三谷繭子さんが選ぶ「道×プレイスメイキングを楽しむ本5冊」

2022年11月16日(水)11時0分 ソトコト







私がまちや道に関心をもったきっかけのひとつに、母の実家がある広島県尾道市での体験があります。祖母に連れられ歩く中で、道端で魚を売るおばちゃんが声をかけてくれたり、商店街の道に店の商品があふれていたり、いくつもある路地に心が躍ったり。道はまちとの関わりや人との出会いの接点になる空間であり、そこでの体験がまちの印象に大きく影響していることを感じました。皆さんも、どこかのまちを思い出してみてください。きっと道が一部入っている風景が頭の中に浮かぶのではないでしょうか。道は、コミュニティや日々の生活のなかで心地よく過ごせる場所へと転換していくポテンシャルがすごくある場所だと思っています。今回は、私のこうした考え方を支え、プレイスメイキングにおける道のあり方について思考を深める助けになった本などを中心に選びました。
 
1冊目の『人間のための街路』は、大学生の頃に手にした本です。タイトルにもある「街路」とは、特に市街地にある道のこと。つまり人間の生活に近い場所にある道を指しています。この本では、中世ヨーロッパをはじめ、さまざまな時代の世界各地の事例を紹介しながら、街路をただ車が通る道としてではなく、人間が何かの活動をし、過ごすための空間として捉えることの重要性を説いています。写真や図絵も豊富に載っていて読み応えもあり。人間と街路の関係性を、世界の歴史の側面から学ぶのに適した本だと思います。
 
一方で、日本における街路の使われ方がわかるのが『都市の自由空間』です。特徴的なのが、都市空間を住宅やオフィスビルなど建物の「イエ的な空間」と、街路や広場の「ミチ的な空間」に分け、後者を「自由空間」と呼んでいること。著者の鳴海邦碩さんは、さらに「自由空間は、単に交通のみの場所ではなく、そこは自然と出合い、さまざまな仕事や情報と出合う場」とし、「自由空間」こそが都市の魅力を表し、人々がそれを感じられる場であると言っています。また江戸時代の街路のあり方にも言及されていて、日本人がもともと街路を上手に使っていたことがよくわかります。道を含むまちづくり、都市再生などに関心のある人におすすめの一冊です。
 
道という空間から、人々が安心して快適に過ごせるまちをつくっていけると思っています。今回紹介した本を読むことで、皆さんの道に対するイメージがさらに広がればうれしいです。


『Groove Designs』代表取締役•三谷繭子さんの選書



photographs by Hiroshi Takaoka & Yuichi Maruya text by Ikumi Tsubone
記事は雑誌ソトコト2022年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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