつ」のルーツ。まさに死ぬまでに一度は食べる価値のある一皿なのです。

 でも、実際に2022年も終わろうとしているいま、明治生まれの料理を普通に食べても美味しいんでしょうか? 今回は改めて『煉瓦亭』に取材に伺ったので、その料理の魅力と特徴に迫りたいと思います。

いざポークカツレツとオムライスを実食!


レトロな雰囲気満点の煉瓦亭2Fの様子

「元祖ポークカツレツ」の原型となったのは、明治時代に伝来した「仔牛のコートレット(cotelette)」というフランス料理。しかし、本場のレシピはバターをたっぷり使うので、明治時代の人には少々しつこかったようです。そこで『煉瓦亭』では、天ぷらにヒントを得て、たっぷりの油でカラッと揚げるカツレツ(=coteletteの日本語読み)を考案。

 牛肉は軍隊の食料に回されて高騰していたため、関東で流通が伸びていた豚肉を使い、輸入品で高級だったドライパン粉の変わりに近所の木村家からパンを買ってきておろし、自家製生パン粉をつけて揚げました(現在はパン粉専業店のパン粉を使っています)。そうして、1899年(明治32)年に誕生したのが、このポークカツレツ。この美味しさが評判を呼んで全国に広がり、“とんかつ”と呼ばれるようになったわけですね。


豊富なメニュー。「カツレツ」だけで7種類もあります

 そんなわけで、いざ実食! 約110gの豚肉を、植物油とラードなど3種類の油を混ぜた油で揚げているのでサックサク。衣に閉じ込められていた豚肉の甘い肉汁が口中でジュワ〜っと広がります。なのに、しつこさや脂っこさは一切なし。日本全国に美味しいとんかつのお店は星の数ほどありますが、もう完璧と言っていいほどの美味しさです。

 からしとウスターソースが一緒に運ばれてきますが、何もつけなくてもこの香ばしさだけで十分に美味しい。そこでウスターソースはキャベツを中心にかけてみました。甘いキャベツに辛味の効いたソース。ポークカツレツに欠かせない名脇役ですね!


サクサクの衣が豚肉の旨味を閉じ込めています

 ちなみに、このキャベツにも歴史があります。誕生当時は温野菜を添えていたそうですが、日露戦争(1904〜1905年)で若手調理人たちが徴兵されて人手が足りなくなったため、調理を簡略化しようと生キャベツを刻むことを考案。その頃、使い始めたウスターソースによく絡むよう、極細の千切りにしたんだそうです。まさに明治の歴史とともに生まれた一皿なんですね。

シンプルながら魅力の詰まったオムライス


「明治誕生オムライス」(2400円)。シンプルだからこそバターの香り、ひき肉の味が際立って美味しいんです

 もう一品、おすすめは「明治誕生オムライス」(2400円)。こちらは、1900年(明治33年)に生まれた、まかない料理が原型。当時は溶き卵、合いびき肉、タマネギ、ライス、調味料を全部混ぜ合わせてフライパンで焼き上げ、形を整えたもの。忙しくても手早く食べられるように作られていました。このまかないバージョンは、それを目にしたお客さんからの要望によってメニューに取り入れられ、現在も「ライスオムレツ(元祖オムライス)」(2400円)として提供されています。

 その後、ライスオムレツの人気ぶりを聞きつけた近所の西洋料理店店主が『煉瓦亭』に集まり、新しいメニューを考えようと話し合った結果、茶巾寿司をヒントにオムライスが誕生。当時はデミグラスソースを合わせていましたが、戦後、アメリカからケチャップが持ち込まれ、ケチャップをかけるようになったそうです。


ケチャップライスには定番のチキンではなく、ひき肉が。肉の香ばしさもまた食欲をソソります

 マッシュルームとタマネギと合いびき肉が入ったケチャップライスを、180ccとたっぷりの溶き卵でふんわり包み、ものすごくスムースでなめらかな舌触り。ライスはシンプルな味付けながら、ひき肉の旨味と米がよく絡み合い、マッシュルームの食感がいいアクセントとなっています。酸味の効いたケチャップは、バターの甘い香りが漂う卵とナイスコンビネーション!

生き字引きのような店主は四代目


四代目店主の木田さん。創業当時のこともすごく詳しい

 店主・木田浩一朗さんは四代目。小学校1年生まで、創業者で曽祖父である木田元次郎さんと一緒に住んでいたそうです。数ある『煉瓦亭』のメニューから好きな料理を挙げてもらうと、「子どもの頃はハムライス(2100円)やハムステーキ(2200円)が好きでしたね。今は冬季限定のかきバタ焼(3500円)が好き」とのこと。確かにどれも美味しそう……。

 メニュー成り立ちや銀座の歴史についてものすごく詳しく細かなところまで語ってくださった木田さん。まるで明治時代の銀座を見てきたかのよう。もしかして猛勉強されたのでしょうか。

「特に勉強したわけではありません。父がずっと取材の対応をしてきて、その横で何十年も聞いてきたので自然と覚えました。今でもわからないことがあれば父に聞いていますよ」


年末に配っているカレンダーを楽しみにしているファンも

 受け継がれる味、語り継がれる歴史。とはいえ、単なるノスタルジックな味というわけではないんです。レシピは変わらずとも、ちゃんと今の銀座を生きている味がする。だからファンが増え続けて、未来へとつながっていくのでしょうね。

調査結果


支払いは現金のみ。レトロで可愛いレジスターも鎮座

 レトロなだけじゃなくて、2022年のいまも何を食べても超絶美味。とんかつは天ぷら、オムライスは茶巾寿司をヒントにそれぞれ生み出された。そしてとんかつ×千切りキャベツを考案したのも『煉瓦亭』だった

(取材・文◎松みのり)

●SHOP INFO

店名:煉瓦亭

住:東京都中央区銀座3-5-16
TEL:03-3561-3882
営:11:15〜15:00(14:30LO)
  16:40〜21:00(20:30LO)

休:日曜

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