55年前に打ち上げられた英国軍事衛星「スカイネットA1」が何者かによって移動されていた謎

2024年11月15日(金)20時0分 カラパイア


Photo by:iStock


 英国最古の軍事用人工衛星が、なぜか本来あるべき場所から移動されていることがわかった。不可解なことに、誰が一体何のために、そしていつ行ったのか、正式な記録が残されていないという。


 1969年、英国軍の通信衛星として打ち上げられた「スカイネット1A(Skynet-1A)」は、アフリカ東海岸上空に配置された。


 スカイネットは数年で役目を終え、すでに機能を停止しており、専門家の予測によるなら、重力によって東に流され、インド洋上空に滞在しているはずだった。


 ところがなぜか、この人工衛星はアメリカ大陸の上空3万6000kmを漂っているという。


軌道から外れて移動されていた英国の軍事衛星


 軌道力学的には0.5トンある「スカイネット1A(Skynet-1A)」が、今ある位置に自然に流れ着いた可能性は低いという。


 それゆえに、1970年代半ばに何者かの指示によって推進装置が操作され、西へ移動するよう仕向けられたものと考えられる。


 だが、その指令を誰が、どのような権限と目的のもと出したのかがわからない。


 スカイネット1Aは当時、英国軍の通信機能を劇的に改善した重要な国防資産だった。にもかかわらず、きちんとした記録が残されていないというのが不可解だ。



本来あるべき位置から大幅に移動していたスカイネット1A


現在の位置では他の人工衛星と衝突する危険性も


 ただ不可解なだけでなない。それは極めて注目すべきことである。


 というのも、50年前に役目を終えた軍事衛星は、現在宇宙ゴミとなって宇宙を漂っているからだ。


 宇宙コンサルタントのスチュアート・イーヴス博士はこう解説する。


現在、スカイネット1Aは西経105度の”重力井戸”と呼ばれる場所にあり、ボウルの底でビー玉が行ったり来たりするように、前後に揺れています


懸念されるのは、そのおかげでほかの通信衛星に近づいたり離れたりしていることです(スチュアート・イーヴス博士)


 機能を停止しているスカイネット1Aは、他の人工衛星に衝突する恐れがあるのだ。そうなればその破片が散らばり、さらに別の人工衛星と破片が衝突する危険性はより高くなる。


 無数の宇宙ゴミのせいで宇宙が使用不能になる状況は、「ケスラーシンドローム[https://karapaia.com/archives/52292673.html]」と呼ばれる悪夢のシナリオだ。その原因を放置しておくわけにはいかない。



55年前に打ち上げられたイギリスのスカイネット1A


スカイネット1Aは実質的に米国と共同管理されていた


 「スカイネット」という名を聞くと、映画『ターミネーター』で人類を滅ぼそうとするAIシステムを思い出すかもしれない。陰謀論好きなら、隠された意図があるのではとも勘ぐりたくなる。


 それはさておき、英国が所有するスカイネット1Aは、米国と強いつながりがあるという。


 開発したのは当時存在した米企業「フィルコ・フォード社」で、米空軍のデルタロケットによって打ち上げられた。技術的には米国由来なのだ。



1969年、デルタロケットによってケープカナベラルから打ち上げられた、英国の軍事用人工衛星「スカイネット1A」 image credit:NASA, Image ID: KSC-69P-0941 / WIKI commons[https://en.wikipedia.org/wiki/File:Delta-M_with_Skynet-1A.jpg]


 このことは、1970年代に英国オークハンガーにあった英空軍の施設でスカイネット1Aの運用を担当していたグレアム・デイビソン氏も同意している。


最初に軌道上で衛星を管理していたのは米国人です。私たちのソフトウェアは彼らによって徹底的にチェックされ、最終的に英空軍に引き渡されました(グレアム・デイビソン氏)


 つまり実質的には英国と米国による共同管理だったのだ。


米国が関与している可能性はあるのか?


 そのスカイネット1Aがいつ、なぜ米国側に手渡されたのかは思い出せないと、現在80歳を超えるデイビソン氏は述べている。


 それについて重要な手がかりが、国立公文書館で調査を行うユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの博士課程の学生レイチェル・ヒル氏によって発見されている。


 彼女によると、オークハンガーの管理施設がメンテのために一時的に閉鎖されていた時期があり、このときにスカイネット1Aが動かされた可能性があるという。


メンテナンスの間、オークハンガーの担当チームは、サニーベールにある米空軍施設に赴き、スカイネット1Aを運用していました。このとき、その制御は一時的に米国に移管されていたのです(レイチェル・ヒル氏)


 またスカイネット1Aの公式記録によれば、1977年6月にそれが見失われたとき、最終的な指揮権は米国側にあったという。


危険な状態で宇宙を漂うスカイネット1A


 いずれにせよ、スカイネット1Aは現在、あまり好ましくない位置に放置されたままになっている。


 現在なら機能を停止した人工衛星は、衝突のリスクが低い通常よりも高い軌道(「墓場軌道」という)に移される。


 だが1970年代には、そのようなリスクはあまり意識されていなかった。


 現在スカイネット1Aが存在する西経105度には、宇宙ゴミが1日に最大4回ほど50km以内まで接近してくるという。


 十分な距離があるように思えるかもしれないが、人工衛星のスピードを考えるとそうも言えないのだ。


 英国の国防省によると、スカイネット1Aは国立宇宙運用センターで監視されているという。


 万が一、ほかの人工衛星に大きく接近するような場合は、事前に対応できるよう関係者に通知される。


 だが最終的に英国政府は、より安全な場所に移動することを検討する必要も出てくるかもしれない。


 あるいは最近研究が進んでいる宇宙ゴミ処理技術[https://karapaia.com/archives/52328829.html]などが利用されるのだろうか。


References: Skynet-1A: Why did the UK's oldest space satellite end up thousands of miles from where it should have been?[https://www.bbc.com/news/articles/cpwrr58801yo] / Scientists Puzzled by Military Satellite That Appears to Have Been Moved to a Distant Location[https://futurism.com/the-byte/scientists-puzzled-military-satellite-moved-location]

カラパイア

「英国」をもっと詳しく

「英国」のニュース

「英国」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ