自動運転車に必要なのは利己的・利他的な人間の思考だった(米研究)

11月22日(金)9時0分 カラパイア

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 交通量の多い道路で右折するときのことを想像してほしい。

 対向車線からは車がびゅんびゅん飛んできて、なかなか曲がれずイライラする。しばらくすると親切なドライバーが減速してくれそうな雰囲気を出している。安全を確認し、ようやく右折することができた。
 
 路上ではこんな状況がいく度となく繰り返されているのだが、これは人間同士ドライバーが心をくみ取っているからだ。人によっては利己的な運転をし、人によっては利他的な運転をする。その空気を読みながら運転をしているのだ。

 だが残念なことに自動運転車だとこうはいかない。そこで研究者は、自動運転車に人間の心の理論を教え込むことにした。
・人間はドライバー同士で心を読みあっている

 我々人間は、意識的、あるいは無意識のうちに他人の考えていることを推測する。

 これは社会で生きていくには欠かすことのできない能力で、もちろん車の運転でもそうだ。利己的なドライバーを警戒する一方で、利他的なドライバーの発する「お先にどうぞ」のサインを読み取りそれに応じる。それらは曖昧なものだが、私たちはなんとなく察することができる。

 だが残念なことに自動運転車はこうしたことが得意ではない。自動運転車は相手ドライバーに自分の意思を伝えるようなサインを出さないから、先に行っていいのか待つべきなのか人間ドライバーは判断がつかない。

 カリフォルニア州で起きた自動運転車がらみの事故を調査したところ、その半数は人間のドライバーが自動運転車の動きを理解できなかったことに起因する追突事故であると判明しているくらいだ。

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・自動運転車に人間心理を教え込む実験

 そこで、アメリカ・マサチューセッツ工科大学とオランダ・デルフト工科大学の研究グループは、かなり限られた機能ではあるが自動運転車に心の理論、いわゆる人間心理を教え込み、右左折や合流などの判断をアシストしてみることにした。

PNAS』に掲載された研究によると、この技術のベースとなっているのは「社会的価値志向性」というコンセプトであるらしい。つまりはドライバーの行動が利己的なものか、それとも周囲を考えた利他的なものであるかを人工知能の計算に組み込むのだ。

 社会的価値志向性についてはいくつもの詳細な研究があるが、自動運転車は周囲のドライバーを対象に綿密な調査を行なっているヒマなどない。

 そこで次のようにドライバーをざっくりと4つのタイプにわけて、判断の基準にされている。

利他主義ドライバー:周囲のドライバーの喜びを最大化しようとする

向社会的ドライバー:他のドライバー全員の利益になるような行動をとる。流れに合わせて速度調整し、時には急加速することもある

個人主義ドライバー:自分の運転が快適であるかどうかだけに関心を払う

競争的ドライバー:他のドライバーよりも自分の方が優位で快適な運転をしているかどうかだけに関心を払う


・各ドライバーの運転傾向に応じて進路を予測

 研究グループが開発したシステムは、周囲の車の位置から4種類それぞれのドライバーならどのように車を運転するのか予測する。

 次に、予測された進路と周囲にいるドライバーの実際の進路を比較して、各ドライバーがどの種類の運転傾向を持つのか判別。これに基づいて、ドライバーそれぞれの進路を予測するのだ。

 こうした考え方は、この分野でよく取り上げられるゲーム理論のものとは大きく異なるという。

 ゲーム理論の場合、各プレーヤーは必ず自分の利得を最大化しようと試みることが前提となっている。もし利他主義的なプレーヤーがいたとすれば、それは利得を最大化する中でたまたまそうなっただけだ。

 それとは対照的に、今回のシステムは、最初から利他主義的行動を念頭においてあり、さらにドライバーが単純な存在ではなく、状況が変化する中で運転傾向もまた変化するものであることを前提にしている。

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・心の理論を取り入れることで進路予測の精度が25パーセント向上

 心の心理システムを搭載した自動運転車を実際に試していると、ドライバー同士の譲り合いが大切な合流の場面では、周囲の車の進路予測の精度がシステム非搭載の場合よりも25パーセント向上したとそうだ。また混雑した道での車線変更や交差点の右左折も見事にこなしたという。

 さらに、このシステムからいくつか交通パターンを予測できるようにもなった。

 たとえば、高速道路を運転するドライバーは最初、利己的な運転で前を走る車についていく。しかし誰かが合流しようとすると減速して利他的な運転に変わり、また利己的な運転に戻る。
 
 同様に、高速道路で合流の列に遭遇したドライバーは、競争的になる——渋滞の列の脇をしばらく走ってから割り込んでくる、あの車のことだ。

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・将来の車は心を持つのか?

 心の理論を組み込まれた自動運転車の研究と聞くと、なんだか将来の車はSFマンガや映画に登場する心を持った人間のような存在になるのだろうかと想像してしまう。

 しかし残念ながら、近い将来、自動運転車が心の理論を完全にマスターするとは思わないほうがいいようだ。現時点では人工知能はそこまで高度ではない。

 総合的な人工知能や完全な心の理論が自動運転車に搭載されるのはまだ先のことだろう。それでも、ほんの少しだけ人の心を理解するだけで、自動運転はぐっと洗練されることが証明された。

References:Predicting people's driving personalities/ Improving autonomous autos by having them guess which humans are selfish/ written by hiroching / edited by parumo

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