尾木ママが考える「なぜ若者は“死にたい”のか」

11月16日(木)17時0分 文春オンライン


イラスト 中村紋子


 座間市のアパートで九人もの方が殺害された凄惨な事件。白石容疑者はSNSを駆使して、自殺願望を発信する若者に巧妙に接近した。被害者のうち、十代の女性が四人、二十代の女性が四人。なぜ、容疑者がこれほど多くの若者を惹きつけたのか。その背景には、若者特有の心理も大きく働いているように感じる。


 大人が思う以上に、「死にたい」と感じる若者は多い。ボクが教員時代に実施したアンケートでは、大体半数の生徒が「死にたいと思ったことがある」と回答。SNS上で自殺願望をつぶやく若者の多さに衝撃を受ける方もいると思うけれど、思春期という発達段階において、自分の生き方や進路、生と死について深く考えるのは自然なこと。また、思春期の脳は怒りや悲しみといった「負の感情」に敏感であることも明らかになっている。ストレスや苦痛、孤独をより感じやすいのがこの時期の特徴なんです。


 ただ、「死にたい」とつぶやくことと実際に死ぬこととは全く違う。SNSに書き込むのは、そうすることで鬱屈した思いが少しは解消されたり、同じように悩む人がいるんだと救われたりするから。その裏には、誰かに自分の気持ちを聴いてほしい、辛さを理解してくれる存在がほしいという、共感を求める痛切な思いが隠されている。そうした心理につけこみ凶行を繰り返した白石容疑者は悪魔。


 事件後、「死にたい人は死ねばいい」などの声がみられて気がかり。その「冷たい視線」が悲しいわ。また、「自殺願望の書き込みを禁止に」といった声もあるけど、ネット上の書き込み自体をいくら禁止しても、根本的な解決にはならない。


 ネットの世界が若者にとって“リアル”になりつつある今、大人が彼らの心理を理解し、寄り添わなければ、同様の事件は何回でも起こり得るのではないかしら。



(尾木 直樹)

文春オンライン

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