紛争地に8年滞在の看護師・白川優子氏が語る自己責任論

11月23日(金)7時0分 NEWSポストセブン

「現場に入るのに医師もジャーナリストも変わらない」と語る白川氏

写真を拡大

 シリアで約3年4か月、イスラム過激派組織に身柄を拘束されていたジャーナリスト・安田純平氏に向けられた“自己責任論”はいまだ止む気配がない。


 しかし、国際NGO「国境なき医師団」の一員として、シリアやイラク、南スーダンなど世界中の紛争地で8年間にわたって看護活動に従事する白川優子氏はそこに疑問を呈した。


「人は誰しもが自分の意思で、自分の人生を決めています。私も自分で決めて『国境なき医師団』に入り、紛争地へ行くオファーを受けている。自分で決めた行動に責任を持つのは当たり前のことですが、シリアから生還した安田さんに対して『自己責任』という言葉だけで批判が集まるのには違和感があります」


 白川氏には職業ジャーナリストを目指した時期があったという。


「紛争地や被災地で看護師として活動する中で、一番大きなジレンマは、現場の悲惨さや問題を十分に伝えることができないこと。『シリア軍の空爆で、30人が亡くなった』という内容が報じられたとしても、私は十分とは感じません。実際に現場に立ったときに目に映る光景は、もっと凄まじい。


 人の手足が飛び散り、乳飲み子のお腹が裂けてしまっている。真っ黒になった遺体の横で、最後の力を振り絞って助けを求める血まみれの人……。その現場のディテールを伝えるには、遠くから眺めるのではなく、そこに自分の足で立たなければならないと感じています。私は医療によって人を救う道を選びましたが、誰かが現地に行かなければ、状況は伝わりません。ジャーナリストの方々も、何か強い思いがあって行っているはず」



 ジャーナリストが人質などになった場合、「自分が好きで行ったのだから自己責任」と突き放されることが多いが、「もっと社会的意義がある仕事だと認識されてもいいのではないでしょうか」と白川氏は語る。


 白川氏が初めてシリアに入ったのは、2012年9月だった。その約1か月前には同国アレッポで取材中のジャーナリスト・山本美香氏が9発の銃弾を撃ち込まれて、命を落としている。


 白川氏の著書『紛争地の看護師』には、紛争地で奔走する彼女の苛烈な状況が記されている。その活動を“自己責任でやれ”と突き放せる人はどれほどいるのだろうか。


※週刊ポスト2018年11月30日号

NEWSポストセブン

「自己責任」をもっと詳しく

「自己責任」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ