母を自殺に追い込んだ「憎き父」が「不倫相手」のために相続放棄を懇願【小町の法律相談】

11月20日(金)6時55分 弁護士ドットコム


父親が不倫し、そのせいで母親が心を病み、自ら命を絶ってしまったーー。


その後、不倫相手と再婚した父に「自分が死んだ後、遺産の相続を放棄してほしい」と頼まれた娘さん(トピ主)からの投稿がありました。


母が亡くなると、父は不倫相手と再婚。トピ主も結婚し、実父とは絶縁状態になっています。そんな中、先日、久々に再会した父から、再婚相手に有利となるような遺産相続にしたいと持ち掛けられます・・・。


父はローンが残っている自宅をトピ主に譲ったことを理由に、「『自分が死んだ後、遺産の相続を放棄してほしい』と頼み、トピ主は動揺しています。「遺産相続を放棄する代わりに、母の自殺によって精神的ダメージを受けた私」と父から暴言を受けた夫への「謝罪と慰謝料を要求したい」と考えているそうです。


レスには、身勝手な父親に対する非難の声とともに、トピ主へのエールがずらり。「どうして財産放棄するのですか? もらえるものはがっつりもらいましょう」、「(父親に対し)寝言は寝て言えばいい」、「死に際につばを吐いてやるくらいの気迫がなければ、こういう人間(父親のこと)とは戦えません」。


トピ主も「父の不倫相手にはできるだけ財産を渡したくないし、父の介護などの苦労をしてほしいというのが正直な気持ちです」「死を選んだ母の仇をとりたい」など、率直に思いを語っていきます。


身勝手な父親のいう通りにしなければいけないのか、佐田理恵弁護士に聞きました。


(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「不倫した父親が、不倫相手との再婚。遺産放棄を頼んできた。」はこちら http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/0917/730683.htm)


●「相続開始前に、相続放棄をすることは出来ません」


そもそも相続開始前に、相続放棄をすることは出来ません。


相続開始前に、口約束をした場合も同様で、無効となります。仮に、お父さんと「相続放棄」の約束をしたとしても、原則としては、法定相続分で相続することとなります。


父親が、後妻や後妻との間に出来た子に全てを相続させる旨の遺言書を作成していた場合には、「遺留分減殺請求」をすることが出来ます。ただし、遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可(審判)を受ければ、相続開始前でもできます(民法1043条)。


それゆえ、例えば、遺留分の放棄をする代わりに、住宅ローン相当額を支払わせることを条件とすることも一案です。


なお、住宅ローンをそのまま払い続けるという約束だけですと、いつ、約束を反故にされるかわかりません。また遺留分放棄の撤回は簡単にはできませんので、相当額を現金で一括で払わせることを条件としたほうがよいでしょう。


●「慰謝料請求は可能と思われます」


ところで、トピ主さんは、慰謝料請求も考えているようです。この点について、お答えしましょう。


父の不貞行為と母の自殺との間の因果関係まで認められるかどうかはわかりませんが、少なくとも、母は父に対して、不貞行為に基づく慰謝料請求権を有していたといえます。


その慰謝料請求権を、相続人は法定相続分に従い、相続します。


母の自殺の時期がはっきりしませんが、自殺から3年以内でしたら、慰謝料請求は可能と思われます。


なお、「他人の生命を侵害した」といえる場合には、相続人固有の慰謝料請求が認められますが(民法711条)、自殺の場合には通常は困難と思われます。


また、夫への暴言については、どの程度の暴言なのか、証拠があるのかどうか、いつごろの話なのかによっても結論は分かれるでしょう。



【取材協力弁護士】
佐田 理恵(さだ・りえ)弁護士
第二東京弁護士会所属 子供の権利に関する委員会委員
事務所名:アストレア法律事務所
事務所URL:http://www.astraea-law.jp/

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