和田秀樹が「高齢者こそ肉を食べて!」と主張してきたワケ。長年目の敵にされた<コレステロール>だが、むしろ高齢になると…
2024年11月20日(水)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
総務省統計局が令和6年9月に公開した「統計からみた我が国の高齢者」によると、65歳以上の人口が総人口に占める割合は、29.3%と過去最高だったそう。高齢化が進むなか、精神科医の和田秀樹先生は「今の高齢者をとりまく医療は<本当は必要がないのに、やりすぎている>可能性がある」と指摘しています。そこで今回は、和田先生の新刊『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』から、和田先生流・医療とのつきあい方を一部ご紹介します。
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高齢者の活力をアップするたった50gの「肉」
ヨボヨボになりたくなかったら、タンパク質をしっかりとること。これは、よく知られるようになりました。実際、スーパーの食品売り場には、タンパク質を増強した乳製品や加工食品が増えました。
なぜタンパク質が必要なのか、おさらいをしておきましょう。
タンパク質は、内臓、筋肉、肌など人体を形づくる主成分です。タンパク質が不足すると、内臓の働きが衰え、筋肉が落ち、肌質も劣化します。免疫抗体、ホルモン、酵素など、人体をコントロールする重要物質の材料も不足してしまいます。
ご承知のように、高齢者は肺炎をこじらせて亡くなることが多いのですが(死因第5位)、若い人に比べて、肺炎が重症化しやすいのも、タンパク質不足による免疫力の低下が一因と考えられます。
一方、タンパク質をよく摂取する人は元気で長生きという印象がありませんか。
実際、元気な100歳以上の人100人に、「3日間の食事(計9食)」を記録してもらうという調査によると、900食(100人×9食)のうち、実に809食(89.9%)でタンパク質をしっかり摂取していました。
タンパク質を効率よくとれる食品
栄養学では、一日に必要なタンパク質の量は、65歳以上なら男性約60g、女性50gとされています。体重1kg当たり、タンパク質1gが必要と言う人もいます。体重60kgの人は60gのタンパク質が必要ということです。
特に、朝食でとったタンパク質は、筋肉量や握力が増えやすいという時間栄養学の研究もあります。
『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』(著:和田秀樹/講談社)
筋肉は朝から昼にかけて合成されるため、朝にタンパク質をとると筋肉が増えやすいのです。
血糖値の急上昇を防ぐために、野菜から食べるベジファーストの習慣が広まっていますが、食の細い人は先に野菜を食べてしまうとお腹いっぱいになってしまうので、タンパク質から先に食べるプロテインファーストの習慣を取り入れるのもいいかもしれません。
肉をおすすめする理由
タンパク質には、肉や魚、卵、乳製品などの動物性タンパク質と、大豆やナッツなどの植物性タンパク質があります。このなかでも高齢者におすすめしたいのは、「肉」です。
特に肉をおすすめするのは、なんといっても肉はタンパク質を効率よくとれるからです。
肉なら、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉など何でもかまいません。同じものばかり食べると栄養が偏るので、可能ならばいろいろな肉を食べるのもよいでしょう。
肉に含まれるタンパク質の量は、種類や部位によって異なります(下表)。牛ステーキを200g食べても、タンパク質を200gとれるというわけでありません。
部位にもよりますが、だいたいのところタンパク質は肉総重量の15〜23%程度。でもこれは白米(約3%)や野菜(1〜3%)に比べて格段に多い数字です。
目の敵にされてきた「コレステロール」
肉をすすめるもうひとつの理由は、ほかの食品よりもコレステロールを多く含んでいるからです。この国では長年、コレステロールが目の敵(かたき)にされてきました。
コレステロールを諸悪の根源とするかのようなネガティブ・キャンペーンの影響で、日本人の頭には「コレステロールを減らすこと=健康」という誤った常識が刷りこまれています。
たしかに中年期までは、コレステロールが多すぎると動脈硬化を引き起こすリスクがありますが、高齢になってからはコレステロール値が高い人ほど健康です。
99歳まで現役の作家だった瀬戸内寂聴さんや、105歳まで現役医師だった日野原重明さんは、最晩年まで「ステーキ」をよく食べていたと聞きます。ただ、それはなかなか真似のできないことかもしれません。
そこで私は、今よりも一日当たり「プラス50g」の肉を食べることをおすすめします。
うどん店に行ったときには、釜揚げうどんやざるうどんではなく、肉うどんを注文すれば、並盛りで25〜27gのタンパク質をとることができます。
ラーメン店では、タンメンよりも、チャーシュー麺、スーパーでサラダを選ぶときは野菜だけのサラダではなく、チキン入りのサラダを選ぶ。こうして少し意識すれば、プラス50gの肉を食べるという目標も達成しやすくなります。
※本稿は、『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』(講談社)の一部を再編集したものです。
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